- Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062923897
作品紹介・あらすじ
講談社創業100周年記念企画「興亡の世界史」の学術文庫版。大好評、第2期の4冊目。
ローマ文明やキリスト教以前の「最初のヨーロッパ人」はどこへ消えたのか? ストーンヘンジに代表される巨石文化、渦巻きや植物の華麗な装飾文様、妖精や小人などの伝説…「もうひとつのヨーロッパの起源」として、近年注目されている「ケルト文化」。EUなど欧州統合のアイデンティティとして、また近代西欧文明への批判として復興の気運をみせている「ケルト」の実像を、古代から現代にヨーロッパ史の中で明らかにする。
また、ケルト文化に関心を持つ多くの人々が訪れるのが、アイルランドである。それは、大陸からブリテン諸島へ移住した古代ケルト人は、ローマ人やキリスト教徒に追われてアイルランド島にのみしぶとく生き残った――と思われているからだが、最近の研究では、この「常識」が否定されつつあるという。本書では、言語学からみた「ケルト文化圏」と、歴史学からみた「ケルト人」の奇妙な関係を明らかにしていく。
そして、なぜ近代に「ケルト」は復興したのか? フリーメーソン、ナチスとの関係とは? 土着の文化は、ローマ文明やキリスト教とどのように融合し、広がっていったのか。言葉や文字は、そして文化は、いかに変容し、伝わるのか。ナショナリズムの興隆とともに語られる「民族起源としてのケルト」とは――。フランス、ブルターニュ地方の異教的な習俗や伝説の検証から始まる、異色の、そして初めての本格的「ケルトの歴史」。
[原本:『興亡の世界史07 ケルトの水脈』講談社 2007年刊]
感想・レビュー・書評
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ケルト、私の考えるのは古代アイルランドだったが、古代ケルトは大陸のブルターニュ地方が中心だったらしいという事が発見だった。
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2016-12-22
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「興亡の世界史」に入れるのはちょっと悩まれたのではないでしょうか。
栄華を極めたという史実が(見え)ない。
歴史の本を読んでいると時々姿を見せるけど、
主役として派手にふるまい関係者がそれを文書としてのこしたということがない。
読めない漢字や難しい単語はなかったのですが、
概念をイメージするのが大変。
もう少し後の時代の歴史本なら確実にカットされるような事項を
丁寧にたくさん載せている。
それって古い時代を扱う本にありがちですが、
「これ、ちゃんと読む必要あるかな、私。どうせ忘れるんだし」と思ってしまう。
それで、結局ケルトって?
「古代ケルト」は滅んだ。
だがそれはローマ人によって抹殺されたのではなく、追放されたのでもない。
ローマ文化に同化することによって、自らの独自性を喪失した。
より権威の高い文化に吸収されたのです。
とはいえ、同化によって自らのアイデンティティを完全に失ったわけではない。
ローマ文化の枠組みに取り込まれながらも、ローカルな自意識は保持し続けたのです。
また、ブリタニア島とヒベルニア島にローマの支配や足跡のなかった地域があり、
そこでは古代ケルト文化が同化されることなく生き残ったという見方がされてきたけど、
これをケルトと呼ぶべきかどうかいまだに論争が続いています。
古代ローマによる同化を免れた、伝統的には古代ケルト文化を引き継いだとされる「中世ケルト」。
この本ではこれをほとんど、ケルトという言い方を用いていません。
16世紀になってブリテン島の住民の先祖がケルト人だと語られるようになるにすぎないという、
近年の文献学的研究の成果を取り入れたからです。
この本では、キリスト教の流入によって、それ以前の民間信仰的文化がいかなる変容を受けたかを叙述の中心におき、ケルト性を強調していません。
「古代ケルト」「中世ケルト」に続いて「近代のナショナリズムの興隆とともに語られるケルト」というものがあります。
15~16世紀のガリアの発見からはじまり、18世紀のケルトマニア、19世紀後半のケルト学の誕生、
いずれも古代ケルトを自らの起源として考え、その探求とともに自らのアイデンティティを主張するケルトです。
ケルト学研究の進展によって古代ケルトのイメージが次々更新され、より鮮明で具体的なものになりつつありますが、
それを背景とした現代のケルト文化は過去のケルトとは全く別のものだと認識しておく必要があると。
もちろんその当事者には、古代から連綿と続く文化としての連続性が実感されている場合が多く、
そうした直観的意識を外部から否定する意味はないとは考えています。
古代ギリシアと現代ギリシア、古代ローマと現代イタリア、場所が同一で言語系統の連続性が認められる場合でも、その文化に隔たりがあるのに、
ましてケルトでは場所の連続性がない。
古代ケルトは大陸であり、現代のケルトはブリテン諸島が中心。
こうした時間的空間的距離を認識した上で、この本ではあえて統合的な叙述を行ったということになるそうです。 -
雑多な内容でまとまりに欠けていたが、ブルターニュに焦点を当ててケルト文化を扱っている。参考文献もいくつか読んだうえで本書に帰って来ると、新たな発見があるかもしれないと思わせてくれる。