- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062935296
感想・レビュー・書評
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連続射殺間・永山則夫の裁判から、死刑の基準とは何かを探るノンフィクション。永山裁判の記録を読み込み、死刑とした地裁判決、それを覆して無期懲役とした高裁判決、さらにそれを差し戻した最高裁判決、それぞれで永山は何を訴え、裁判官は何を考え、そして世論はどう動いたか、綿密に検証した。特に、最初は社会を弾劾していた永山が、伴侶のミミさんを得て被害者の慰藉のために生きたいと願う姿は感動的だ。それを受けて、究極の刑罰である死刑には、裁判官の誰もが一致する基準が必要との考えから無期懲役とした画期的な高裁の船田判決が生まれた。しかし、世の懲罰感情は根強く、最終的に死刑となる。その判決文にあった基準が「永山基準」として独り歩きを始めた。その経緯は、私たちに、死刑は本当に必要かを問いかける。
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恥ずかしながら、自分は永山則夫について、「貧困育ちの少年が4人を殺害した。獄中て作家になった」くらいの情報しか知らなかった。
永山則夫はちょうど自分の父母の時代で、母は彼より年上だが、東北の兄弟の多い家庭の下から二番目で、同じように集団就職で15で東京にきている。これまた同じように先に東京にいた兄を頼り生活し…母の上京物語は、オリンピックやらなにやら、楽しい話が多い。
事件を起こすまで、彼の人生は誰にも知られず誰にも気にかけられず、透明人間のようだった。
捕まってはじめて、彼はやっと人間になる。
獄中で結婚した和美さんという人がいることをはじめて知った。献身的な彼女との交流はあまりにも静謐で、ほんとうの人生を彼はやっと生きられたのだと思う。
最後の判決をむごいということはいけないのかもしれないけれど、意地を張らずに最後の日々を彼女と過ごせばよかったのに、と思わずにはいられない。
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2017.08.04読了
死刑の基準は、結論できない。