新釈 うああ哲学事典 下

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784063375572

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  •  仕事上の必要があって、須賀原洋行の『新釈 うああ哲学事典』(上下巻/モーニングワイドコミックス)を中古で購入して読んだ。

     2000年代初頭に『モーニング』で連載していたころはリアルタイムで読んでいたが、コミックスでまとめて読むのは今回が初めて。
     連載時に断片的に読んでいたときには真価が十分わからなかったが、通読するとマンガ史に残る傑作ではないかと思えてきた。

     古今東西の哲学思想を毎回1つずつ取り上げ、その思想を題材にした短編マンガにするという、じつにチャレンジングな試み。

     といっても、『マンガで学ぶ哲学史』みたいなよくある学習マンガではない。
     たんなる哲学解説マンガや哲学者紹介マンガではなく、一つの思想を深く咀嚼したうえでその核をグイッと取り出し、それをオリジナルな作品の中に消化するという離れ業をやってのけているのだ。

     各編ともアイデアが秀逸で、マンガ作品として完成度の高いものになっている。SFあり、パロディあり、ブラックコメディあり、ストレートなギャグマンガありと、さまざまなスタイルを自在に使い分けている点もすごい。

     もともと、須賀原は大学の哲学科に学んだ「哲学好き」。『気分は形而上』などの代表作を見てもわかるとおり、得意のギャグマンガにおいても哲学の薫りを漂わせる作風の持ち主だ。これは彼が「哲学好き」の側面を全開させた、他に類を見ない哲学マンガなのである。

     哲学に真正面から挑んだマンガとしては、業田良家の『ゴーダ哲学堂』と双璧をなすものだと思う。マンガ表現の可能性を押し拡げた傑作といってよい。

     ソクラテス、プラトン、デカルト、カント、ショーペンハウエル、ニーチェなど、哲学史に大書される面々の思想が中心ではあるが、それだけには終わっていない。
     養老孟司の『唯脳論』やドーキンスの「利己的遺伝子とミーム」などの科学分野の思想、さらには貝原益軒の『養生訓』、新渡戸稲造の『武士道』、果ては安部公房の『箱男』やカフカの『変身』といった小説まで、一つの「思想」として取り上げているのだ。そうした幅広さも、本作の独創性の源になっている。

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