言霊たちの反乱 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062931700

作品紹介・あらすじ

『最後のトリック』を上回る超問題作!  犯人は、あなたの「言霊」?

―日本推理作家協会賞受賞第一作―

平和な休日、婚約者が突然怒り狂う。路上では外国人に殴られ、ファミレスでは麻薬取引現場に遭遇。ついには凶悪テロの首謀者として手配される羽目に。原因は全て言葉の聞き間違いと勘違いだった。いにしえの人々が崇敬し畏怖した言葉に宿る「霊力」が現代人を陥れようとしているのか? 驚愕の言葉トリック・ミステリに震えよ!

相手に伝わっている、とばかり思っていたのに、実は伝わっていなかった、理解されていなかった、と残念に感じる経験は珍しいものではない。(中略)
自分の心の中を完全に相手に伝えることは不可能で、それが言葉の限界なのだ。
作者はその限界を本書で衝いている。
(文芸評論家・中辻理夫―解説より)

〔『言霊たちの夜』を改題しました。〕

感想・レビュー・書評

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  • 古の人々が崇敬し畏怖した言葉に宿る「霊力」が現代人を陥れようとしているのか。

    日本語の特徴が要因となって引き起こされるめちゃめちゃな悲喜劇の3編とそこから繋がる最終章。 果たしてこれはミステリーなのか。

  • 2020/4/12
    あーこれは違う。
    私の求めている読書じゃない。
    私は物語にどっぷり浸りたいので現実に立ち返るタイプのやつは不要です。
    でもおっしゃることはごもっとも。
    ツイッターとかで書いてあったら単純に感心したと思う。
    最後のやつね。
    誤変換の話は出落ちかと思われます。途中で飽きました。

  • 日本語をテーマにした筒井康隆感のある連作短編集。
    読みやすいし、時間潰しにはよいが、物語として見るなら、うーん…
    やはり深水氏の作品はミステリの方が好みだ。

    「漢は黙って勘違い」★★★
    聞き間違い。アンジャッシュのコントのよう。
    「ビバ日本語!」★★
    日本語の難しさ。いざ指摘されると確かに日本語は難しい。
    「鬼八先生のワープロ」★★
    誤変換。ちょっと行き過ぎな気も。
    「情緒過多涙腺刺激性言語免疫不全症候群」★★★
    ステレオタイプ。ミステリーアリーナを彷彿とさせるメディア批判がなかなか。

  • 言葉に関するドタバタ短編4作。こういうのを読むと筒井康隆と比べざるを得ない。作者もそれを意識している節があるし、解説でも触れられている。実際これなら筒井作品を再読した方がいいな。特に下ネタは読むのがつらかった。深水作品はやはりミステリーで堪能することにしよう。

  • これは笑った。読みながら声を出して笑えた小説なんて久しぶり。
    言い間違いとか聞き間違いとか、たまにはあるけど、徹底してる。いやー、面白かった。

  • 60~100頁の短編と中編4つを収録。いずれも徹底した言葉遊びで楽しませてくれますが、本当にこんな人がいたら、相手をさせられる側はものすごくイライラすることでしょう。

    『漢(おとこ)は黙って勘違い』では、日本語に同音異義語がとても多いことに着目。主人公が「言いまつがい」ならぬ「聞きまつがい(笑)」を繰り返した結果、悲惨な運命に。

    『ビバ日本語!』の主人公は、自分が優秀だと自負する日本語教師。彼の生徒たちは教えられたとおりの文法ルールを守って日本語を話すわけですが、これがなんとも変なことに。

    『鬼八先生のワープロ』に登場するのは、いまどきパソコンではなくワープロしか使えない文芸評論家。自分のワープロが壊れて困っていたところ、他界した著名作家のワープロを借りることに成功。ところがこのワープロの変換ミスがエロすぎる。

    『情緒過多涙腺刺激性言語免疫不全症候群』の主人公は、ステレオタイプ化された言葉、すなわち「クサイ表現」を聞くと発作を起こします。どこへ行ってもクサイ言葉だらけのせいで蕁麻疹が痒い痒い。発作が起きると見境がなくなり、殺人事件にまで発展。

    『美人薄命』がとてもよかった深水黎一郎。引き出しがずいぶん多いようで、これはまたまったくちがうタイプのブラックな小説でした。世の中、勘違いするおっちょこちょいが多すぎると主人公はのたまうけれど、いちばんわかっていないのは自分だったりして。わが身を振り返ることにします。

  • バカミスの類いだが、最後の「情緒過多涙腺刺激性言語免疫不全症候群」という短編は、唯一少しだけシリアスで、メディアの報道の仕方への批判的作品になっていた。これが一番面白かった。

  • 〇 概要
     言葉というものの不確かさ,脆弱性を徹底的に浮かび上がらせた4つの作品からなる連作短編集。個々の作品はそれぞれ独立した作品として楽しめるが,ある回の主人公がほかの回で登場する登場人物たちの交わす会話にも登場するなど,同時期に起きたエピソードが集められており,連作短編集のような作りになっている。言葉の脆弱性という深いテーマを大いに笑えるギャグ小説として仕上げられた作品

    〇 総合評価 ★★☆☆☆
     ユーモア小説とは難しいということを痛感する作品。ギャグ小説なのだが,「男は黙って勘違い」と「鬼八先生のワープロ」はかなり寒い。「ビバ日本語!」は駄作で,「情緒過多涙腺刺激性言語免疫不全症候群」はやや面白かったが,トータルで見ると作品全体のレベルは低い。ばかばかしい小説として頭を空っぽにして読むしかないかな。評価としてはぎりぎり★2。深水黎一郎はユーモア・ギャグ小説は向いていないような気がする。

    〇 漢は黙って勘違い
     「汚職事件」を「お食事券」と誤解したり,「不通」を「普通」と誤解するような男が主人公の短編。同僚の杉本との電話で,「関は入れない」,「梶はダメ」,「何よりも重視すべきなのは若狭だよ」という会話を,同棲していた女性が聞いて誤解して出て行ってしまったところは笑えた。全体を見ると,ユーモア小説というよりギャグ小説というにふさわしいばかばかしいでき。ギャグも寒いものが多く,それほど面白くない。オチは無差別テロ犯に間違えられるというのもの。オチもイマイチ。

    〇 ビバ日本語!
     日系企業のフランス人ビジネスマンの妻達に日本語教師を主人公とする話。前半は,日本語を外国人に教えるに当たっての,なんとも言えない日本語論が展開される。後半は,スミス氏と飲み会でおかしな日本語を使いながら過ごす話でオチはスミス氏が麻薬密売犯だったというもの。これも非常にばかばかしい話

    〇 鬼八先生のワープロ
     山田シフトという特殊な配置のキーボードを使って仕事をするために,伴鬼八という作家の遺品のワープロを借りて文芸批評の原稿の清書をする話。ワープロの誤変換で,エロい変換をしてしまうという話で,延々と誤変換とそれに悶える話。あまりにもばかばかしい。ショートショートレベルのネタとしか思えない。

    〇 情緒過多涙腺刺激性言語免疫不全症候群
     何でもかんでも大げさにして盛り上げないと気が済まないという世の中の風潮をテーマにした作品。主人公は,情緒過多涙腺刺激性言語免疫不全症候群,すなわちクサイ言葉アレルギーであり,クサイ台詞やステレオタイプなフレーズを聞くと体中に蕁麻疹が出て,さらにそれが続くと時制の箍が外れて暴れだすという。主人公は,ひょんなことから犯罪者となってしまい,テレビ業界に勤める友人の進めてテレビに出て,自分の症状を語る。しかし,その内容は見事にステレオタイプな内容に吹き替えられてしまい,最後は死んでしまうというオチ。この話はそこそこ面白かった。

  • 用法で変化する言葉の不完全さをコメディタッチでおちょくり倒す短編集。扱うテーマの割に新喜劇を見ているような軽い読み味。ミステリーアリーナに繋がるマスメディアへの描写も多々あってオッとなった。あと『ビバ日本語!』に全裸中年男性が登場して笑った。

  • 深水黎一郎の短編集。

    言葉の脆さや恐ろしさを題材にしているがダジャレや下ネタなどを駆使し面白くなっている。

    よくここまでこだわったなぁという印象。

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著者プロフィール

1963年、山形県生まれ。2007年に『ウルチモ・トルッコ』で第36回メフィスト賞を受賞してデビュー。2011年に短篇「人間の尊厳と八〇〇メートル」で、第64回日本推理作家協会賞を受賞。2014年、『最後のトリック』(『ウルチモ・トルッコ』を改題)がベストセラーとなる。2015年刊『ミステリー・アリーナ』で同年の「本格ミステリ・ベスト10」第1位、「このミステリーがすごい!」6位、「週刊文春ミステリーベスト10」4位となる。

「2021年 『虚像のアラベスク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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