- Amazon.co.jp ・マンガ (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784063883428
作品紹介・あらすじ
【立ち会い出産編】初めての出産、初めての分娩室。見ず知らずの人間に囲まれた空間での出産の際に、夫が傍にいるという事が、妊娠の不安を大いに和らげる。他【双子編】【卵子提供編】を完全収録。
【立ち会い出産編】初めての出産、初めての分娩室。見ず知らずの人間に囲まれた空間での出産の際に、夫が傍にいるという事が、妊娠の不安を大いに和らげる。他【双子編】【卵子提供編】を完全収録。
感想・レビュー・書評
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テレビドラマ化もされた人気シリーズの第5巻。
産科を舞台に、妊娠出産を巡る悲喜劇と、主人公サクラ先生を中心とした群像劇が、綿密な取材に基づく圧倒的なリアリティと現場感を伴って語られます。
この巻には、「立ち会い出産」、「双子」、「卵子提供」の3編が掲載されています。前の2編は産科の日常風景を描くもの、後1編は高齢出産、不妊治療、卵子提供による妊娠出産などをやや緩く紹介するものです。
これまでの巻で少し重たい内容を取り上げてきたこともあって、この巻は家族やお父さんの気持ち、双子妊娠中のお母さんの不安、子供を産みたくても産みにくい事情など、どれも大切だけれど、あまり涙腺崩壊にならなくてすむお話が中心で、(おかしな表現かもしれませんが)少しほっとしながら読むことができました。
また、新生児科のホープで生意気盛り、下屋先生と同期の白川先生が登場します。救急同様、心身ともにしんどい診療科所属の先生の今後の成長がいずれ主要なテーマとして取り上げられることがありそうです。逆に、最初から出演しているのにここまで突っ込んだ出番のない下屋先生もそろそろ活躍するところ、成長するところを見てみたい。
以下、各エピソードに一言ずつ。
「立ち会い出産」
社長妊婦、ほんわか妊婦、そして6回目妊婦それぞれの出産が描かれます。
出産の立会いについてはもう書かれているとおり。ウチでは、今でもふとした拍子に話題になります。サクラ先生の言うとおり、間違いなく夫婦の大切な時間になりました。
そして、巻末の「極道助産師コマッちゃん!」、もう毎巻連載して欲しいw
帯に「『コウノドリ』は僕自身が妻の出産に立ち会ったから生まれたんです!」ってありますが、ほんわか妊婦と漫画家亭主の組み合わせには作者自身が投影されているのかもしれませんね。
ところでいきなり脱線しますが、満月の日に「人間の」出産が多いかどうかは、ネットを見た限りでは「多いという科学的な裏づけはない」のが正解みたいですね。
助産師さんの体感として多いので、満月の晩は気合を入れる、くらいなら何の問題もありませんが、ネット情報だと「と報告されています」「だとか」「だそうです」のオンパレード。見事に似非科学のフォーマットに当てはまっています。『「コウノドリ」に満月の日は出産が多いって載っていた』なんて似非科学のエビデンスにされなければいいのですが。
「双子」
周りに結構双子ちゃんがいるご家庭が多い(加瀬先生もですね…)ので意識していなかったのですがお母さんのプレッシャーは相当でしょう。そう言えば、産科で多胎妊娠支援の広報も見かけましたし、つい最近も悲しい事件がありました。エピソードの中でお父さんが「一般的かつ他人事みたいな意見が我が家じゃ今一番の地雷なんだ」と愚痴っているうちはともかく、できるだけ早く、公的なものでも、そうでないものでも、お母さんを支える仕組みをぜひ。そう、双子用のベビーカー、中古をただで譲ってもらえるような、そんな仕組みでもいいから。
ところでこのあたりから、サクラ先生や四宮先生の言動に味付け、掘り下げが出てきます。例えば、サクラ先生では、下屋先生の「そのために2人を隣同士で入院させたんですね?」に「そんなわけないよ〜〜」で返すあたり、そして白川先生への「大袈裟に心配して何がおかしい?新生児科医のくせにそんなこともわかんないのかよっていう」「あれは四宮なりの白川先生への愛のムチなんじゃないかな」あたりの後輩の医師達に対する、微量の照れや歯痒さや期待感や、そんなものを含んだ先輩・ベテランとしての接し方は、ここまで見せなかった新たな一面です。白川先生のような「若手」が登場したからこそサクラ先生のベテランとしての面が見えてきたわけえで、このへんが「群像劇」の見所なのかなと思います。
卵子提供
高齢出産とそれにまつわるトラブル…いや、一言でまとめてはいけないですね。女性が高齢で出産すること、出産を希望して不妊治療を受けること、高齢にならなければ出産しようと思えない社会の仕組み、高齢での出産について広く知られていないこと、どこまでの不妊治療を誰のために受けるのか、養子と里親制度など、少子化を巡るいろいろな思いや思惑を、男性や社会一般の意見を加瀬先生に、女性一般の意見を下屋先生と小松さんに語らせる形で「お前らの話を聞いていると頭が痛くなるよ」、すなわちこの問題には正解がないことを浮き彫りにした上で、卵子提供を受けた夫婦にフォーカスします。
野田聖子さんが卵子提供を受けて子供を生んだことを公言していて、外野の声に正々堂々と反論し、本まで書いていらっしゃいます。でも、論陣を張れるのは野田聖子さんだからであって、一般人にそんなことはできません。その一般人の声を、そっと代弁してくれるこのエピソードが大好きです。
「外野の声」は野田聖子さんの本に対するamazonのレビューがまさにそれ。そして、誰が外野なのかについては、夫婦以外は、例えお母さんの実のご両親ですら外野であることも言及されています。
基本的には外野は黙ってろなのであって、それでも心無い言葉をかけてくるのであれば、小松さんが喝破したように「金玉いらないね」と言ってあげればいいのです…。
あと、加瀬先生の「呼ばれてないけどジャジャジャジャーン」大好きです。超カコイイw
でも、加瀬先生、元ネタの「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン」知ってるのかなww詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「じゃあもう金○いらないね」かな、今回一番ずっしり来たのは。
気安い言葉は災いのもと。 -
だいたい泣いてします話しがある。
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【推薦者】
体育学部 健康学科教員 三瓶 舞紀子
【学生へのメッセージ】
COVID-19流行下では、「10代の妊娠」「望まない妊娠」「貧困」の問題がよりクローズアップされました。産婦人科医&謎のピアニストでもある主人公が、様々な妊婦のお産に向き合います。この漫画に登場する様々な生命から、子どもたちを育てる社会の責任とは何か、全ての学生と特に教員を目指す学生にお薦めします。
▼配架・貸出状況
https://opac.nittai.ac.jp/carinopaclink.htm?OAL=SB00539355 -
今はコロナ禍でもう理解のある支援者のいる場でしか実現できない立ち会い出産。新しい命を家族として迎え入れる過程として、めちゃくちゃ大事なのに、リスク管理の名の下に、立ち会い出産の選択肢は多くのお産の場で、一律で排除されてしまっている。
単純にその場に一緒にいるか、いないかではなく、出産に向き合う女性を家族がどう見てどう受け止めるか、どう関わるかは、家族の人生観をも変え得る。
双子のママが抱える葛藤もわかりやすい。卵子提供もこれからますます社会問題化していく。
やっぱりいざというときに支えになるのは、支援者どうこうよりも、同じ、あるいは似たような境遇にある人、近しい体験をした人とのつながり、あるいは1番身近なパートナーの支えなんだとよく理解できる。
人が立ち直っていくには、自分ではない誰かと想いや言葉を共有することも大事だし、自分自身に立ち返って、意味づけを変えていく作業も欠かせない。
妊娠出産する女性、本人の産む力や選択を尊重し、自分自身を信じて前に進めるお産の現場がもっと増えますように。増やせますように。