夫のちんぽが入らない (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 251
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065129708

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    シュールなタイトルのわりに、内容はかなり陰険でドロっとしたものだった。。。
    読んでいて色んな意味で辛かったなぁ。
    ノンフィクションという事が、余計に辛さを増すね。

    タイトルと冒頭の1ページがこの物語の全てを語っている。
    「植物のように生きていくことを選んだ」と書いてあるが、何故そういう選択しかできなかったのか。
    色々生じる生活上のトラブルは、何一つ解決せぬまま終わりを迎える。
    様々な意見があると思うが、個人的には一切感動しなかったなぁ。
    書き方がややポップだったのが、少しだけ救いになった。

    中身がないわけではないけど、総合的には奇をてらったタイトルのみの作品でした。


    【引用】
    冒頭
    「いきなりだが、夫のちんぽが入らない。本気で言っている。」
    押し黙ったまま老いていきたい。子供もいらない。
    ちんぽが入らない私たちは、兄妹のように、あるいは植物のように、ひっそりと生きていくことを選んだ。


    p84
    夫が悲しい顔をして帰宅するたびに職場の人間を「クソどもめ」と呪った。
    夫をこれ以上かわいそうな目に遭わせるわけにはいかない。
    この人は、ちんぽの入らない人を妻にしているのだから。


    p180
    あの日も今夜も、私には悪いところなんてないと夫は言い切った。
    あなたの知らないところで私は悪いことばかりしてきたのです。
    間の抜けた事を言ってへらへら笑っているのは私のほんの一部にすぎなくて、残りは言えない事だらけです。
    私は大事な事を何も話していない。
    布団を被り、夫に気付かれないように涙を拭いた。
    せめて夫のためにも子を産みたい。そして一からやり直したいと思った。

  • 読みやすい文調だがフィクションだと思って読んでいた。とにかく文中に「ぽ」のワードがでるのだが、主人公は大真面目なのがとにかく笑いを誘う。本を読んで吹き出したのは初めてだ。しかし、裏腹に切なく、生きずらく、どうしようもない悲しさみたいな部分が自分と重なった。そして一緒に解決できた気がする。母には過去を振り返らず笑っていてもらいたいと言う一文がとても印象的。ドッグイヤーをした箇所である。そして最後、エッセイだと言うことに驚愕。

  • ある意味衝撃的な自伝小説。タイトルとは違った純粋な作品で、作者の悩みと純愛が綴られる。人を愛することとセックスが結び付くことが、人生にとってとても大切なこと。ドラマにもなった。この小説を世に出した作者の勇気を讃えたい。

  • 個人的には幸せの形を考えさせられた。
    従来の日本人の幸せモデルは、結婚して子を成して家族を築くのが一般的だ。
    しかし、その従来の幸せモデルを皆んなが追求していくべきなのか甚だ疑問に感じた。
    それぞれの幸せの形があり、従来の幸せモデルの幻影に囚われず、各自の幸せの形を探して行くことが大事だと気付かされた。

  • タイトル通りの悩みをもつ女性の「性と生」に関するお話
    ふざけたタイトルなのに、実際に読んでみると一組の夫婦の苦悩と生きづらさが描かれてあるという罠

    買ったときは「何でこんな本の帯で上野千鶴子がコメントしてんだ?」と思ってたけど
    ジェンダーのプレッシャーに傷つけられて苦悩しながらもがいている姿が描かれてあって、なるほどと納得した

    もっとまともなタイトルで、作中ももっと文学的にしたら芥川賞っぽい私小説になると思う

    でも、このままだからこそユーモアを感じる部分もあって
    拳で叩いているような比喩や太鼓みたいな表現とか
    流血するのは大仁田の方だろうとかってセリフとか
    皆の前で入らない事を暴露する妄想とか
    ジョンソンがにっこり肩を叩くのとか
    ローションを塗りたくるさまをまるで祈りのような表現をするところとか
    思わずクスリとしてしまう


    ところで、夫婦にとってそんなに子供って必要だろうか?
    どんな事情があれ、いなくてもいいという選択をした人たちの事はそっとしておいてあげればいいのにね
    そういったデリケートな部分にズカズカと親切心という善意の刃で切り込んでいく行為は極めて非道な行いなのに、今まではそれが社会的な正常という共通認識でまかり通ってた面があって
    やっとこさ諸事情というものにも諸々あるというのが広まりかけている感じかしら?

  • 入らないって、まさか……と思ったけど、そういう人もいるもんなんだな。
    お互いに性欲がないとか入らなくていいと思っての形かと思いきや、夫にはちゃんと性欲もあるのが切ない。こだまさんが夫の風俗通いを気づいてることに夫が気づかないようにこだまさんが振る舞い続けるのも…。でもこれがこのふたりの形なんだよなー。
    文庫版あとがきで、こだまさんが自分の心に対して病院通いを決めたとあって少しだけ安心した。

    • れにさん
      こだまさんってなかなかの不幸体質で内気な性格も含めて自分と似てるかも…と親近感を感じちゃいました。学級崩壊の話もなかなかシビアでしたよね。。
      こだまさんってなかなかの不幸体質で内気な性格も含めて自分と似てるかも…と親近感を感じちゃいました。学級崩壊の話もなかなかシビアでしたよね。。
      2024/01/10
    • おもちさん
      >れにさん
      なかなかに壮絶な人生ですよね…。入らないだけならまだしも幼少期の育った環境もなかなかだしご病気も…。でも文章がライト故に全然重く...
      >れにさん
      なかなかに壮絶な人生ですよね…。入らないだけならまだしも幼少期の育った環境もなかなかだしご病気も…。でも文章がライト故に全然重くないのが不思議というか。
      こだまさんの2作目も気になりました。
      2024/01/10
  • 夫と身体を交えることができない女性の、苦しさや辛さ、そしてそれを経験したからこそ得られた”美しさ”の感動物語。このストーリーがフィクションではなく私小説であることからも、よりリアリティのある物語となっている。単なる「夫(=好きな人)のちんぽが入らない」というテーマなのではなく、「”普通”とは何か?」という議論を主テーマにしたストーリーだと私は考えた。「好きな人とセックスができるのは当たり前」「結婚したら女は子作りをするのが当たり前」という、周りの”普通”に対するストレスに加え、職場の小学校での学級崩壊によって主人公のメンタルが日に日に崩壊していく様には、非常に心を痛めた。ただ、そんな状況だからこそ、夫と二人で一生暮らしていこうという決意や、夫の妻に対する心からの想いにはとても感動させられた。男女問わず幅広い人におすすめしたい、超名著。特にダイバーシティ思考の強い人には非常に刺さるであろう最高の作品。

  • わたしも、彼氏のちんぽが入らない。付き合って6年、最初の3年くらいは入ってた。それなりに楽しんでた。そのあと仕事も忙しくなって、2人の関係性も落ち着いてきて、セックスしようとしなくなった。
    旅行の時、すごく久しぶりにしようとした。新しい下着も買って、私も気合十分だった。
    でも、入らなかった。メリメリ入ってきてる気がするんだけど、彼は「先っぽしか入ってないよ」って言う。痛すぎてやめてもらった。ガッカリ。
    また別の機会に試したけど、同じことの繰り返し。痛い。
    付き合って6年のうち、半分はセックスしてて、残りの半分はセックスなし。このままで良いのか悩み中。

    解決策を求めてこの本を読んだけど、解決せず。
    悩みは深い。

  • 本屋でこのタイトルを見て「なんじゃこれ!?」って勢いで買った
    普通の主婦?の私小説。ちんぽが入らないってどういうこと?
    世間の多くの人が当たり前だと思っていても当の本人にとってはそれが常識ではないってことは少なからずあるとは思う。人からの何気ない言葉が鋭利なナイフのように自分の心に突き刺さる。他人にとっては些細なことでも、自分にとっては非常に重大なことで、自分ではどうしようもないことって誰にでもあると思う。この作者、人には言えないようなことをペンネームで誰だかわからないとはいえ、よくこういうことを赤裸々に本にできたなあ、と感心してしまう。
    そして、売れた。
    やはり、このタイトルで、どういうこと?って思いついつい私と同様買ってしまった人が多かったのかもしれないが、それだけではない。
    人と同じであることに安心し、人と違うことで一人悩む。
    私は私、他人と違って当たり前、その当たり前のことをあらためて認識させられたいい作品でした。
    小さなことでクヨクヨしないで、前を向いて生きていこう!

  • 2017年に刊行されて以降、内容がすばらしいと話題を呼び、マンガ化、ドラマ化なども決まっている。直球のタイトル通り、パートナーのちんぽが入らないという事態に直面する「私」が主人公である。セックスができない反面、精神的な結びつきを強くして結婚に至ったものの、その後の夫婦生活にもさまざまな問題が山積し、苦悩の日々は続いていく。

    【目の前にはたくさんの本が並んでいるのに、ちんぽの入らない女性へのアドバイスはどこにも見当たらなかった。おそろしいことに、すべてが「入る前提」で書かれている。女として生まれ、ベルトコンベヤーに乗せられた私は、最後の最後の検品で「不可」の箱へ弾かれたような思いがした。】

    「しない」と「できない」はきっと違う。
    セックスレスといった問題とは若干異なるのは、「できない」はある種の受難だ。主人公の「私」は不器用ながらどうにか解決を図ろうとするが、大仁田厚のように血を流しても、メロンの香りのローションを使っても、何をやってもとにかく入らない。ちんぽが。さらには、夫の不貞に対抗するように見ず知らずの人と逢瀬を重ねたりと、逃避の仕方もまた不器用である。

    学級崩壊、病気、不妊治療、夫の諸問題…人生において【偶発するちょっと嫌なこと】が集中しがちであるという「私」は、やや自虐的に、あえて感度を緩めるようにして問題と対峙しているように見える。とぼけた顔で冗談を言うように切実な問題を語り、シリアスになりすぎないよう痛みに対して鈍感になり、必死で耐えようとしている雰囲気はなんとなく現代的だ。もちろん、気付かないふりをしたところで痛みは決して和らぐことはなく、ダメージはきっちりと蓄積してゆく。「私」に降りかかるたくさんの問題は、何ひとつとしてすっきり解決するわけではない。しかし、なんらかの「決意」によって心を少しだけ解放させる描写は、希望のある落としどころになっているように思った。

    本書のラストには

    【私は目の前の人がさんざん考え、悩み抜いた末に出した決断を、そう生きようとした決意を、それは違うよなんて軽々しく言いたくはないのです。人に見せていない部分の、育ちや背景全部をひっくるめて、その人の現在があるのだから。それがわかっただけでも、私は生きてきた意味があったと思うのです。】

    とある。ちんぽが入らなくても、大丈夫だった。そう思って生きることを決意した女性の物語に、勇気づけられた心地がする。

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著者プロフィール

主婦。ブログ『塩で揉む』が人気。同人誌即売会「文学フリマ」に参加し、『なし水』に寄稿した短編を加筆修正した私小説『夫のちんぽが入らない』で2017年にデビュー。翌年には2作目となる著書『ここは、おしまいの地』を上梓した。現在、『クイック・ジャパン』『週刊SPA!』で連載中。

「2020年 『夫のちんぽが入らない(5)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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