魔法を召し上がれ

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 149
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (546ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065156094

作品紹介・あらすじ

港町のレストランで働く青年マジシャン・ヒカル。彼には忘れられない人がいた。高校時代、突然目の前から失われた少女。ある日、彼は若きロボットを託されて――?


港町のレストラン《ハーパーズ》で働く青年マジシャン・ヒカル。客のテーブルをまわり、マジックを披露して食事を彩っている。ヒカルには、忘れられない人がいた。高校時代、突然目の前から失われた同級生の少女・美波(みなみ)だ。ある日、《ハーパーズ》にやってきた客は、目の見えない老紳士と彼の妻。ヒカルは二人に楽しんでもらえるようつとめるが、老紳士にはある秘密があった――。喪失を抱えた青年と、彼をとりまく人々の物語。

感想・レビュー・書評

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  • ロボットに本を読み聞かせるというのは色々考えさせられた。ただ長いかな

  • 喪失の痛み、過去という呪いに囚われず、居心地のよいぬるさにも溺れない。物語の持つ力に気づかせてくれる、こういう本が好き。コクトー好きな人に読んでほしい。

  • 正直物足りない。

  •  司法はわずかな田畑、あるいは雑草の生えた平地だ。建物の姿さえほとんどない。海岸沿いの堤防が目に入ってきたが、そのコンクリート壁は雨ざらしの汚れもほとんど見受けられず、ぼくは震災後の時間の流れがこれほど土地によって違うのかと改めて知った。震災から15年が経っていることを考えると、驚くほどの遠さだ。
    先生がいう通り、時間とは人間の生活の積み重なりであって、それでも草木が映える地面があれば時の流れがわかるだろうが、草木さえ居場所として選ばなかった近代の土木作業の跡地には、時間という概念さえなくなってしまうのだと思った。それはぼくが湾岸の町に暮らしていた中学や高校生のころ、ときおり思っていたことによく似ていた。(p.317)

     ぼくは10ヶ月前にジェフさんへマジックを披露したとき、レストランのスタッフに事前に願い出て、1分間だけまったく音が出ないように協力してもらったことを思い出した。あのときは魔法のかけ声ですべての音がこの世界から消え去った。いまはカードの擦れる音だけがぼくの感覚を刺激している。(p.497)

  • マジックの描写が多く、専門用語が連発されるが個人的にそこまでマジックに興味を持っていないので、いちいち用語を調べない…が、流れで読もうとしても何となく情景が曖昧になってしまい、リズムに乗るまでに時間がかかった。
    逆に、興味があったロボットとの交流については良かったけれどもっと読みたかったなあ…
    色々な要素が入った小説なので少し散漫な感じもあるけれど、主人公と相棒のロボットの繊細な造形は新鮮で、愛しさを感じた。

  • 今より少し進んだ未来で、マジシャンをする青年とアンドロイドの物語。マジック関連の話が多くて、楽しかった。最後の話はもう少しゆっくり書いて欲しかったかも。終わり方だけ今一つ。

  • 本当に残念なことだが、ちっとも面白くなかった。
    過剰に感傷的で、過剰に繊細で、そして何より、あまりに独りよがりの物語であった。
    過去の作品を思い出しても、ケンイチやミチルに纏わる作品はどれも面白くない、というのが正直な感想だ。自分のための、自己完結な物語すぎるのだと思う。
    大好きな瀬名さんの、待ち望んだ新作がこんなものだったとは。。。。
    あまりのショックで眠れそうにありません。

  •  瀬名秀明さんの新刊が出たらしいと聞き、久々に読んでみようかと思ったら、長い上に定価は税別2,700円…。ちょっと迷ったが、以前は新刊は欠かさず読んでいた作家である。少しは懐具合に貢献することにした。

     主人公はレストランで働くマジシャンのヒカル。テーブルを巡って客にマジックを披露する。そんなレストランに行ったことはないが、ロボット技術が大きく進んだこの時代設定では、ポピュラーな業態なのだろうか。

     ヒカルは高校時代に辛い過去を持っていた。その過去に関係ありそうな男が店に現れ…という第一話。何だか重そうで早くも気乗りしなくなるが、まだ先は長い。そして、ある老紳士からミチルというロボットを託される。唐突というか、勝手というか。第二部からが本番だが…。

     好意的に解釈すれば、《ル・マニフィック》の料理とサービスを体現するような作品を目指したのかなあ、とは思う。ヒカルのマジシャンとしての成長記。ロボットのミチルとの交流記、あるいはミチルの成長記。SFであり、過去に繋がるミステリーでもある。色々な読み方ができる。

     贅を尽くした作品であるのは間違いないが、盛り込みすぎてテーマがぼやけた感がある。瀬名秀明らしいといえばらしいけれども。一時期のような哲学的難解さはないが、わかりやすくもない。いや、共感しにくいと言うべきか。ミチルに共感できるヒカルは、感受性が豊かなのだ。

     色々テーマが絡み合う中で、一つ読みどころと言えるのは、マジックの描写なのだろうが、瀬名秀明の力量をもってしても、イメージが湧きにくいのが正直なところ。少なくとも、ヒカルのマジックを目の前で披露されたお客さんの感覚にはなれない。あの舞台については、大変興味があるが。

     マジックとロボットを絡める必然性も気になる。それぞれ主張が強いテーマである。一皿の上で融合しているとは言い難いかな。最後の第四話は再び重い展開になる。人間の悪意と対峙した末に、ヒカルが至った結論とは。まあ、彼が救われたと思うなら、それでいいのだろうが、じゃあ彼女の人生って…。

     マジシャンってこんな過酷な職業なのだろうか。もっと本人が楽しむものなのでは、と擦れた読者は思うのだった。もちろん、感動したという声もあるが、一見さんが手を出すには、長さと価格はネックだろう。

  • It′s so curious and difficult, but sweet. My mind was fulfilled by this robot fantasy.

  • マジックに未来のテクノロジーも加わって想像が追い付かない。そして長い…。ロボットのミチルがいい子なので、魔法を解かないのはかわいそう。

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著者プロフィール

1968年、静岡県生まれ。東北大学大学院薬学研究科(博士課程)在学中の95年『パラサイト・イヴ』で日本ホラー小説大賞を受賞し、作家デビュー。
小説の著作に、第19回日本SF大賞受賞作『BRAIN VALLEY』、『八月の博物館』『デカルトの密室』などがある。
他の著書に『大空の夢と大地の旅』、『パンデミックとたたかう』(押谷仁との共著)、『インフルエンザ21世紀』(鈴木康夫監修)など多数ある。

「2010年 『未来への周遊券』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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