凜 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 63
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065180990

作品紹介・あらすじ

上原沙矢は、一人特急オホーツクにのり網走を目指していた。遠距離恋愛中の恋人が隣にいるはずだったが、急な仕事で来れなくなってしまったのだ。沙矢は途中にある金華駅で「常紋トンネル殉難者追悼碑」を、そして網走で出会ったある本により、北の大地にいきた女と男の人生を知ることになる。
大正三年。八重子は一人息子の太郎を知人にあずけ、遊郭「宝春楼」で働くために東京から網走へ向かっていた。本州と北海道を繋ぐ青函船の中で、一人の青年と出会う。この青年とはのちにも巡り会うが、そんなこととはお互い想像もせず、それぞれの行き先へ散っていく。
初見世も終わったある日、知人からの手紙を同じ遊郭の百代に読んでもらった八重子は、太郎が死んだことを知る。この日から八重子は変わる、何が何でもトップにたつのだと――。
青函船で八重子と出会った白尾麟太郎は、どういう運命の巡り合わせか、タコ部屋で働くことになる。それまでの裕福で満ち足りた生活とは一変し、生きのびることで精一杯だった。
八重子と麟太郎は過酷な運命にさらされながらも、己の生きる意味を見いだしていく。
そんな彼らの生き様を知った沙矢も、自分の生き方に一筋の光を見いだすのだった。

感想・レビュー・書評

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  • 蛭田亜紗子『凜』講談社文庫。

    何となく『凛』というタイトルに惹かれて購入。最初は裏表紙に紹介されている内容と少し違うかなと思ったのだが、こういう構成なのかと納得。

    上原沙矢の生きる平成から昭和、そして八重子の生きる大正と少しずつ遡り、北の大地で激動の時代を駆け抜けた逞しい女性の物語が描かれる。

    八重子の壮絶な物語には、それなりに興味を覚えたのだが、平成時代の上原沙矢の物語は必要だったろうか。上原沙矢の物語があることで作品としての起承転結が曖昧になっているように感じた。また、八重子の時代に描かれる麟太郎の物語も読み終えると蛇足のように思えてしまう。

    就職活動と卒業論文作成を控える大学生の上原沙矢は特急オホーツクに乗り、網走を目指していた。沙矢は途中にある金華駅で『常紋トンネル殉難者追悼碑』を目にしたことから、網走で見付けたある本により、北の大地に生きた女の人生を知ることになる。

    大正三年、八重子は一人息子の太郎を知人にあずけ、網走の遊郭『宝春楼』で働くために東京から網走へ向かう。遊郭の初見世が終わったある日、知人からの手紙で息子の太郎が死んだことを知った八重子は何が何でもトップに立つことを決意する……

    本体価格820円
    ★★★★

  • とても深いストーリー。
    故人の方々の努力もだけど、報われなかった感情や法律等々に縛られた経緯からの脱却?
    GHQのお陰で?
    今の日本は、割と平和に秩序を守って生活が成り立っている。
    映画にも出来そうだけど、とてつもなくお金が掛かるでしょう…ね。
    文庫本での購入だけど、金額以上の中身だった。
    久々の満足感。
    ‘20.06.05読書完了

  • 2020年、6冊目は、中一冊で蛭田亜紗子。

    就活中の上原沙矢は、束の間の二人旅のために、恋人、宮澤拓真の住む北海道へ旅立つ。しかし、仕事に忙殺される拓真。結局沙矢は、石北本線で単身網走を目指す。途中、廃止が決まった金華駅で下車する沙矢。そこで常紋トンネルの歴史と、かつて網走にあった遊郭に興味を持つ。

    コレまで読んできた蛭田亜紗子作品とは、テーマも、文体も、重みが違う。

    メインパートは、大正期の娼妓、胡蝶(八重子)と、帝大生でありながら、タコ部屋で土工夫として働くことになってしまった、鱗太郎の話。

    個人的に、胡蝶はじめ、網走の遊郭、「宝春桜」のパートが特に好き。流され生きてきたが、息子の死をきっかけに変わる胡蝶。宝春桜のお職(今で言う、お店№①)の百代。胡蝶の後輩娼妓、薄雲。古株の松風。等、それぞれのキャラ立ち、エピソードはかなりグッと来た。

    逆に、鱗太郎のタコ部屋パートは、個人的にあまりのめり込めずだったし、現代の沙矢のパートがどうしても弱い印象は拭えない。

    これまで読んだ、蛭田亜紗子作品『エンディングドレス』が一番好きだったが、わずか2ヶ月で首位交代。「宝春桜」のパートだけでも、★★★★☆評価決まり。

  • 開拓期の北海道。過酷な場所で生き抜こうとする者たちがいた。生きる意味を問う傑作!

  • ■土工夫と女郎、2人の目を通した苦難の北海道開拓歴史小説。
    ■エロとグロの表現がどぎつい。だが、それくらい著者は資料を読み込んで自分のものにしたのだろう。
    ■平成時代と大正時代、土工夫と女郎、その対比と時代・人物の交錯は面白い。
    ■電車の中で一気に読んだ。読後感...さわやかでない。

  • タコ部屋と遊郭、
    人身売買の理不尽さについて書かれていた。

    状況の描写が、暴力的だったり卑猥すぎたり
    漫画みたいな小説だと思いながら読んだ。

    最後の参考文献を見ていると
    中川イセ という名前をみつけ
    調べてみると主人公八重子のモデルのようだった。

    遊郭をでたあと、
    網走で女性初の市議会議員になり、
    人権擁護や網走の発展に貢献した
    実在の人物がいた。

    事実と知ってびっくりした。




  • 八重子の逞しい生き方に感動した。
    面白くて一気に読んでしまった。

  • 日々の発言に信頼のおけるフォロワーさんが絶賛していたのと、舞台が北海道だったこともあり、手に取ってみました。

    遊郭、タコ部屋…タコ部屋はなんとなくあったんだろうなぁと想像ついてたけど、遊郭は最近まで北海道にもあったことを、歴史としても知らずにいて、これを機に調べてみたら、実は実家の通りにもあったことがわかって激しく驚き。

    半分都市伝説みたいに、地元にもある「人柱」の件も、これを読むと現実味が増し。

    激動の時代を生きた男たち女たちと、今を生きる男たち女たちが交差することで、いつの時代も生きるのは大変で、だからこそ生きなければ…みたいな、落としどころとしてはきれいにまとまっていて、かつ、描写はとても激しく、作者の作品は初めて読んだけど、同じ北海道出身の方で、もっと読んでみたいと思った。

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著者プロフィール

1979年北海道札幌市生まれ、在住。2008年第7回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞し、2010年『自縄自縛の私』(新潮社)を刊行しデビュー。そのほかの著書に、『凜』(講談社)『エンディングドレス』(ポプラ社)『共謀小説家』(双葉社)などがある。

「2023年 『窮屈で自由な私の容れもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

蛭田亜紗子の作品

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