沖縄アンダーグラウンド 売春街を生きた者たち

著者 :
  • 講談社
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065128275

作品紹介・あらすじ

「特飲街」と呼ばれた売春の街、宜野湾市・真栄原新町。沖縄の戦後史の闇を妖しい光で照らし続け、浄化運動の波に消された街を活写した渾身のルポルタージュ。

感想・レビュー・書評

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  • 「日本は沖縄を犠牲に発展してきた」
    沖縄が日本に返還されてから、あと数年で50年が経過します。
    僕が生まれる少し前にはまだアメリカに属していたという事がとても不思議です。
    関東地方で生まれ育ってきた僕から見ると、沖縄はとてもおおらかで楽しそうで羨ましいなあと単純に思っていました。青い空青い海、皆踊って歌って・・・。子供頃はそんな風に思っていたし、今でも頭の中にぼんやりそういうイメージが有ります。

    本書は沖縄が第二次世界大戦終結から、産業も無い中でどれだけ女性の稼ぐドルに依存して発展してきたのか。米軍兵からどれだけの性暴力や殺人行為を受けてきたのか。色町という場所の存在から沖縄の戦後75年を見つめる本です。
    正直興味本位にセンセーショナルな内容を想像して読み始めましたが、社会派で硬派で、且つしっかり沖縄というものと向き合った本になっております。
    沖縄の人はもしかしたらこういう本を書かれるのは嫌かもしれない。でも、日本はこういう事で沖縄に色々な事を背負わせて、自己責任の名の元に知らんぷりしようとしているのではないでしょうか。それを直視させる本だと思います。
    真栄原、吉原という2台色町を舞台にして、沖縄の裏戦後史を辿り、今この2つの町が無くなっていく姿を紙面に残しておきたいという気持ちが伝わってきます。
    しかし、この町が治安を悪くしているのも確かであり、そこで住んで生きる糧を得ている人の為にその街を残すことはノスタルジーでしか無いとも感じます。

    僕は半年ほど自転車で旅をしていたのですが、奄美大島と沖縄のご老人たちは僕にこんこんと、日本政府がいかに奄美、沖縄をないがしろにしてきたか聞かされました。
    とても辛い話で、聞かされた時には嫌で嫌で仕方が有りませんでしたが、今思えば聞かせてもらってよかったとも思います。

  • 沖縄の歴史、戦後について知りたくて読んだ本。
    私の祖母が戦後にバーを経営していた経緯もあり、特飲街のことは何となく知っていたけれどこれを読んで、私の幼少期に祖母に買ってもらったり連れて行ってもらった美味しいものもこの本にある米兵やお姉さんたちの恩恵を受けていたのかもしれないと思うと複雑な気分になります。
    今ある生活、基地問題、平和、経済を語る前にこうした事実があったことを日本人は皆知るべきだと思います。

  • 慰安婦問題が取り沙汰される中、戦争という歴史を思い出すことの多いこの季節にかなり思うところの多い一冊だった。

    様々な現地の人の声だけで書かれていて、そこに作者の感情はなく、つとめて冷静に書き切ろうという気迫を感じる大作だった。

    レイプを防ぐために募集した売春婦が暮らした一角。
    それを浄化という言葉でかき消そうとする人々。
    歴史的な誤解や偏見、差別はそんな風に消えてなくせるものなのだろうか。
    なかったことにはならない現実をその場しのぎで掻き消して
    それが正しいやり方なのだろうか。

    性風俗がセーフティーネットになっているのはわかる。
    でも、その社会の仕組みがおかしいと思える感覚は大切にしようと思った。
    そして、消すのではなく変えていくという選択を私はしたいと思った。

  • 2023.9 現実は決してきれいなことばかりではない。でも歴史と事実を知ることは人として大切ですな。

  • 沖縄の陰というか、ひっそりとした誰も語ろうとしなかった部分の話。
    表紙の写真のタウチーがマッチしている。
    生き方について、人は批判しがちだが
    生きるという事は、歴史であり
    それは修正することもできず
    ただただ知ることである。
    その時代に、そういう生き方をしないと
    生き残れなかった。
    今の時代でも、そういう生き方をせざるを得なかった。
    そういうものなのだと思う。


  • 「新町」の様々な「当事者」に取材をし,そこから「新町」の歴史と今を描き出している。これだけ多角的に描き出しているにもかかわらず,それでもまだ「全貌」は見えてこない。むしろ「全貌」などないのだと思う。

    基地という外圧によって虐げられてきた沖縄の中でさらに虐げられる存在があったこと,虐げられた中でも生きなければならなかったこと,生きるとは何かということ,様々なことへと思考が導かれていく。

    「他者」は近くて遠い。改めて自覚させられる一冊でした。

  • ‪沖縄特飲街(売春街)の盛衰を追ったルポルタージュ。背景にあるのは敗戦と貧困と基地。生きるための売春の壮絶さ、米軍の圧政や差別(性犯罪)の酷さは読んでいて辛かった。‬
    ‪「売春街は必要悪か」の問いが重い。売春街を防波堤にして米兵から一般人を守る考えは基地問題と構造は同じ。被害者にも非があるという物言いは今のMeToo運動に向けられることもある。近年急速に進んだ特飲街の「浄化」には「正義」の怖さや傲慢さも感じられる。書かれていたのは沖縄の過去に限られたことじゃなかった。‬

  • 2019年1月読了。
    沖縄の「特飲街」と呼ばれる売春地帯の歴史を追ったルポルタージュ。
    やはり沖縄は「青い海と空」、「独特の芸能や工芸等の文化」や「平和・反戦」と言った本土の人間の好む綺麗な側面だけでは全体像を捉えきることができない。
    沖縄の内部にもどうしようもないくらいの「身内以外の者に対する排他性」や、「奄美、宮古、石垣地方を下に見る本島人」といった宿痾があるし、米軍基地に対しては各人の社会的な背景に応じて異なる「基地観」があるのだろう(おそらく如何に本土の人間が「お勉強」しても、絶対に100%の相互理解には至らない)。
    特飲街の「浄化」の必要がある一方で、特飲街が存在しそこで「働く」者が何故特飲街を選んだのかに対しての根本治癒は容易に提示できないもどかしさもある。
    沖縄という地域の持つ複雑さの一端を再認識する機会になった。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/732477

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/732477

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著者プロフィール

ノンフィクション作家。「沖縄アンダーグラウンド 売春街を生きた者たち」「沖縄ひとモノガタリ」「誰も書かなかった玉城デニーの青春」など多数。

「2023年 『居場所をください 沖縄・kukuluの学校に行けない子どもたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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