対話のレッスン 日本人のためのコミュニケーション術 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062922999

作品紹介・あらすじ

日本人の多くはなぜコミュニケーション・スキルが身につかないのか。政治家も経営者も、「演説」「日常会話」「雑談」は得意でも「対話」「談話」は苦手なことが多い。
ふだん同じ価値観の仲間とばかり会っていると、異なるコンテクストの相手と議論をしなくて済む。文化の違う相手と交渉したり共同作業をする経験が、まだ日本人には少ない。さらに携帯電話、ネットなどの新しいツールの登場で、世代間のギャップは広がる。
それでは、どうしたら対話が生まれるのか。どのようなコミュニケーション・スキルが必要なのか。
――豊富な具体例をもとに、新しいコミュニケーションの在り方を真摯に探る。

解説――高橋源一郎
「みなさんも、この本を読みながら、著者である平田オリザさんと共に、ゆっくりと(平田さんが指摘するようなこと、あるいは、それに触発されて、みなさんの内側に巻き起こってくることについて)考えてもらいたいのである。それは、みなさんにとっても、たいへん貴重な時間になるだろう」

感想・レビュー・書評

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  • 対話とは、異なる考えを持っている他人と話をし、自分の考えを変えていくこと。
    なぜ、それが必要なのか、日本人はどうしてそれができないのか、が詳しく書かれていた。
    どうしたらそれができるようになるのか、ヒントのようなものは書かれていたが、普通の人は演劇をやる機会はあまりないし、なかなか難しいと思った。

  • 拾い読みでも面白かった。
    「話し言葉の地図」(p.15)は、整理のされ方に学術っぽさを感じた。
    演劇雑誌への連載だったということだが、新聞にもこういう連載が載っていたらいいのになぁ。

  •  対話の本質について知りたくなり、この本を手に取った。
     常日頃から対話の大切さには痛感させられる。人と対話する前は自分の中で正しいと思っていたことが、正しくないのでは…と気付くことが多々ある。また、対話を通して、狭まっていた視野が少しだけ広がることがある。対話は人と人が繋がる可能性がある。

     平田さんは、対話をこう考えている。「お互いのことをあまり知らない者同士が知らないということを前提として行う意識的なコミュニケーション」
     確かに、目的に向けて意識的にコミュニケーションをとるということは納得できる。しかし、お互いのことを知っている上でも対話は成り立つのではないだろうか。ある程度、土台ができている人間関係で行えば、さらに深い対話が期待できると思う。

     ほめ言葉についても触れている。英語はほめ言葉が多いそうだ。英語は、シンプルで感情を伝えることに長けている。
     エクセレント、クール、ナイス、ビューティフル、グッドなど、思いつくだけでも多い…。
     それに対して、日本語はほめ言葉が少ないそうだ。

     日本人は対話が苦手らしい。それは、歴史的な背景もある。
     ギリシャでは、王政からいきなり民主政治になった転換期があった。その時に、ギリシャ人は選挙という方法を編み出した。しかし、それぞれの考えに差異があることに変わりはない。そこで、人と人同士が対話をするために生まれたものがある。それが、哲学と劇だ。劇を練習することを通して、対話の鍛錬をしたそうだ。

     日本はどうだろうか。江戸時代が終わり、約150年が経った。その間、日本語を公用語としてなくそうとした時期もあった。明治、昭和初期に言葉としての価値がないと思われたからだ。

     平田さんは、「わかりあえないこと」から対話をスタートすると書いている。多くの違いがある人と対話を通して、繋がることが大切だと思う。

  • 20世紀末に書かれたものを再編した本。フランスワールドカップの話題や、ニフティサーブの話題が懐かしい。「対話のレッスン」とあるが、最初は日本語の変遷、日本人という民族性、コミュニケーションのことについて書かれている。これはこれで面白い。
    そして後半はいよいよ対話について書かれている。2500年前のギリシャの民主制からの対話の始まり。哲学、演劇。日本での対話の位置づけ。
    ハウツー本ではないが、対話やことばに興味を持たれた方は読んで見ても良い本と感じる。

  • 対話を実行することはとても難しい。
    でも他者はすぐそこにいる。自分も誰かの他者。
    すぐに答えは出ない。出そうとしない。
    20年前に書かれた当時より社会はもっとおかしくなっている。全てが薄っぺらい。効率とかタイパとか。
    でもそれも含めて価値観、考え方だから対話をしていかないといけない。

  • 難しい、高橋源一郎の書評がわかりやすい。

    対話、自分でもよく言葉にするが、何のために?違いはと聞かれるとうまく説明できないだろう。

    言葉と時代背景、行動とのリンクも納得。

    考えは伝わらないをスタート地点にし、価値観の違う人にわかってもらうことが対話。納得。ここにかける説得力の必要性

    現代語版ハムレットは爆笑

  • 参考になる部分も多いけど、どうにも鼻につく文体。「レッスン」という名の雑記帳。書かれたのが20年前だということを考えれば仕方がないかもしれない。

  • 少し前に連載された記事を編集した内容ですが、平田オリザ氏が提言されている対話と会話の違いを事例も含めわかりやすく紹介されています。違いがある人と対話を通して繋がること大切さを確認できる一冊です。

  • ギリシャで生まれた「演劇」あるいは「哲学」は、この「対話」の訓練であり、シミュレーションに他ならないのだ。

  • 20年前に書かれた連載をまとめたものなので、スマホなどなくてIモードが登場してびっくり。
    しかし平田オリザの感覚は全然古くない。
    2500年前にギリシャで生まれた演劇や、250年前のルソーの社会契約論に比べたら、平成から令和の20年なんて同じ時代のくくりかもしれないけれど。
    日本人には対話が必要ってことだけは、変わってはいないと思った。

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著者プロフィール

1962年、東京都生まれ。劇作家・演出家。芸術文化観光専門職大学学長。国際基督教大学在学中に劇団「青年団」結成。戯曲と演出を担当。戯曲の代表作に『東京ノート』(岸田國士戯曲賞受賞)、『その河をこえて、五月』(朝日舞台芸術賞グランプリ受賞)、『日本文学盛衰史』(鶴屋南北戯曲賞受賞)。『22世紀を見る君たちへ』(講談社現代新書)など著書多数。

「2022年 『撤退論 歴史のパラダイム転換にむけて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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