宝島

著者 :
  • 講談社
3.89
  • (284)
  • (312)
  • (209)
  • (59)
  • (18)
本棚登録 : 3091
感想 : 388
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (546ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065118634

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 戦後、沖縄でアメリカと日本(本国)の間で翻弄された子どもたちの物語。
    40代の自分ですら当時の状況はわからず、想像を超える環境はいろいろ考えされられた。そして、いま現在も同じような環境で暮らすひとは世界中にいるってことも。
    ただ、後半の熱量はとにかくすごいものの、そこに至るまでが冗長で正直辛かった。

  • 最初は、沖縄の人が書いたと思った。
    うちなーぐちをカナふりして、独特の雰囲気を作り出す。
    かっこで、述べている部分は、余分だと思う。
    それにしても、沖縄の底流にある文化と現代史をうまくすくいとって描いている。
    沖縄の重みを感じる 存在感のある本だった。
    それにしても、分厚くて、重い。一気に読んだが、支える手が辛かった。
    沖縄の置かれている理不尽さ。
    その理不尽に立ち向かう戦果アギヤーたち。
    沖縄の米軍基地から、物資を盗み、貧しい人たちに与える いわゆる義賊。
    英雄伝説となるオンちゃん。それを慕うグスク、弟 レイ、彼女 ヤマコ。
    嘉手納基地の戦果アギヤーから始まり、オンちゃんは行方不明となる。
    刑務所に入れられて、暴動を起こす。
    その刑務所に、瀬長亀次郎が来る。
    私は、瀬長亀次郎にあったことがあるが、その風雪に鍛えられた闘士のイメージが
    うまく描き出されている。アメリカに対決する強い姿勢。
    命をあくまでも大切にすることが、きちんと語られる。
    刑務所に入ったにも関わらず、刑事になったグスク。
    アメリカ軍兵士の女性殺害事件などを究明する。
    アメリカの政府の高官に スパイになれと 要望され、
    オンちゃんを探すことができるかもしれないと思って、スパイにもなる。
    ヤマコは、女給から勉強して、小学校の教師となる。
    小学校の校舎に 米軍機が墜落して、教え子を失い、積極的に復帰協に加わる。
    沖縄のヤクザのコザ派のリーダーになるが、那覇派の又吉を助けることに。
    グスクもレイも ヤマコが好きなのだが、それをうまく伝えることができない。
    嘉手納基地の中に 御嶽があり、ノロとユタが 伝承する。
    結局、沖縄返還とは、なんだったのか?
    「おためごかし、空約束、口から出まかせ、
    それらをテーブルに並べて、沖縄を裏切ってきたのが日本(ヤマトゥ)だ」
    核抜き、本土並みという約束も守られず、基地に毒ガスの存在。
    そして、アメリカ軍基地が 沖縄にどっかりと存在している。
    アメリカーをたっくるせ(たたき殺せ)という声の沸き上がり。
    沖縄の苦しみを背負って立つ英雄とは?
    三人の中にオンちゃんの想いが受け継がれる。

    辺野古基地への日本政府の強権的な行動に反対する沖縄の人々の前史が
    この物語の中の沖縄の人たちの思いや苦しみがしっかりと根付いている。
    読み終わって、沖縄の人が本当に喜ぶことができる道はなんなのか?
    それを真剣に考えざるを得なかった。
    じっくりと 沖縄に向き合うために 必要な本だと思う。

  • 辛い出来事も多いのに、語り口がとにかく明るいので、ワクワクしながら楽しく読めた。沖縄のこと、おおよそ知っていたつもりでしたが、知らなかった大きな史実もあり、ショックを受けました。沖縄の皆さんごめんなさい、という気持ちになりました。歴史の本を読むよりも人々を人々の気持ちをなまなましく感じられるこの本、おすすめです。

    540ページ。一気には読めず3週間ほどかかってしまった。でもそのぶん3週間ずっと、主人公たちと一緒に笑ったり泣いたりして、ともに生きたような気持ちになった。濃密な感情体験ができたので、この長さにも大きな意味があったと思う。

    • シュンさん
      私は、沖縄住みなんですが、少なからず
      基地の考え方に影響がでる作品でした。
      私は、沖縄住みなんですが、少なからず
      基地の考え方に影響がでる作品でした。
      2019/02/17
    • kyokoさん
      コメントありがとうございました。
      VXガスが基地内で作られていたこと、この本を読むまで知りませんでした。沖縄のかたには常識ですよね?
      ...
      コメントありがとうございました。
      VXガスが基地内で作られていたこと、この本を読むまで知りませんでした。沖縄のかたには常識ですよね?
      こちら〔千葉〕の人間の知識はこの程度ですから、こういう歴史は小説や映画やいろんなカタチで、なんどでも伝えたほうがいいのでは、と思いましたよ。
      2019/02/25
  • 直木賞、山田風太郎賞2冠達成!
    沖縄の苦難の歴史を背景に、20年にわたる3人の青春群像を描いた傑作。
    沖縄出身でもない筆者が文章にわざわざ沖縄ルビをつけたり、各章立てに何個かのキーワードを配したりと、本書にかける熱量も伝わってくる。
    ただ作品の肝でもある、戦果アギヤーが「予定外の戦果」としたものの正体がこれだった(本を読んでね)のは意外というか肩すかしを食らった感じはした。であれば、余計にオンちゃん一人ではなく友人の助けを借りるべきではなかったのか?
    沖縄言葉だと口げんかもやさしく聞こえるのは、耐え忍ぶ歴史から生まれた角を立てない知恵なのかも知れませんね。

    最後に、直木賞受賞にただ一人◎ではなく〇をつけた選考委員の宮城谷昌光氏の選評概要を。
    「真藤氏の賢さは、物語の中核となる人を増やさないで展開したことにある。しかも氏のずるさは、もっとも重要な人物をすぐに不在とし、それを謎として、読者を巻末までひきずったことである。」「話の落としどころとしては、形而下ではなく形而上にもってゆかないと、読み手は納得できないのではないか、と私は思った。この思いが裏切られる結末になったとはいえ、この作品を否というつもりはない。」

  • この本には熱がある!‬
    ‪まるで体感しているかのような、
    魂が喚き心打ち震えるような本。‬

    ‪戦後の米軍占領下の沖縄。
    確かにそこにいるような感覚。‬
    ‪両手に残っている金網の感触。‬
    ‪吹き上がる土埃。空に轟く戦闘機の音。‬

    ‪怖くて。苦しくて。
    やりきれない悲しみ。血が滾るような思い。‬

    でも、それだけではない。
    もがきながら生きる3人の幼なじみの、
    根の明るさ、芯の逞しさ、熱い息吹を肌で感じるような疾走感。

    実際に沖縄で起こった事件などを背景に、
    行方不明になった島の英雄の消息を追う3人の奮闘記は、
    エンターテイメントそのものだし、ミステリとしても楽しめる青春小説となっているのが凄い。
    紛れもなく傑作小説!

    誰もが頑張って(チバって)生きてきた。

    降りかかった理不尽な運命を、どんな想いで沖縄人(ウチナンチュ)たちは「なんくるないさ」と生きのびてきたのか。

    きっと、忘れられないことを、忘れなきゃ生きていけなかった人が、生きてく知恵として生み出した言葉なのだろう。

    本作品で、はっきりと区切られている〝沖縄人〟と〝日本人〟
    自分は沖縄の歴史について、教科書でどれ程の言葉で学んだだろうか。
    私はまぎれもなく〝本土の人〟なのだ。
    線引きに悲しむ権利すらないほどに。
    そんな自分にできることがあるのかわからないけれど、
    この本を多くの人に届けたい!と心から思いました。


    本土返還までの20年間。

    あなたに目があるのなら
    目を逸らしてはならない

    あなたに耳があるのなら
    耳を塞いではならない

    あなたに心があるのなら
    どうか歩み寄ってほしい

    沖縄には、日本人が考えなくてはいけない問題が今もなお続いています。

    この本を開いて、これまでの沖縄を、これからの沖縄を、しかと見据えてほしい。

    ひとりの日本人として、
    大切な魂の旅が、ここにあります。

  • 長くかかった…
    図書館延滞でも読み終わらずkindleばん購入の運び。

    沖縄の人たちがアメリカーに傷つけられて
    今もなおこの話と同じ延長線上に生活があるのだなと。

    飛行機がふってくるし、女子どもは襲われるし、
    毒ガスはしこまれてるし。

    基地がなくなって、雇用が充実すればいい。私が生きてるうちにそうなればいい。

    さて、アメリカーにやられっぱなしでなくて
    戦って、奪って、状況を変えようとする人々の
    強さ。
    熱く生きる。英雄が帰ってくることを最後まで
    期待したけど…

    いろんな弱い人たちが殺されて、
    強い男もやられて、
    悔しいね。早く追い出してやりたいね。

    それと、ウタキや霊能力者などの文化にも触れてきょうみぶかかった。歴史を知ると、必要なものだったこともよくわかる。

    それにそれに、ウチナーことば。リズムや愛嬌のあるかんじ。マスターしたい

    大和人がウチナーといっしょに変えないといけないね。

    オンちゃんが基地から持ち帰った1つのヌチは、それが大きくなって宝物だと教えてくれた。あきさみよう!にあふれた、ヌチがあるこの世界自身だと。

    痛みだらけのこの話が、ほぼ現実だなんて。のんきな大和人が生きてる同じとき、沖縄で続いている時間なのだな。




    スケール、スピード、迫力、歴史的な背景に触れられること、人物の魅力、いろんな面でお腹一杯の本である。大事に大事に読んだけどまたそのうち読もうかな

  • ウチナーンチュとして どう向かえばいいのか、何が出来るのか分からないまま生きてる自分が恥ずかしい。そんな気持ちにさせられた。

    色々 複雑なことが多くてはっきりしない基地問題。穏やかに暮らしたい住民を 逆撫でするような事件・事故。この本を読んだ後 改めて色んなことを考えさせられます。

    今、まさに たくさんの人に読んで欲しい。
    私も読むことが出来て良かった。

  • 沖縄県民です。面白かったです。私自身が感じている沖縄とは別の、あくまでフィクションの沖縄として楽しめました。沖縄方言や沖縄訛りは、監修がつかないなら最低限にして欲しかったです。違和感があって読みづらい。

    • シュンさん
      私も読んでいて、この使い方おかしくない?って、場面が何個かありました!
      ちょっと、気になりますよね。
      私も読んでいて、この使い方おかしくない?って、場面が何個かありました!
      ちょっと、気になりますよね。
      2019/02/17
    • aoihitoさん
      方言、無理矢理使わなくてもいいと思った。
      方言、無理矢理使わなくてもいいと思った。
      2019/03/03
  • 戦後から返還までの沖縄を描いた物語。
    最初は正直とっつきにくさを感じたけれど、沖縄の叫びとも言えるストーリーは次第に熱を帯びてくる。
    その熱に心つかまれ乱された。
    どこまでも続く青い空、明るさ溢れる地、そんなイメージであった沖縄。あぁ、自分はそんな沖縄の表の顔しか見ていなかった。何も沖縄の裏側とも言える歴史を知らなかった、そう実感した。今後、沖縄から発せられる言葉ひとつひとつが自分の中でぐんと重みを増していくに違いない。読んで良かった作品。

  • どっぷり小説の世界観にハマった。戦後間もない沖縄を舞台にたくましく生きる沖縄の人々の生き様が生き生きと描写されており、自分もその時代や空間にあたかもいるような錯覚に落ち入る。語り部としての作者の合いの手が入るのはいかにもテレビ的だが、逆に映像化を強く希望したい作品。

全388件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

1977年東京都生まれ。2008年『地図男』で、第3回ダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞しデビュー。同年『庵堂三兄弟の聖職』で第15回日本ホラー小説大賞、『東京ヴァンパイア・ファイナンス』で第15回電撃小説大賞銀賞、『RANK』で第3回ポプラ社小説大賞特別賞をそれぞれ受賞。2018年に刊行した『宝島』で第9回山田風太郎賞、第160回直木三十五賞、第5回沖縄書店大賞を受賞。著書にはほかに『畦と銃』『墓頭』『しるしなきもの』『黄昏旅団』『夜の淵をひと廻り』『われらの世紀』などがある。


「2021年 『宝島(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

真藤順丈の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
池井戸 潤
宮下奈都
小川 哲
柚月 裕子
伊坂 幸太郎
西川 美和
西 加奈子
村田 沙耶香
西 加奈子
恩田 陸
劉 慈欣
辻村 深月
森 絵都
平野 啓一郎
池井戸 潤
柚月 裕子
三浦 しをん
塩田 武士
米澤 穂信
凪良 ゆう
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×