- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065142394
作品紹介・あらすじ
コロナ禍が日本社会に与えた影響は計り知れない。特に経済では消費税増税と重なり大不況となっている。日本の支配エリートはコロナでもたない企業は潰れて良いと思っている現実。「高プロ」も愛国教育も、支配エリートの新「帝国主義」への布石だと喝破する松尾匡氏は日本のマルクス経済学者の白眉である。
松尾氏はこの悲惨な現実を読み解くにはマルクスの「疎外論」が重要だと説く。
本書では「生きているだけで価値がある」生身の具体的人間を主人公にして、制度や決まり事などの社会的なことが、その主人公からコントロールできなくなって一人歩きする事態を批判する。
ツールであったはずの制度や決まり事などの社会的なことが自己目的化し、生身の個人を手段化して踏みにじる、こうした事態を「疎外」と呼んで批判したのがマルクスの「疎外論」というわけです。
「支配階級」や「搾取」も「疎外論」から読み直すことを従来提唱してきた松尾氏は、生身の個々人のもとに経済のコントロールを取り戻すことが大切であり、社会全体で生身の個々人みんなの事情にマッチするように、社会全体の設備投資もコントロールする必要があると述べる。
まさにブレグジットの「コントロールを取り戻せ」です。
本書は、この考えのもと、レフト1・0、レフト2・0の思想を乗り越えレフト3・0の経済学の真髄を示す全く新しい社会変革の書である。
感想・レビュー・書評
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設備投資の割合が多い。既得権益、中小企業の淘汰。なかなか難しい。
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目から鱗。とてもわかりやすい。
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332.107||Ma
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左翼って言葉を身の回りで聞かなくなって久しいよね。もちろん普段自分が身を置いている環境にもよるけどさ。
今となっては右も左もなく、金儲けだけがすべての指針になっている世の中だからさ。
「人は生きているだけで価値がある」の第1章には、「そうだそうだ」と思いながら頁を繰ったけど、「反緊縮」を訴えるあたりから「そうかな?」と訝しみ、最後の再分配理論にはまったく賛成できなかった。これでは「左翼は理屈ばっかり」と揶揄されても仕方ないよ。 -
わかりやすく、つながりやすく、腑に落ちるように・・と書いてあるのはよくわかるし、そもそも「生」が大事というところからの「左翼」の立場もわかるが、資本家だとか政治家とか特権階級とかいう言葉を用いてなにかを語ろうという時点で、そんなふうに普通の人の潜在心理の中にある「僻み」を増幅させて社会を転覆させようとしているの?、と、理解を拒否する人も多いはず。資本家って一体どこにいるのでしょう。そんな名称に値する人が現在の日本人の一体何%いるというのだ、と、真面目に仕事をしている人の多くは思っているのではないのか。まさか永田町の人たちのことですか?
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この本は、予想以上に面白い本であった。
現在日本では「左翼」がネトウヨ達から「パヨク」とか散々にこき下ろされており、政党支持率や選挙結果などもボロボロになっていますが、世界的にはイギリスのブレア政権、ギリシャの急進左翼連合、スペインのポデモス、アメリカのサンダース等の左翼はそれなりに支持を集めています。
この左翼について、1970年代までのレフト⒈0、1990年代に全盛期を迎えたレフト⒉0、そして2010年代以降に生まれたレフト⒊0の3つに分けてそれぞれの時代背景とその主張内容をわかりやすく書いています。そしてこの本で特筆すべきは、筆者が明確な「反緊縮主義」の立場に立って、経済学者として日本の進むべき方向性を示していることである。
レフト⒊0は、人口成長しない成熟した資本主義国家は、資本蓄積を自己目的化する資本主義システムを生産手段の成長に依存しない再生産システムに変革しなければならないとする。そしてそれは公的な信用創造、すなわち財政の出動を通じて、雇用が減少すべき旧来の産業への投資から新しい分野への投資促進に向けるべきだとします。
そして「財政均衡自体にこだわるのは有害無益」だとして、総需要増進策を財政赤字に関わらず積極的に行うべしとする。その点はMMT論者と同じ理論のようであるが、この筆者の方がその先のあるべき姿まで論じている点で説得力がある。
現代の経済を理解するには最良の書だと思います。 -
東2法経図・6F開架:B1/2/2597/K