未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること (講談社現代新書)
- 講談社 (2018年5月16日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065117682
作品紹介・あらすじ
本書は、『未来の年表』の続編である。ベストセラーの続編というのは大抵、前著の余勢を駆った「二匹目のどじょう狙い」である。しかし、本書は決して二番煎じをしようというものではない。「人口減少カレンダー」だけでは、少子高齢化という巨大なモンスターの全貌をとらえるには限界があった。だから今回は、全く違うアプローチで迫る。
感想・レビュー・書評
-
前作が少子化・高齢化に伴って起こることをマクロ的な視点から分析し、それを政治的に解決していくためのアイデアを綴った本であったのに対し、本作はミクロ的な視点から、我々一般国民の生活に具体的にどのような影響が出てくると予想されるか、について書かれている。
■不慮の事故は自宅で起こる
■空き家の増加(東京でも)
■駅の階段、電車の乗り降りなどに時間が掛かる
■トラック・バスの運転手の不足→運行休止、荷物が届かない
■中小企業の後継者不足から解散・倒産へ
■相続遺産の東京への移転→地方の金融機関の事業継続困難に
■投票所が減少
危機感を煽るために、少し悲観的に書かれているような気もするし、負のスパイラルもいずれ受給バランスが反転することで落ち着くだろうと思うが、これらはある程度確からしい予測がつくことなので、今のうちから手を打っておくべきだという著者の考えには100%賛成。政府にも企業にも言えることだけど、コトが起こってからの対症療法ではなく、布石を打っておきたいものだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2023/07/13 amazon 399円
-
前著「未来の年表」では国や自治体、企業に対する解決策が中心であったが、第二弾では私たち国民ができる解決策について述べられており、少子化や人口減少、高齢化による私たちの暮らしの影響について考えることができた。前著では実際に身近で起きることに関しては深く触れられていなかったため、第二弾では国民の問題として深く受け止めることができたと感じる。
少子化や人口減少が自然災害にも影響を及ぼしていることは考えつかなかった。鉄道の廃止や空き家の増加などは、少子高齢化による影響として考えつきやすいが、自然災害は地球温暖化による影響が大きいと考えていた。しかし、生産年齢人口の減少により、林業従事者が減少し森林の間伐など行う人手が不足することにより、森林が手つかずになり、土壌の流出が起きてしまうのである。これは林業だけではなく、どの業種でも起こりうることとされる。
解決策としては、前著でも述べられていたが、これからの少子化社会で日本が経済的に衰退しないためには「戦略的に縮む」ことが重要だと述べる。大量生産、大量販売からの脱却が必要だと述べる。
「日本が豊かな国であり続けるには、働き世代が減っても機能する社会へと改めてゆかざるを得ないとし、仮に働き手が1000万人減っても、社会の効率化で1000万人分の仕事量を減らせるならば、実質的に労働力不足は起こらないとの立場をとった。」(p.188) -
少子高齢化や人口減少で起こる身近なことがいろいろ書いてあって、驚いた。身近な対策としては、ライフプランを立てて、働けるうちは働くということ。けっこう深刻な問題がすぐ近くまで迫っていることがわかった。
-
『未来の年表2』河合雅司氏
【購読動機】
世の中の需要の変化、それにともなう事業構造の変化を知りたかったこと。2018年の執筆ではあるが、2023年だから「旧い」とするのではなく、状況認識の整理に当てたかったため。
――――――――
【こんなひとにおすすめ】
1)今、世の中で起こっていることを網羅的に知りたい。
2)1)が身近な生活様式にどのようなマイナス、プラスになるか?を知りたい。
3)具体的に何を目的にどのように考え、行動することが準備につながるのか?を知りたい。
――――――――
【書籍内容】
河合氏はジャーナリスト出身で、近年は大学で教鞭をとっている方です。冒頭でおっしゃっているとおり、本書の内容は既知の事実であり、新鮮な内容ではありません。河合氏が執筆した目的は、わたしたち読者が事実を①自分ごとに置き換えること。②未来に向けて準備することです。
――――――――
<個人として読む場合>
自身や家族のライフスタイルに置き換えるとよいかもしれません。なぜならば、「?年後をシミュレーションして準備した方がいいかもな・・・。」と気づけるからです。
<ビジネス書として読む場合>
世のなかの困りごと(需要)を整理できることがメリットです。なぜならば、自社の事業に置き換えることで周辺ビジネスの変化に気づけるからです。
――――――――
【感想;ビジネス側面から】
1)公共交通機関事業会社への影響
人口減少は公共交通機関へ▲の影響を与えます。シンプルにいえば利用(乗降)人数の減少です。この事象は、運営事業会社の赤字へ直結します。運営事業会社は、赤字を縮小するため、運行本数の減少をはじめとした合理化を進めます。現在の地方鉄道中心に議論されていることは、今後も都市部でも発生しやます。
(解釈)
JRおよび主要の私鉄事業会社が、本業である鉄道事業のほかに不動産、小売りをはじめとした複合型事業へのシフトを強め、利益拡大を強化しています。今後もこの流れが太くなることが理解できます。
2)一次産業(農業、林業、漁業)への影響
高齢化による事業承継の問題により生産人口が減少しています。この減少率(供給量)と私たち側の需要量のバランスが益々難しくなります。
(解釈)
農業の法人化(大規模運営に集約)の流れが強まっています。また、金融(銀行、証券)が一次産業に対してファイナンスを実行し、オートメーション化(生産性向上)を推進するニュースを観察する機会も増えました。
地方は、1次産業割合が都市部と比較して高いです。地方銀行中心に1次産業に対する事業承継、事業統合、そしてファイナンスによる設備投資(労働生産性の向上、天候不順による出荷量への影響予防)が増えると推察します。
3)アルバイト、派遣事業会社への影響
大企業は、労働力不足の課題に対してIT投資を行うことで生産性を一定水準の割合で確保することが可能です。一方で、中小企業の場合は、ITに投資する資金が不足していること、また、投資後の運用体制においてリソースが不足しているため、大企業のように転換することが困難なケースが多いです。さらに、中小企業においては、大企業と比較して正社員採用が難しい状況が続いています。
(解釈)
人的リソースが不足する中小企業が、解決の手段として「派遣」「アルバイト」に依存せざるをえない状況は継続する可能性が高いです。見方をかえれば、派遣ならびにアルバイトを紹介する事業会社は、今後も中小企業向けの営業を強化しつづけるということです。
4)不動産および金融業界への影響
高齢化、そしてそのあとの相続により空き家は増加しつづけます。直近のニュースでも触れる機会は増えました。所有者が明確になっている空き家と不明な空き家。前者においては、不動産売買につながりやすいため、流動化を期待できます。
(解釈)
政令指定都市(地価の下落が著しくない地域)、かつ主要駅に近い、かつ所有者が明確な空き家は、金融そして不動産事業会社の需要がますます高まる可能性があるのでは?と推察します。
5)地方銀行への影響
地方在住の方が亡くなり相続が発生した場合、相続された資金が地方から都市部へ流出しています。つまり、地方にある地方銀行から都市銀行へ流出しているということです。理由は、相続人の生活圏が都市部である割合が多く、相続元の地方銀行を利用するには不便が多いからです。
(解釈)
地方銀行から都市部に対する資金流出が継続した場合、地方銀行にとっては▲影響となります。なぜならば、貸出資金量に影響するからです。地方銀行では、金融収益に加えて、金融を除いた収益割合を高める中期経営計画を観察する機会が増えました。地方銀行におけるこの流れは、増える可能性が高いと推察します。
――――――――
【さいごに】
経済としてのマクロ、業界としてのマクロ、そして事業としてのミクロという具合に解釈を進めました。
河合氏が図表も入れながら説明してくれています。そのため、読者として理解しやすかったです。
執筆は2018年です。当時の内容は、2023年の現在も継続的に発生しています。
網羅的に理解できた本書は有難かったです。 -
前書が良かったので、続編で有る本書を読んだ。少子高齢化の流れは止められない。戦略的に縮む事を政策的に推進するしか方法がないのだ。国は優先順位を考えるべきだと思う。農業、物流、インフラ、警察、消防、医療、介護、国防などに戦略的に労働力を振り分ける必要があるのではなかろうか。
-
一冊目の「未来の年表」に比べ内容が薄い。
一冊目は少子高齢化がいかに進むか。二冊目のこれは少子高齢化の進行により、身の回りに起こることの予測・紹介。
内容は目次と扉の人口減少カタログだけ読めばほぼ足りる。 -
一人で2つ以上の仕事をこなす。
-
もう自分(の周り)に起きていること
●3-4 東京の路線が縮み、会議に遅刻する
→2020年冬から始まった新型コロナウイルスの流行により、学校のオンライン授業、企業の在宅勤務(テレワーク)、一般人にも不要不急の外出自粛が広がり、通学・通勤・一般旅客が減少し、鉄道各社の収益は急激に悪化した。そのため、首都圏の2021年3月ダイヤ改正では、始発時刻繰り下げ・終電時刻繰り上げが実施された。2022年3月には、ラッシュ時・日中の運行本数減便が予定されている。
●4-3 ガソリンスタンドが消え、「灯油難民」が凍え死ぬ
→足立区に住む人によると、昨年まであった灯油の移動販売が今年はなくなったという。事業主の高齢化によるものかは分からない。
●⑦テレワーク拡大する
→自分自身も2020年3月から2021年11月まで、出勤2~3日、在宅勤務3~2日のシフト勤務を余儀なくされた。
2018年5月20日発行のため、2021年からの新型コロナウイルスの流行はまったくの想定外だが、それが皮肉にも、著者の予測と対策の実現を早めてしまった。 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/715254