天皇の歴史1 神話から歴史へ (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062924818

作品紹介・あらすじ

講談社創業100周年記念企画として刊行され、高い評価を得た全集がついに学術文庫化。江戸時代の光格天皇以来、200年ぶりの譲位と上皇の称号の復活を目前にして、1500年以上にわたり連綿と続く天皇制と日本の歴史の密接な関わりを究明する。第1巻にあたる本書では、戦後の古代史研究を振り返りながら、王権誕生の謎に迫る。3世紀の魏志倭人伝が記録した卑弥呼の邪馬台国とはどこか。古代史ファンなら誰もが関心をもつ問題を最新の研究で解明。三輪山のふもと、ヤマトに生れた王を中心に展開された古代国家統一への歩みを、興味深く読み解く。また風雲急を告げる朝鮮半島など東アジア情勢が、大化の改新を引き起こした背景も解説。天皇号の誕生や大和政権の成立過程、支配の構造を明らかにして、天皇と日本の歴史を問い直す注目の書。〔原本:『天皇の歴史01巻 神話から歴史へ』講談社 2010年刊〕

感想・レビュー・書評

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  • 日本の歴史を改めて知ろうとしたら、やはり天皇と公卿の成り立ちからかと思い、この本を手にしました。

    なかなか難しく、かなり読みきるのに時間を要してしまいましたが、とても勉強になる一冊でした。

    天皇家のレガリアが玉、鏡、剣の三種神器であることを知って、宝剣が大切に保管されている奈良の神社まで出掛けてしまいました。大和王朝の始まりの地の息吹も感じてきました。

    かなりたい子の昔から、朝鮮や中国との外交や争いがあったことには驚きました。もっと日本は歴史的に孤立していたようなイメージがあったので、もっと大きいスケールで日本の歴史を学び直す必要性を感じました。

    昔は皆名字を持っていたことも驚きでした。その半分くらいは、○○部さんであったこと。確かに、阿部、服部、磯部、田部、建部、武部等と今でも部が名字につく人は多い。

    もっと日本史を勉強し直してから、もう一度挑戦したい本です。

  • 神話の時代から天武天皇まで。詳細な記述を堪能した。卑弥呼が戦前の皇国史の中でどの位置に同定されていたのか、興味深いところだったが、著者によれば、西暦239年(己未、景初3年)の卑弥呼による朝貢の魏志の記述に合わせるために120年遡って神功皇后の「日本書紀」に神功皇后による朝貢との記述津があること、また「百済記」の記述を合わせていた!明らかに卑弥呼に比定する意図があるとのこと、これは初耳だった。それ以外は説明が無かったが、私としては著者が飯富皇女(顕宗・仁賢天皇の姉?)がシャーマンであり、もしかすると清寧天皇後に女帝に即位していたかも…との記述(P188)から、むしろこの皇女が卑弥呼のイメージに相応しいように感じた…。とはいえ飯富皇女の存在は西暦500年頃と思われるため、もちろん時代は全く合わない!神武天皇の即位を推古9年(601年)から1260年(21回)遡って革命の辛酉の年に決めたという説明も改めて詳しく教えられた。一方、大友皇子の弘文天皇としての即位があったのか否か?説明は大友のままであり、全く言及がなかったのは、私には少し消化不足。

  • 「日本文化史」 加藤順一先生 参考図書
    https://library.shobi-u.ac.jp/mylimedio/search/search.do?target=local&mode=comp&materialid=00077074
    全10巻所蔵有り

  • 2010年に刊行された「天皇の歴史」シリーズの文庫版。2016年の天皇明仁(当時)が発した「象徴としてのお務めについてのおことば」を契機とした議論の高まりが文庫版の出版に繋がったようだ。副題にある通り、神話時代における天皇系譜の成立過程を探るのが本書の趣旨であり、それは史料なき時代の考証を、記紀やその他の後世の史料の批判的読解から行おうとする試みとなる。当然ながらわかり得ぬものを扱うため推測が混入することを防ぐのは不可能だが、各種史料を複合的に批判してその裏にあるものを炙り出そうとする専門家たちの苦闘がよく伝わってくる。

    国内の史料が乏しい「倭の五王」以前を扱う第1章は比較的シンプルでわかりやすく、特に践祚に必要とされるレガリア(「三種の神器」)が魏から卑弥呼への下賜に起源することを論ずる下りは説得的。第2章では主に「記紀」を批判的に読み解くことにより、皇統が重視されるに至った経緯を明らかにしつつ、同時に大和朝廷成立における帰化人の役割や、天皇と祭祀の関わりが語られる。
    第3章からは大和朝廷における畿内政権と地方豪族の関係が論じられるが、この辺りから議論がかなり複雑になる。著者の専門領域は奈良・平安時代の律令制であるため、考証史料を各種律令から持ってくることが多くなり、律令制に関する知識が乏しい読者にはややハードルが高い記述になっているように感じた。
    第4章におけるテーマである天皇という称号や日本という国号の成立に関しては、中国大陸や朝鮮半島との関わりが内外の史料を用いて重層的に論じられている。個人的には、飛鳥の奇妙な石造物が、蝦夷との朝貢関係を維持していることの他国へのアピールであるとする著者の見解はやや突飛ではあるがシンプルで説得的であるように思えた。

    全般的に根拠史料の掲出が豊富で、これらを丁寧に読み込んで行けばこの時代の溢れるロマンを十分に味わうことができる。門外漢には辛い部分も多いが、著者の言うように京都よりも奈良にシンパシーを感じる古代史ファンなら相当に楽しめる内容だと思う。

  • 序章 「天皇の歴史」のために
    第1章 卑弥呼と倭の五王
    第2章 『日本書紀』『古事記』の伝える天皇
    第3章 大和朝廷と天皇号の成立
    第4章 律令国家の形成と天皇制
    終章 天皇の役割と「日本」

    著者:大津透(1960-、東京都、日本史)

  • 思ったより難しい

  • 天皇制はどのようにして生まれ、なぜ現在まで続いてきたのか。その誕生は東アジアの国際関係と関係があった。中国の晋の冊封を受けた倭の五王、そこから離脱してワカタケル=雄略は小帝国を目指す。その延長上で大王、そして天皇を号するが、それはやがて律令国家の中央集権制を支えるために必要不可欠の道具となった。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科教授。主要な著書に『日本の歴史06 道長と宮廷社会』(講談社学術文庫、2009年)、『律令国家と隋唐文明』(岩波新書、2020年)、『藤原道長 摂関期の政治と文化』(山川出版社、2022年)など。

「2023年 『藤原道長』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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