女王の百年密室 GOD SAVE THE QUEEN (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 53
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  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062935838

作品紹介・あらすじ

旅の途中で道に迷ったサエバ・ミチルとウォーカロンのロイディは、高い城壁に囲まれた街に辿りつく。高貴な美しさを持つ女王、デボウ・スホの統治の下、百年の間、完全に閉ざされていたその街で殺人が起きる。時は2113年、謎と秘密に満ちた壮大な密室を舞台に生と死の本質に迫る、伝説の百年シリーズ第一作。

感想・レビュー・書評

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  • #読了 2024.4.6

    WWシリーズの読みたい本があったのだけど、どうやら続きものみたいで。調べてみるとその前にWシリーズとこの百年シリーズを読んだ方がいいみたいなのでここからスタートすることにした。

    普段は舞台が現代のものしか読まないからSF系は久々だった。めちゃめちゃ良かった◎
    死生観とか法哲学とか。「理解を超える科学は宗教に見える」って言葉を何かで見かけたけどそんな感じもした。科学なのか神様なのか。

    現実の現代において「自分の身を守る」というのは自責と言われてもいいほど当たり前のことで、それは時に「人を疑う」こととイコールであり、理由の有無問わず悪意を向けられることはありえることだ。
    それを、なぜ人を疑うの?と性善説全開で詰め寄られ、その上それが成り立ってる文化の国(?)を目の当たりにすると、自分の"当たり前"に自信が持てなくなる不思議。同時にそれが異様に宗教ちっくに見える。。破綻したことを言ってるわけではないのだけど。うまく飲み込めない。まさに文化の違い、価値観の相違なのだろう。

    悪意は無くなればいいと思っているけど、いざほんとになくなると、人工的というか、人間味に欠けるというか、妙な気持ち悪さ。
    悪意がある方が人間味を感じることへの悲しさよなぁ。

    高い壁の中の街ってのが、進撃の巨人のアニメのかんじで私は脳内再生されたけど、高さは違えどあんなかんじかね?

    「モモ(ミヒャエルエンデ)」や「旅のラゴス(筒井康隆)」などが好きな人、そして"価値観"の話が好きな人は楽しめると思う。
    自分の当たり前の感覚を疑う感じは、テイスト違えど考えさせられる点では村田沙耶香さんの作品好きな人もいいかも。


    ◆内容(BOOK データベースより)
    旅の途中で道に迷ったサエバ・ミチルとウォーカロンのロイディは、高い城壁に囲まれた街に辿りつく。高貴な美しさを持つ女王、デボウ・スホの統治の下、百年の間、完全に閉ざされていたその街で殺人が起きる。時は二一一三年、謎と秘密に満ちた壮大な密室を舞台に生と死の本質に迫る、伝説の百年シリーズ第一作。

  • 久々の森博嗣作はやっぱり難しかったです。読み終わってもまだ、1回では理解できないことが多くありました。どこかにこんな街があるかもしれないと思わせられるけど、行ってみたいかと言われると遠慮したいなと思います。面白かったです。

  • 「脳が浸る」という言葉が相応しいほどの森博嗣ワールド。ミチルの一人称視点で進む物語は未来のテクノロジイによってより可視範囲を広げている。
    先進技術が存在する未来の文化人類史的舞台で起こる事件。未来から見たらおしゃれでイケてるゴミ箱すら貝塚扱いなんだろうなと思った。人間としての終わりは未来にあるのだろうかと考えてしまった。

  • インスタの小説紹介で気になり読んでみた。

    カイバミチルとロイディの関係性が
    「キノの旅」に出てくるよな関係性だなと思った。

    時代は2100年くらいの設定で
    この時代では知識のやりとりが全てデータで行われ、
    紙や本などの媒体が非常に貴重となっている。
    この設定も面白いと思った。

    物の価値観(特に死に対する)が特殊で
    価値観としての考え方が一通りしかない。
    他の考え方はないという国にミチルたちは迷い込む。

    そこで起こる殺人。
    死んでる人は死んでる。ただそれだけ。
    犯人なんて捜さない、死んでる、それで終わり。

    自分の価値観と全く違う価値観の人といると
    別世界にいる気がしてきてしまう。

    ちょっと期待しすぎたのもあって
    終わり方が個人的にはうーんと思ってしまった。

  • SFというか、幻想小説に近い読後感だった。
    私はS&Mシリーズが大好きで、本作はあらすじに対してまったく興味がなかったものの、主人公の名前がミチルであるというただそれだけで、真賀田四季を少しでも感じられるのではないかと考えて読み始めた。
    ミステリや近未来のSFの感があるものの、基本的には森博嗣的な生死に関する問答や、法哲学的な問答("殺人者をなぜ拘束するのか")、世界が遠い未来にどのような変容を遂げているのかの思考実験とかがメイン。
    相変わらず好き嫌いが分かれるなと。私にとってはそのあたりはS&MのFかGのηが最強なので、評価としてはこんな感じです。
    あとは、ルナティックシティを真賀田四季の信奉者が作って……、的な何らかの流れを感じたかったので、ちょっとがっかりしてしまった。多分、期待しすぎなんだと思う。次の作品の方がそのあたりがはっきりわかるらしいので、また余裕ができたときに次作を読もうと思う。

  • ミステリーというより、命の価値観が異なるスコシフシギな世界に迷い込んで、生きること、復讐すること、罪などなど。改めて主人公と一緒に考えるような物語だった。

    未来の技術に託してコールドスリープさせるので基本、「死」ではなく「眠りにつく」という捉え方の世界。だから近しい人が眠りについても淡々と受け入れる人の描写がある。ミチル同様、異質に思えるけれど、例えば他の物語で登場人物たちが「来世でまたね」的なことを絶対絶命の場面で言ってたら、異質さではなく何やら泣けてくる……かも。来世も遙か未来の科学技術も不確かな約束事なのに。

    来世は証明しようがなくて信じる信じないが個人の判断に委ねられる。有るんだかないんだか、て感じだ。科学技術よりも遥かに不確かで、口にする登場人物たちも心の底から来世を信じてるとも思い難かったりする。不確かさにすがるしか他に道がない儚さに胸が詰まる。何より「命が終わる」こと前提だ。
    一方の、ルナティックシティは「眠らせといて未来で治そう」(かたく信じてる)。儚くない。事務処理感すらある。名残惜しさがない。命が終わらない。

    でも、一緒に過ごせなくなるなら、寂しかったりつらかったりするもんじゃない?人間だもの。
    あと、未来の技術に期待するあまり、みんな、だんだん大した怪我や病気じゃなくても、できるだけいい条件で眠りについて、未来で楽しく過ごそうってならないの?
    などなど、読んでて思わず思考が良き道に行っちゃう話だった。

  • 森さんの本は、s&mシリーズしか読んだことがなかった。10年以上前だ。ふとしたきっかけでwシリーズを読み、このシリーズも手に取ることになった。

    肉体が失われた絶え間ない独り言のような対話。
    思考実験的な物語。
    森さんの本を読んでいて、初めて村上春樹のことを思い出した。深く考え、確認はしなかったけど、何故か文体に類似性を感じた。

  • 森先生の本を久し振りに読んで、最初ちょっと、ん?って思ったけど最後はやっぱり森先生だなぁって思いました。

  • 犯した行為に
    罪である
    罪を罪だと決めるのは
    決まりがあること
    正義とか悪とか
    誰が決めるのか
    どう決めるのか
    ここにいるのか
    そういうことが決められてない世界では
    罪も存在しないのか

  • Wシリーズのために8年ぶりくらいに再読。
    これ2000年に初版刊行って本当に????
    なんかどんどん物語の世界に現実が近づいていないか??
    森先生すごすぎないか???え???

    全く内容を覚えていなかったけど、血か、死か、無かを読んだあとだったので、色々衝撃。
    ロイディってウォーカロンだったの....
    ウォーカロンてWで初見かと思ってたのに...
    20年前の伏線をどんどん回収してくのさすがだし、物語が古臭くなく近代的な未来として想像できるのすごい...

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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