- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062923194
作品紹介・あらすじ
「四十八手」は、たんなる性戯や体位だけでなく、出逢いから始まる「色恋の物語」でもあった。本書は、最初の浮世絵師と呼ばれる菱川師宣の『恋のむつごと四十八手』を、第1図から第48図まで一手ずつ丁寧に紐解きながら、西川祐信、鈴木春信、喜多川歌麿、葛飾北斎など、後世の浮世絵師たちがそれらをどう画いたか、表現の変遷をたどる。
春画を愛で、楽しみながら江戸人の性意識や風俗を読む、著者の春画研究の集大成にして、渾身の名著。
図版250点以上、カラー口絵あり
解説――浅野秀剛
感想・レビュー・書評
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蛤【はまぐり】に嘴【はし】をしつかとはさまれて鴫【しぎ】立ちかぬる秋の夕暮れ 狂歌
この狂歌は、喜多川歌麿の春画「歌満【ま】くら」に書かれたものである。若い男女が口吸い(接吻)をしている場面だが、女性は後ろ姿で表情は見えず、正面を向いた男性の、鋭い片目だけははっきりと見える。その男性が手にした扇子に書かれた歌で、「鴫」(男性)がその「嘴」を「蛤」(女性)にきつく挟まれているという意味だろう。
図版を250点も収載した「春画の色恋」の副題は、「江戸のむつごと『四十八手』の世界」。著者の白倉敬彦は、岩見沢市出身の世界的な浮世絵研究者である。2014年に病没し、本書は没後に文庫化されたのだが、今年は東京都の永青文庫で「春画展」が開催され、大きな話題になった年だけに、その意義を知らしめるタイムリーな解説書でもある。
春画とは、浮世絵の始祖菱川師宣が、色恋の「かたち」を作り上げたものと解説されている。では、江戸期の春画は、そもそもだれのために描かれたのか。その受容層は、大名から下町の長屋の住民までと、幅広かったそうだ。絵師の側にも、何ら恥じらいもなく、それらを「タブー」視したのは、明治の近代国民国家成立過程であったという。
「性的快楽における男女平等」の構図も春画の特徴とあるが、さすがに現代女性の側から見ると、男性視線に偏ったものもあるように感じられた。
ただ、「寝取られ男」はわざと醜く描かれており、男性間の格差が強調されていたことはうかがえる。あとは自らご覧あれ。
(2015年12月20日=年内最後の掲載です)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
春画って恋愛指南書みたいなものなんだよね、っていう視点を含めつつ、春画作者の影響関係の研究結果をまとめた本。
けっこう、同じような絵が描かれているのがほほえましいというか。(^^;
春画がノーカットで掲載されているけれど、目くじら立てる人は一定数いるんだろうなぁ。
ま、子供に見せるのはどうかという気持ちのわからないでも無いけど、大人が観る分には別にたいしたことじゃ無いよね?
みたこと、したことが無いわけじゃないでしょうに。(^^; -
菱川師宣といえば、子供頃切手集めをしていた時代に、あこがれの一枚であった「見返り美人」の作者であった。本書は師宣の春画絵本である「色恋四十八手」をベースに解説が施されている。題は意味深で、引用されている春画もかなり生々しいけれど、解説はさすがに学術文庫だけあって、興味本位のものでは決してなく、江戸時代の色恋の本質はなんだったのかということに迫るもの。文庫サイズではやはり絵が小さくて見ずらいのが惜しい。