- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062934206
作品紹介・あらすじ
16歳のランチ、28歳のプロポーズ前夜、34歳の結婚記念日、47歳のクリスマス、3歳のお昼寝タイム、63歳の何もない一日。リンデは「お互い心から一緒にいたいと思える相手」を求め続ける。密やかな孤独と後悔、それでも残るほのかな期待を丁寧に描いて、女性たちの圧倒的な共感を呼んだ第27回三島由紀夫賞受賞作。『異類婚姻譚』で2016年度芥川賞を受賞した人気作家による長編。
感想・レビュー・書評
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「お互い心から一緒にいたいと思える相手」を求めることには興味はないが、「自分を好きになる方法」があるのなら是非知りたい。
本谷有希子さんの作品は、数年前に何作か読み耽った時期があり、エキセントリックな一面があると思ったのと同時に、人間の良い面も悪い面もすごくリアルに描写される方だなと思っていました。そして本作は、後者に当たると思いました。
読んでて、34歳の結婚記念日までは笑えたのだが、それ以降は(3歳を除き)、笑えなくなっている自分に苦笑するしかなかった。ドキュメントを観ている感覚ですよね。この、こういう女性いるよねという、リアル感は本当にすごい。
主人公の「リンデ」の一見、お洒落な名前とは、また対照的に、時に見られるあざとい感じや、要領よくしようとして逆効果になるところや、心から憎たらしいと思える一面もありつつ、人の良すぎるところや、老夫婦を見て感動しているところには、やはりこれが人間なんだという、一種の安心感を得た気分になり、自分を好きになる方法も、一生かけて、気軽に探せばいいんじゃないの、と思えました。
まあ正直、63歳の一日は哀愁を覚えもしたのだが、色々あっても、翌日のリンデ自身の意識は変わっていないように見えるところには、本当に励まされた。いや、それ以上に前向きにも見えてきた。だって、人生はこれからもまだまだ続くのだから。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
他人への期待値が高い主人公を、幼少期から老いるまで描いた作品。
章は16歳→28歳→34歳→47歳→3歳→63歳の順で構成されています。最初に多感な時期、そこから少しずつ落ち着いていく主人公。一度3歳に戻ることでどのように今の性格が芽生えたのかを振り返れたのが面白かったです。
正直言って主人公にイライラしながら読んだのですが、完全に嫌いになれず、どこか自分と重ねる部分もあったのが心苦しかった...
女の面倒な部分を濃縮還元1000%したものが見れるので、女性の方が楽しめる作品です。
特に28歳期の男女のやり取りはむちゃくちゃイライラするけれど、分かんないでもないという複雑な気持ちにさせられます。
客観的にみると「どうなんそれ!?」という言動が多いですが、主人公は終始自分のことを受け入れて、孤独な状態もある程度気に入っているご様子。これがタイトルにつながっているのかなと考察しています。
昨今、世の中では素敵な人間になって自分を好きになろうという流れがありますが、自分を好きになるにはそんな大層な人間になる必要はないということではないでしょうか。
なかなか皮肉の効いたタイトルです。
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今後何度も自分の人生の中で読み返したいと思った小説。
25歳の私にはまだ早いのかもしれない。きっともう少し経ってから読み返したら違う受け取り方が出来るんだろう。
物や情景の描き方が丁寧で、一つ一つの景色にリンデの心が映し出されている。読んでいて、リンデの心に寄り添う想像力が掻き立てられる。
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その繊細さについて共感し合える人と話がしてみたかった。できれば心の豊かさや機微というものについても。
「こんなふうに知らない小道を発見して、幸せだと
思れば、他に何もいらないのかもしれないわね。」
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「自分が心から一緒にいたいと思うピタリと合う相手」なんているのかな?
多分誰もがどこかでプラマイを補いながら少し妥協したりしてるのではないかと。
はたまたそれを追い求める事も間違いではない。
けど、結果待っていたのはどうしようもない孤独だ。
相手を追い求めたが故の孤独である。
じゃあ、「寂しさを紛らわす為に特にどうでもない相手と一緒にいる」のが正解なのか否なのかもそれはまた個人の問題で正確な答えはない。
まあどちらにせよそこに待っているのは圧倒的な「やるせなさ」だろう。
女性であれば、自分の主観ではあるが「ああ、わかる」というシーンが少しはあるのでないかと思う。
「なんとなく諦めてしまっている」感覚は多少なりともわかるような気はするかなぁ。
なんとなく、なんとなく、同じだから。 -
カーヴァーとかサリンジャーとか、自分が学生の頃親しんだ短編を思い起こさせて、あー、これは賞取るやつだなと思った。
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比喩がうますぎ
時間の切り取り方のセンスのよさ -
確かBRUTUSの読書特集で知ってに取った本。久しぶりの、もしかしたら10年ぶりくらいに読む本谷有希子かもしれない。若い頃は、第1章16歳のリンデのモヤモヤのような、本当の友達は...みたいな女同士の面倒くさい感情の描写にすごく惹かれた。でも私も作者も年をとったのか、もっと年配の女性の描写に主眼が移り、そこに映し出される「お一人様」の姿が痛々しかった。