永山則夫 封印された鑑定記録 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062936286

感想・レビュー・書評

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  • p446 遺骨は、かつての妻の手によって、生前の遺言どおり帽子岩の見える網走の海に撒かれた。

    この一行に戦慄した。ここに込められた深い意味。ここまでに至る濃密な人生の記述。人間洞察の深さと広がり。

  • 連続殺人犯として死刑になった永山則夫の膨大な精神鑑定書、その作成にあたって医師と交わした録音テープが残っていた!その録音テープと鑑定書から、永山則夫の半生と、彼がなぜ犯罪を犯すに至ったのかを徹底した調査で描き出す。そこには、永山家の家族、両親と四男四女の八人きょうだいの物語があった。幼い時に母親に置き去りにされ、網走の厳冬を子供だけで生き抜いた壮絶な体験、その後も兄たちからくわえられたリンチ、唯一の優しさを示してくれた姉の精神病…不幸には不幸の数だけ顔があることを思わせる迫真の記録である。

  • 著者の長期にわたる丁寧な調査が、永山という死刑囚の人物像を生き生きと描き出し、彼の経験してきた苦難の人生が胸に迫る。永山に自身の鑑定を否定され、犯罪心理研究を断念した石川医師が、永山の死後に、彼が死ぬまで鑑定書を大事に取っていたという事実を知り、自分の費やした時間と努力が無駄ではなかったと、報われた思いを味わうくだりは感動的だ。

  • 石川医師が向き合い続け、永山が言葉にし内省を深めていく膨大な時間と知力を尽くした歴史が綴られている。

    印象的な言葉

    人間の心の奥深さ、そしてそれを本当に理解することの難しさを語りかけているようだった 

    このとき、この出会いがあったからという宝物を得た人は、たとえそれが家族でなくても道を切り拓くいて行けるはずです

    たった一本でもつながっていれば

    努力するには愛情や褒められた経験などのエネルギーがいる

    非行ということものの多くは、親の仕打ちにこれ以上、我慢できなくなった子どもが止むに止まれず行動で示すことなのだと。
    人に嫌われて怒られる非行を好き好んでする子どもなどいない。そこには何か理由があり、非行は彼らが発する苦しみまたは悩みのシグナルだと受け止めるようになった
     

  • つらくて読み飛ばしてしまったところもありつつ、なんとか読了。
    みんなが生きるのに必死だったこの時代、親や兄弟だけを決して責められるものではない。そして、現代にもきっと永山のように家族から愛情をかけられず育つ子供たちが大勢いると思うと苦しくなる。

  • 永山則夫〈ながやま・のりお〉は行きずりの人を次々と4人射殺した連続殺人犯である。犯行当時(1968年)、19歳だった。1997年に死刑執行。享年48歳。石川義博医師は永山の精神鑑定を行った人物である。
    https://sessendo.blogspot.com/2021/11/blog-post_27.html

  • 分厚い本でしたが
    読書初心者の私でも一気に読んでしまうほど、
    興味深い内容でした。
    一見、極悪殺人鬼に思われる人物でも
    その背景に様々な事情があることが
    よく分かります。

  • 愛されているという実感が、人との関係をつくる。自分への自信をつくる。身近な人との愛着の大事さ。何事もそれが土台となるなー。

  • 気づき
    ・愛されること、自分の存在を認めてくれる誰かがいることで、初めて自分のことを好きになれる。
    ・自分も永山則夫の環境であったら自分の事を果たして愛せたであろうか
    ・無償の愛は、遅すぎることはないのではないか

    TO DO
    永山則夫を他人事として捉えるだけでなく、自分自身の中に永山則夫を見出し、どうすれば、世の中の解決へつなげることができるのか、考える、ことが問われていると思う。
    家族、親友、仕事関係に対しては無論、敵に対しても、無償の愛、見返りを期待しない価値提供を心がけたい。

  • 堀川惠子さんシリーズ(勝手に命名)の最後の1冊。
    教誨師、死刑囚からの手紙、永山基準と読み進めてきてこの本が総まとめといったところだろうか。
    どこかで救えなかったのだろうか、と思う。
    一人歩きしている永山則夫像が見事に崩れた。
    仕事柄子供の家庭環境に目を向けることが多いので今まで以上に気をつけて見ていきたい…と思った。
    自分にできることはそれくらいしかない。

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著者プロフィール

1969年広島県生まれ。『チンチン電車と女学生』(小笠原信之氏と共著、日本評論社)を皮切りに、ノンフィクション作品を次々と発表。『死刑の基準―「永山裁判」が遺したもの』(日本評論社)で第32回講談社ノンフィクション賞、『裁かれた命―死刑囚から届いた手紙』(講談社)で第10回新潮ドキュメント賞、『永山則夫―封印された鑑定記録』(岩波書店)で第4回いける本大賞、『教誨師』(講談社)で第1回城山三郎賞、『原爆供養塔―忘れられた遺骨の70年』(文藝春秋)で第47回大宅壮一ノンフィクション賞と第15回早稲田ジャーナリズム大賞、『戦禍に生きた演劇人たち―演出家・八田元夫と「桜隊」の悲劇』(講談社)で第23回AICT演劇評論賞、『狼の義―新 犬養木堂伝』 (林新氏と共著、KADOKAWA)で第23回司馬遼太郎賞受賞。

「2021年 『暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

堀川惠子の作品

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