国運の分岐点 中小企業改革で再び輝くか、中国の属国になるか (講談社+α新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065175606

感想・レビュー・書評

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  • 本書の前著に当たる『日本人の勝算』は素晴らしい本で、私は昨年の私的ベストテンにも選んだほど。

    本書はその8ヶ月後に刊行されたもので、悪い本ではないのだが、私には読む意味があまりなかった。

    というのも、『日本人の勝算』とほとんど重なっている内容だから。
    もちろん細部は違うが、著者の主張の骨子は丸っきり同じなのである。

    同じ著者が同じテーマで書いているのだから、ある程度の重複は致し方ないが、これはちょっと……。
    『日本人の勝算』と本書の担当編集者は、それぞれ頭を抱えたのではないか。「うわ~、内容思いっきりかぶってるやん」と。

    というわけで、どちらか一冊を読めば事足りる。
    私は『日本人の勝算』のほうを推す。

  • 日本の生産性(賃金)が上がらないのは中小企業が多すぎるからだとして、その歴史的背景から現在の制度そして今後の展望を語ります。零細企業経営者としては経営者の連帯保証人制度など言いたいことも多少ありますが、概ね同意せざるを得ない耳の痛いお話です。ある意味、中小企業経営者のエゴが浮き彫りにされているようで、とても考えさせられました。

  • 日本人ならば必読。
    日本経済をここまで踏み込んで分析した、納得できる本は初めて。
    すべてが具体的。

    労働者の人口比率が減っているので、GDPが下がるのは当たり前。同じ水準のGDPを維持したければ賃金を上げて消費を促すしかない。賃金を上げることができるためには、会社の規模を大きくして日本国内だけではなく海外にも展開する必要があり、賃上げに対応できない企業は統廃合されるべき。統廃合によって、過剰な値下げ競争を回避させる。
    中小企業を手厚く保護しすぎで、経営者はそれに甘えている。失われた20~30年間で、超金融緩和をし続けても賃上げには至らなかったため、国策として賃上げをするしかない。
    日本という国は災害大国なので、本来ならば災害対策用に財政を健全に保つ必要がある国であり、他国の不本意な侵入を防ぐためには弱みを財政を健全にして弱みを持つべきではない。

    すべてに納得。

  • 私も中小企業の一員でありるが、これにて一皮剥けた。まさしく低賃金雇用が正だと思っていたが間違いと気づきました。また、今行なっているmaの規模拡大&業種拡張も間違いないと感じた。 5年後には結果をだしたい。素晴らしい。

  • 常々感じていた「中小企業への事業承継支援は必要なのだろうか?」という疑問に、ハッキリとノーの答えをくれた一冊。
    人口増加時代に、雇用の受け皿として中小企業数の増加施策を始めたのだから、人口減少時代になればその施策を打ち切るべきとの意見は腹落ちした。
    これから先、同じような仕事をしている企業を統廃合させることを第一に、第二に創業支援をするのが適切な中小企業施策なのではないか?
    承継や再生支援は、本当に必要な一部の企業以外に施す必要はない気がする。

    中小企業を減らすために賃金を上げる…のくだりは、なんとも言えないところ。
    とはいえ、考え方を変えるきっかけに、何かしらのアクションを起こすことは必要だろう。

    とにかく面白い本だった。

  • 最初は一方的で極論なのかと思い読み進めましたが、終始論理的で納得感のある内容でした。歯に衣着せぬ感じで既得権益を守ろうとしている方々を攻めてるのも面白かった。不動産業に携わっているので、仕事を通して低賃金だけでなく、法律で必要以上に守られた低賃料の恩恵受けている生産性の低い企業も散見され、この本の内容にも共感できた。低金利でもあるし、少しこの国は新陳代謝が少なすぎるのは実感してます。伸ばせるのに利益や成長を抑えようとする企業も本当に多い。そういう意図的に楽する企業のために国全体を低成長にするのは理に適っていないと思う。もっと頑張ってる企業が報われる国になってほしいな。

  • 自分が持っている中小企業診断士の資格が、どうしてできたのか、恥ずかしながら初めてこの本で知りました。
    要は、戦後の成長期「前」において、外国の脅威がいまよりももっときつかった時代に、国の零細企業を守るため、S38年に中小企業基本法が成立したとの由。
    それが日本の足かせになってる部分があり(中小企業のままでいれば補助金制度が手厚いなど)、だからいま騒いでいる生産性の向上・働き方改革とか言う前に、中小企業→大企業への成長ができるような環境を整えるべき、というのが筆者の主張。
    ただ一点惜しむらくは、生産性向上をなぜ目指さなければならないのか、この本はそういうことを教える趣旨ではないものの、ちょっと残念かな。
    これは働き方改革の文脈でもあまり「なぜ」というところに力点を置いていないような・・・。

  • 元ゴールドマン・サックスのトップアナリスト。
    …にしては非常に読みやすく、きちんと一般向けに書けている。この視点が徹底的に欠けているどころか、一般人をケムに巻いて歪んだ優越感にひたるような向きも少なくないだけに、ここは高く評価したい。
    諸悪の根源は日本の中小企業だと断じつつ、そうさせているのは企業を成長させず、業務を効率化させないことにインセンティヴを与える法や社会なのだと、各方面に痛々しいほど配慮を重ねている。それでも「反日ダー!」などと言われてしまうのだから、著者は本当に気の毒であるとともに、日本人の一人として謝罪したい。
    (となるのが普通の人間の心性である。凄惨な女性差別や性犯罪の被害者に、ふたことめには「なろーるめん!!! ダンシェイシャベチュー!!!」などとわめきたてるクズどもは、本気で血の色と頭の程度を疑う)

    2019/10/6読了

  • デービッド・アトキンソンさんの新作。

    前作の「日本人の勝算」の未来のある提言に比べて、かなり危機感を煽る側面が強い作品。
    しかし、それも読めば納得できる。

    地震に関しては、あまり普段の生活で意識してなかった。
    昔は「関東はいつか必ず大地震が来る」と言われたものだけど、別エリアの関西や東日本に大地震が起こり、何となく関東に住んでる人は今の生活が永続すると勘違いしている節がある。

    自分は東日本大震災のときは関西に住んでて、今は関東に住んでいるが、最近は周期的な地震がなくなってきた。なので、あまり危機感を感じていなかった。

    けど、この本読んで、その考えがいかに甘いか、改めて感じた。

    自然災害に関しては年々酷くなってる。
    今後良くなることはないだろう。さらに大地震が襲ったら・・・・。
    この本の最悪のシナリオは、かなり現実になるだろう。というか、場所によってはもう進んでるわけだし。

    また、経済学者たちは、日本は永遠に借金しても問題ない、実質借金はゼロだ、国の借金を一般人の家計と一緒にするのは愚かだ、などと言う。
    たしかに国の収益を家計と一緒にする必要はないし、国や企業として借金ゼロが素晴らしいわけではない。投資のための借金はむしろ積極的に行うべきだ。しかし、今日本が行なっている借金は将来の投資のための借金なのか?

    老人世代を支えるため、その票田を失わないため、つまり政治家のため、つまり若い世代のことなんか考えていないのではないか?だって、若い世代は選挙に行かないから。これを将来への投資と言えるのか?

    楽観的なシナリオは、日本に災害がなく今後も人口が変わらないか増え続ける前提での話でしかない。経済学者の楽観論は単にアメリカが今後も人口が増えるからだ。どこの国の話をしてるのやら。。

    どちらの前提も意味がない。
    だって、日本はこれから人口が減っていくし自然災害も多いのだから。

    本当に一刻の猶予もない。本当の本当に。

    この本のメインテーマである「人口減少」は待ったなしで進む。人口動態ほどわかりやすい分析はない。ほぼ予測通りに進むので。現実を見ない振りをしようがしまいが、予測通りに生産労働人口は減り続ける。
    なのに、現時点で何の手も打てていない。

    基本的には「中小企業神話」をさっさと捨てて、最低賃金をあげることで経営者にプレッシャーをかけよう、という提言の本で、趣旨それ自体は前作同様に明快なのだが、何というか、それ以上に日本人のどうしようも無さを感じてしまった。。。
    こんな状態なのに、過去の栄光が捨てられないからか、何も変えようとしない。。。直近で関西電力幹部への笑うしかない資金(裏金)供与のニュースを見た影響かもしれんが。。

    本気で思うけど、デービッド・アトキンソンさんが日本に居て、日本語を話せて、日本に思い入れを持ってくれて、こういう本を出してくれる幸運を、日本人はもっと喜ぶべきだ。
    少なくとも、今の段階で切迫感を持つことができる。

    個人的な実感としても、来年2020年のオリンピック後(・・むしろその前から)の日本経済は確実に停滞するだろう。消費税を上げたことでさらに確定となった。

    この本で書かれている提言を実現できなければ、日本は間違いなくこのまま沈んでいく。

    中小企業の社長の利権を守って一緒に沈んでいくか、今すぐ手を打つか、日本人が主体的に決断すべきだ。本でも書いてくれてる通り、まだ人的リソースはあるのだから。

  • 日本経済再生のためには中小企業を集約して生産性改善すべし。という論陣なのだが、総論賛成、各論説明不足。といった感じ。

    肝心なところで1+1=2みたいな話で逃げたり、英統計で実証されている。とだけ言ったり、私は因果関係と相関関係を間違えることは無い。と啖呵を切ったりしているけれど、そこから一歩踏み込んだところに論点・論拠があるんじゃないかと言いたい。また、局所局所のことだけ見て上記のような薄い議論で逃げるから、全体で見ると矛盾しているようにとれる記述だらけ。一例だけ挙げると日本の高度成長は単に人口増の効果だ。と言っているけれど、そうであれば筆者の説く中小企業再編による合理化も、人口減時代には全く意味がないよね。まあ、これは揚げ足取りに近いけれど、筆者が嫌う反対派と同じレベルで針小棒大、極端な単純化理論がちりばめられていると思う。

    結局のところ、膨張し続けることを是とする資本主義経済に属する以上、規模(人口)増加の効果がなくなる日本では、単価(賃金∝物価)を上げることでGDPを上げるしかない。賃上げは中小企業の再編を促し、企業体力が上がることで効率改善のための投資が増え、ますます正の効果をもたらす。また物価上昇は実質的な社会保障費(年金)の抑制につながる。と言っているだけだと思う。明確には述べられていないけど。本当はこうやって議論を整理して、では、実際に改善策を社会に実装するには1+1=2とならない/できない/しないことへの対策として○○をやっていくべき。とまとめてほしかった。

    それにしても結局わからないのが日本の生産性問題。"生産性"と一言で言われているけれど、①国民一人当たりのGDP と、②労働者一人当たりのGDP がごちゃ混ぜで語られるからわかりにくいのかな。という気がするが、②で考えた時に日本人の給与は大企業でも外国企業に劣るのに、なぜ国際競争に苦戦するんだろうと。別に外国人と仕事しても彼らが日本人よりはるかに優秀だとは全く思えないし、企業規模がそれほど大きくない企業でも給与水準は日本より高い。そんな現状で筆者の言う中小企業の統合をやってもどれほどの効果があるのかと思ってしまうが。なんかそうやってもやもやしていると、サービス業の企業体格と生産性の関係云々も筆者もおられた大規模コンサルと、街の食堂を比べて言ってるんじゃないかとすら思えてしまう。そういうデータの細かいところからきちんと示して、さらに詳細で建設的な議論を望みたい。

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著者プロフィール

デービッド・アトキンソン
小西美術工藝社社長
1965年イギリス生まれ。日本在住33年。オックスフォード大学「日本学」専攻。裏千家茶名「宗真」拝受。
1992年ゴールドマン・サックス入社。金融調査室長として日本の不良債権の実態を暴くレポートを発表し、注目を集める。2006年に共同出資者となるが、マネーゲームを達観するに至り2007年に退社。2009年創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社に入社、2011年同社会長兼社長に就任。2017年から日本政府観光局特別顧問、2020年から政府の「成長戦略会議」委員などを歴任。
『日本人の勝算』『デービッド・アトキンソン 新・観光立国論』(山本七平賞、不動産協会賞受賞)『新・生産性立国論』(いずれも東洋経済新報社)など著書多数。2016年に『財界』「経営者賞」、2017年に「日英協会賞」受賞。

「2023年 『給料の上げ方 日本人みんなで豊かになる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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