しあわせなハリネズミ

  • 講談社
4.10
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  • Amazon.co.jp ・本 (130ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065168790

作品紹介・あらすじ

幼年童話からYA、一般文芸まで幅広く活躍する藤野恵美氏による、大人もこどもも楽しめる、少しビターで心温まる新作絵童話。(毎日新聞の「読んであげて」での連載を改稿)

ともだちがいないけれど ひとりでもへいきなハリネズミは、考えることが大好き。うさぎがバラの花をつけて自慢しても、きみにそんなものは似合わない、といつでも思ったとおりのことを言います。背中のはりだけでなく、言葉もちくちくしているのです。そんなハリネズミがある日、「たべられないし、やくにもたたない」どろだんごをつくっているもぐらと出会います。

小沢さかえ氏による油彩カラーとペン画の挿絵も豊富に掲載。

もくじ
さんぽ/であい/しごと/はちみつ/よあけ

ハリネズミには、ともだちがいませんでした。
 森もりをあるくときも、ひとりです。
 けれど、まったく、きにしていません。
 ひとりしずかにあるいていると、小こ
鳥とりのさえずりが、よ
くきこえます。ひとりしずかにあるいていると、はっぱの
ざわめきが、よくきこえます。だれにもじゃまされず、ひと
りしずかにあるくことが、ハリネズミはすきでした。
 森もりには、おそろしいどうぶつもいます。
 でも、だいじょうぶ。
 ハリネズミのせなかには、するどいハリがあります。
 じぶんの身は、じぶんでまもれます。だから、ハリネズミはひとりでもへいきなのです。─本文より。

感想・レビュー・書評

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  • ハリネズミには友だちがいないけれど、だれにも邪魔されずにひとりでいることが好き。

    うさぎの耳にバラの花飾りがついていたけれど、似合わないとはっきり言う。
    かわうそは、そんな言い方したらかわいそうだと言うけれど心で思ってることと違うことはいいたくないと…。
    そんなんじゃ、友だちができませんよと言うかわうそに「ほんとうのことをいえないなら、ともだちなんか、いらないね」と。
    友だちがいないとさみしいし、だれも助けてくれないと困ったことになるよと。

    もぐらにあってからハリネズミに変化が訪れる。

    うさぎやかわうそやもぐらに会った夜、眠れずにいたハリネズミは、ししゅうをする。

    そのししゅうをもぐらは、見えない目ではなく手でさわってかたちがわかることに感動し、壁に飾って大切にする。
    それから…。

    もぐらのことばからたくさんのことを知るハリネズミ。
    明日はどんな日になるのかわくわくするし。
    次の機会が楽しみだと待つこともできる。
    うれしい気持ちは悲しい気持ちを打ち消すことができる。

    自分と違う考えを持っていると言うことは、新しいことを知り楽しみを知ることにもなる。
    友だちの大切さを感じることのできる児童書だと思った。


  • ハリネズミには友達がいなかったが、それを全く気にしてはいなかった。

    そんなハリネズミにも趣味や楽しいことはあったが、決して他人に見せるものではなく、役にも立たないし、あくまで個人で楽しむものだった。

    しかし、そんな思いを抱いていたのは、ハリネズミだけではなかったことを知り、その日を境に、ハリネズミの毎日は変わっていった。

    長所も短所もあるのは、何も客観性の強さだけでは無いし、それが自分ひとりだとも限らない。
    いつかは自分と気の合う存在と、出会う日が来るのかもしれないし、来ないのかもしれない。

    結局、人生における物事の成否は全て可能性であるのかもしれず、それをプラスに捉えるか、マイナスに捉えるかは、人それぞれだし、それを幸せと思うのか、不幸せと思うのかも、人それぞれ。

    しかし本書は、それをプラスに感じられそうなストーリーであり、どちらか分からないからこそ、期待してしまうという、ポジティブな思考法を持つようになる展開には、明日への希望を感じさせられ、そこに、小沢さかえさんの可愛らしいペン画と、多国籍風の混在しながらも美しさの均衡のとれた、油彩カラーが加わって、独自の雰囲気を醸し出している。

  • とても素晴らしい一冊だった。いろんな方向に考えや思いが飛んでいき、うまくまとめられないのが悔しい。共感、あきらめ、希望、期待、孤独、自分の中にある様々な心に問いかけてくる。

    (物語)
    友達はいないけれど、一人が好きで平気なハリネズミ。思った通りのことを口にするので、相手を傷つけてしまいます。背中のハリだけでなく、言葉もチクチクしています。そんなハリネズミがモグラと出会い、変わっていきます。最後には、ハリがあることで友達を守ることができて良かったと思えるまでになります。

     ******
    ハリネズミは確かに感じが良くはない。でも、正直な気持ちを言っているだけとも言える。意地悪をしてやろうとかいう他意はない。

     思ったことが言いにくい事だから口にはしないといった経験は誰しもある。口にしない人は性格の良い人で、口にして相手を不快にさせてしまった人は性格の悪い人なのだろうか?同じことを心の内では思ったのに、相手を不愉快にさせてはいけないと本当のことは言わず、他の言葉で取り繕った人。ちょっと失礼だけれど、思ったことをそのままいう正直さを選んだ人。
    個人的には私なら後者の方が信頼できる。もちろん、言い方は工夫してオブラートに包んで欲しいけれど…。前者のような人が蔓延していて、私には恐怖しかない。敏感だから、相手のちょっとした表情で思っていることがわかり、いちいち傷つくから。前者の方ができた人、良い人とカテゴライズされがちな世の中は肌に合わない。

    ただ、この物語を読んで、友達でなくても、相手を尊重したり、話を(自分の考えをまずは混えずに)聞いたりすることは、孤独を好む者でもやった方が絶対いいなと感じた。そして、本当に素敵だと思える人に出会えたら、友達が欲しいと思った。

    もぐらとハリネズミの会話は無駄がなく、心を端的に表していて素敵だった。こんな会話ができるようになりたい。私はよく言葉が足りなかったり、言い方が悪くて誤解される。後になって、あっ、あれは良くなかったなと反省する。

     ゆっくりと(時間的に、気持ち的に)話ができないときは、余計な事は話さないほうがいいと頭ではわかっている。思っていることと、違うように受け止められてしまうから。単に相手が悪いのではなくて、自分も、相手にこう思われたらいけないとか、こんな風に思われたいとか、でもこの事は伝えたいとか、その時嫌なことがあってイライラしてそれを発散したいとか、劣等感とか…そういう思いが織り混ざって本当の心のままに言葉を発していない自分がいる。そして誤解されたまま受け止められ、悪く取られ、離れていく。相手の表情の変化を即座に見分ける私は、少しでも相手の心にこちらに対する何か悪いものを見つけると、とっさにそれを感じを近づけなくなってしまう。

     友達がいないと、確かに困った時に助けてもらえなくて途方に暮れる。自分一人でできることは限られている。ただ、友達って困った時のためにいるものではないじゃん、とも思う。人として好きだから、一緒にいて楽しいから友達でいる以外あるのだろうか?

     私はとても人付き合いが苦手だ。大抵の人とは関わるとどっと疲れるし、何回か関わっていると必ず嫌な気持ちになる。大学時代の友達の1人だけ、心から好きで一緒にいて楽しい、本当の友達だと思える人がいた。他は、たぶん本当に友達でいたいと思う人は1人もいなかった。

     一人でいるのはとても好きだ。寂しいと思うのはほんのたまにだ。たとえなんとなくの友達といても寂しさはきっと変わりはしないだろう。もちろん、助け合ったり、愚痴を言い合ったりなんかはできるだろうけれど。

     もぐらみたいに気が合いそうな相手がいればもちろん友達になりたい。そんな相手、そうそう見つからないだろうけれど…

    気になったところ
    ○もぐら「その友達はいつやってくるかわからない。いつもふらりとやってくるからね。だからこそ、明日はどんな日になるだろうと、ワクワクしながら眠りにつけるというものではないか。」
     ハリネズミはこれまでワクワクしながら眠りについたことなんてありませんでした。寝る前は、いつも嫌だったことが頭に浮かぶのです。

    カワウソ「だから言ったんですよ。友達がいないと取り残されます。みんなと仲良くしていれば、良いことを教えてもらえるのです。」

  • ハリネズミはいつもひとりで、友だちがほしいなんて思ったことがありませんでした。そんなある日、モグラと出会って、ハリネズミの気持ちに小さな変化が起こります。
    会えてうれしい、はなれるのは悲しい、だけど…そんな友だちを思う気持ちを優しく伝える物語です。

  • ハリがあることで嫌なことを言われ続けてきたハリネズミ
    嫌な気持ちになるひとと一緒にいるくらいなら一人でいたほうがいい
    そう思っていたのにモグラがあらわれてお互いの好きなものを話し、楽しい時間をすごします

    こころあたたまる、素敵なお話です

  • 思ったことを言ってしまい、友達なんていらないと思っていたハリネズミが、モグラと出会い、だんだん変わっていく。素敵な夜明け、絶対忘れないね。好きだな、この児童書。

  • 題名通り「とても幸せなハリネズミだな」と思いました。 

  • もぐらくんめっちゃポジティブ
    嫌なことがあってもこういう考え方ができる人になりたい✨

  • 人との出会いや小さなきっかけで人は変われるし、知らない感情を覚えていくものなのだと教えてくれる

    大切な人や出来事を思って寝れば暗い夜も乗り換えられること、忘れない限りずっと心の中に宝物として残っていることを大人になった今でも忘れてしまいそうになるので、定期的に読みたい

  • 最初、さんぽの章で、ウサギさんとの会話を読み、これは難しいテーマだなと思った。最後の方で、モグラさんが、会えるかもしれないし、会えないかもしれない。それはいつだつて同じこと。というシーンが印象的だった。刹那的かもしれない出会いの中で、今を大切にするメッセージがあるのかな?とかんじた。

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著者プロフィール

1978年大阪府生まれ。2004年、第2回ジュニア冒険小説大賞を受賞した『ねこまた妖怪伝』でデビュー。児童文学のほか、ミステリーや恋愛小説も執筆する。著書に、「2013年 文庫大賞」(啓文堂大賞 文庫部門)となった『ハルさん』、『初恋料理教室』『おなじ世界のどこかで』『淀川八景』『しあわせなハリネズミ』『涙をなくした君に』、『きみの傷跡』に連なる青春シリーズの『わたしの恋人』『ぼくの嘘』『ふたりの文化祭』などがある。

「2023年 『初恋写真』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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