- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065171806
作品紹介・あらすじ
人工知能(AI)が社会、とりわけ人間の労働に及ぼすインパクトについて考える際、われわれはどのような「知的道具立て」を持っているか――?
ヘーゲルやマルクス、アレントやハーバーマスの労働についての哲学は、いまこそ点検され、使われるべき時なのではないか。彼らが論じてきた、資本主義経済のもとでの「機械化」が人間の「労働」に与えるインパクトの歴史をていねいに振り返りながら、AI時代の労働の哲学を論じます。
AIのインパクトはこれまでの「機械化により人間の仕事が変化していく」という歴史の一つにすぎないのか。あるいは人類にとって、まったく新しい脅威となるのか。この古くて新しい問題を整理し、考えるための必読書です。
感想・レビュー・書評
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アダム・スミス、ヘーゲル、マルクスから労働を説き起こし、AIが労働に与える影響を考える際の観点みたいなもの論じている。
現時点のAIの開発状況から予想される範囲内では、機械が人間の労働を完全に代替することはないが、機械の所有者とそうでない者との間に所得の格差が生まれる、とのこと。
またAI技術が発展して、機械が自律的に活動できるようになった場合(だいぶ先のこと?)は、法人格のように機械にも人格を与えることになり、それは人間vs機械ではなく、人間vs人間の話になるとのこと。
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【書誌情報+内容紹介】
AI時代の労働の哲学
著者:稲葉 振一郎
発売日 2019年09月12日
価格 本体1,600円(税別)
ISBN 978-4-06-517180-6
通巻番号 711
判型 四六
ページ数 224ページ
シリーズ 講談社選書メチエ
“この本は〔……〕人工知能技術の雇用・労働条件・生活に対するインパクトについて考察してみよう、というものではありません。むしろそこから一歩引いて、「我々は人工知能技術の発展が社会に、とりわけ労働に及ぼすインパクトについて考える際に、どのような知的道具立てを既に持っているのか?」を点検してみる、というところに、本書の眼目があります。”――「はじめに」より
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AI(人工知能)が人間の仕事を奪う――これは「古くて新しい問題」です。馬車は自動車になり、工場はオートメーション化される。技術(テクノロジー)は、いつの時代も仕事を変えるのです。
では、AIのインパクトは、これまでの機械化と同じなのか、決定的に違うものなのか。「労働」概念自体から振り返り、資本主義そのものへの影響まで射程に入れて検討します。
〈http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000324960〉
【目次】
はじめに
1 近代の労働観
労働とは何か
アダム・スミス
G・W・F・ヘーゲル
カール・マルクス(1) 疎外された労働
ジョン・ロック
カール・マルクス(2) 生産/コミュニケーション
カール・マルクス(3) 疎外の複層性
2 労働と雇用
雇用・請負・委任(1)
雇用の二極
資本主義と雇用
雇用・請負・委任(2)
リスクと労働
資本家の労働
労働と財産
産業社会論(1)
産業社会論(2)
3 機械、AIと雇用
AI化の前に
AIブーム概説
AIと生産現場の変化
経済学と機械――古くて新しい問題
労働市場の不完全性
物的資本と人的資本
コンピューター
技術変化・機械化の経済学
機械化・AI化と雇用
技能偏向型技術変化
4 機械、AIと疎外
疎外再び
資本主義と官僚制
物神性
物象化はそう悪くもない?
人工知能はどこまで新しいか
人工知能の「人間」化?
5 では何が問題なのか?
「人/物」二分法の解体
徳と身分
人と動物、動物としての人
AIと身分制
Internet of Things
第二の自然
人と動物の間、そしてAI
エピローグ AIと資本主義
AIと「資本主義と社会主義」
そもそも「資本主義」とは何か? を少し論じてみる
グローバリゼーションと情報通信革命
AIと資本
注
あとがき -
「AIが…」と特殊に語られるけれども、基本を眺めなければ煽られるだけで理解ができないもの。AIに興奮したい人向けではないけれど、僕には必要な理解になった。
ただどううなのだろう。経済や社会、労働などのほかに、文化やそれを捉える人々のスロー回路の変化など。(風土性があるとは思う)
僕の興味の軸はおそらくこちらになるのだろうなと思った。しかし社会の本流は経済的なことなのだろうから、一度ゆっくりと読んでみたのはよかった。 -
人工知能の発達によって人間の仕事がうばわれるのではないかという問いかけがなされる現在において、あらためて労働をめぐる経済学や社会哲学における議論の蓄積のなかから、この問題について考えるための手がかりをとりあげなおし、人工知能がわれわれにもたらすインパクトの本質について考察をおこなっている本です。
著者は、ロックやスミス、ヘーゲル、マルクスなどの思想を渉猟し、資本主義における労働や疎外について彼らがいったいどのような思索を展開してきたのかということをたどっていきます。そうした枠組みを踏まえたとき、人工知能が人間の仕事をうばうという問題は、それが管理業務のようなものにまでおよぶことになるかもしれないとはいえ、従来の社会哲学において議論の対象となってきた枠組みのなかに収まるのではないかという見通しが示されます。
他方で、人工知能が道具以上の存在になって、人間の「内面」や「意識」にあたるものをそなえるようになったとすれば、現実には人びとに大きな葛藤をもたらすことになるとはいえ、それは人工知能を人間社会のメンバーに迎え入れることに対する抵抗感にもとづくものであり、本質的にあたらしい問題が生じるわけではないとされています。そのうえで、むしろ人間の「心」をもたないような人工知能にわれわれがかかわっていく場面において、人と物の二分法という枠組みそのものが問いなおされるという新たな問題が生じるのではないかという展望が示され、倫理学的な問題にまで踏み込んで考察がなされています。
人工知能についての問いを切り口にした、労働の思想史という印象です。 -
近代労働観:アダムスミス・ヘーゲル・マルクス・ジョンロック 労働と雇用:雇用/請負/委任・労働の二極・資本主義と雇用・労働と財産・産業社会論 機械、AIと雇用:AIと生産現場変化・経済学と機械・労働市場の不完全性・物的資本と人的資本・技術変化/機械化の経済学・機械化/AI化と雇用・技能偏向型技術変化 機械、AIと疎外:資本主義と官僚制・物神性・人工知能の人間化 では何が問題か:人/物2分法の解体・徳と身分・人と動物/動物としての人・AIと身分制・第二自然 AIと資本主義:グローバリゼーションと情報通信革命
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テーマは良いが、いつまで経ってもタイトルの本題に入っていかず、とにかく回りくどい。途中から何の本だかわからなくなってきます(2/3まで経済学史のおさらいが延々と続いて辟易してくる)。
タイトルにあるAIはあくまで現代という時代を示すための代表的なワードとして使っている程度に捉えてください。人工知能、機械学習の観点からの考察は殆どありません。また、労働の哲学という部分についても、本題となりうるこのテーマの周辺をぐるぐる回るだけで、いかにも消化不良感が残ります。
いかにも多くの方にヒットしそうなワードを組み合わせて作ったタイトルのうまさに、読後モヤッとしたものがひどく残る書籍でした。 -
昨年のコロナ禍の下で、取り組もうと思った「働くこと」についての本の読みつなぎ、こんな難しい本にまで届いてしまっています。題名に「AI時代〜」とは付いていますが、2014年のマイケル・A・オズボーン准教授らの論文『雇用の未来ーコンピューター化によって仕事は失われるのか』的な職業の浮き沈みの話ではなくて、そもそも「労働とはなにか?」という基礎の確認を行う、とても教科書として有効な本です。なので、アダム・スミス、ヘーゲル、ロック、マルクスまで遡っています。そこで、明らかにされるのは資本主義における「生産要素市場」の意味みたいなことになって、大きくピケティの『21世紀の資本』や斎藤幸平『人新世の「資本論」』という最近の読書も横糸として編み合わされてきます。一回読んで、理解出来ていないところ、多々ですが、自分が今、もやもや感じていることのアウトラインはこの薄い本に示されているような気がしています。もう一回。
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SDGs|目標9 産業と技術革新の基盤をつくろう|
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/752405 -
スミス、ヘーゲル、マルクスの理論を辿る本。
AI よりも、経済思想に興味がある人向け -
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