大雪物語 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065181010

作品紹介・あらすじ

ある冬、N県K町が観測史上初の99センチという豪雪に見舞われる。町民をはじめ観光客、仕事のため車でK町に訪れた人々は、駅や車中など長時間足止めを余儀なくされた。町、県、国レベルの除雪作業も追いつかず、町の深刻な状況から災害救助法が適用され、自衛隊の派遣も要請される。そんな非日常のさなか、紡がれる6つのストーリー。、避難所を設ける花屋、車に閉じ込められた人たちの救済支援にあたる自衛隊員、独居老人を救った青年の過去など、雪は冷たいからこそ、より一層心の温もりを感じられる短編作品集。

感想・レビュー・書評

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  • 藤田宜永『大雪物語』講談社文庫。

    記録的な豪雪に見舞われた長野県のK町を舞台に繰り広げられる様々な人間模様を描いた同時進行短編集。『転落』『墓掘り』『雪男』『雪の華』『わだかまり』『雨だれのプレリュード』の6編を収録。

    事情を抱えた人びとが豪雪という非日常的な状況下で体験する奇跡のような時間……なかなか読ませてくれる。

    派遣切りで行き場を失った挙げ句ひったくり強盗を犯し、K町に逃げ込んだ若者、遺族と共に遺体をK町に運ぶ途中に豪雪に見舞われた男、豪雪でバイバスで身動きが取れなくなった人びとに店を開放した花屋の店主、豪雪対応でK町に派遣される自衛官……

    本体価格660円
    ★★★★★

  • 今年の冬は大雪のニュースをよく耳にするので、本作を読んだ。

    藤田宣永さんというと、冒険小説の大家のイメージが強いが本作はその流れでなく、大雪で町に閉じこめられる特殊な状況の中でのちょっとした人間ドラマを描いたもの。

    6篇からなる短編集だが、作者はミステリーも書いているので、最後に仕掛があるかと思いながら読み進めた。大雪とk町が舞台という他は共通点もなく普通の短編集であったのには肩透かしを喰らった。もっとも勝手に期待してた自分が悪いのだが・・

    好みは「雪男」。主人公の男性は中々素敵なおじさんだと思います。

  • 避暑地K町の大雪が見舞われた時の人々の物語。巻末の解説が分かりやすい。短編それぞれに繋がりがある箇所もあり面白い。実際にあった話のようでもある。第一話の『転落』ではちょっと嫌な気持ちになったけれど老婆の優しさが伝わってホッとした。その他の話もしみじみといい話だった。

  • いつも、藤田宜永氏の文は、昭和の香りがするような感じであるのだが、・・・・
    今回は、雪に覆われて、身動きの取れなくなったk町を基点として、6話が、書かれている。

    昔、私は、志賀高原ヘスキーヘ行った時、暖冬で、ブッシュ状態。
    雪がほとんどなくて、スキーは無理か!と、宿に戻ったら、宿屋の人から、雪国では、一晩で、1㍍も積もることがあり、この宿の部屋の窓も開けられない位に積もるのです!と、嘘のように、聞いていたら、本当に、一晩 夜 音もなくシンシンと降り続けて、雪が積もったのだった。
    だから、この状況もよくわかる。

    第一話「転落」派遣切りに遭い、そして、家には、自分の居場所も無い良太は、お金もなく、原付バイクを盗んで、ひったくりで、現金を得て、逃げだし、k町の別荘へ・・・
    一つ、どこかで、歯車が、狂って、ひったくりで、おばあさんが、転び怪我をする。
    普通に、仕事があったら、こんなことをすることも無かっただろうけど・・・・と、思いながら、今のコロナで、どこも、不景気風が吹いている。

    「墓堀り」は、母の遺体を搬送してもらう途中で、豪雪に見舞われる。
    確執があり、母の遺体を連れて帰る娘、そして、搬送の運転手は、不慮の事故で、家族を亡くしている。
    豪雪の中、墓場の雪かきを・・・
    わだかまりも、溶けて流れてくれるだろうか?

    「雪男」 17歳の少女は、犬を探しに、大雪の中、好きな少年の家まで、行こうとするのだが、・・・遭難の様な感じになってしまい、其処で、雪男か?と、思われたような男性に遭い、助けてもらう。
    犬も見つかり、無事に自分の家に戻ることになるのだが・・・・
    好きな少年が、会わなくなった理由もわからないまま、
    真っ白な中、時は過ぎていく。
    助けてくれた男性も、恋の別れをして来たのだと・・・・後でわかる。

    「雪の華」k町に花屋を開店。
    幸せの中、この豪雪で困った人を、店に誘う。
    しかし、昔好きだったのに別れた女と会うのだが、・・・・妻に付く嘘も、こんな嘘なら、いいのでは・・・

    「わだかまり」自衛隊員の青年が、幼き日、姉の誕生日にストラップを渡した翌日から、姿を消したのだが、その姉を見てしまう。
    家に居場所のなかった姉。
    そして、妻の不倫をして姉が、誕生したと誤解していた父の姉に対する冷遇。
    姉を荒れた生活へと引き込んだわだかまりが、弟の青年の願いで、母親へ連絡してくれる。

    「雨だれのプレリュード」
    ピアニストと画家の夫婦。
    共に、自分達の仕事を仲良く話しが、出来ていたのに、夫のピアニストの仕事が、増えるにしたがって、家庭は、話すこともしなくなって来て、妻は、離婚をと、、、、希望する。
    夫の不倫も原因であったのだが、・・・・
    雪でコンサートも中止になったのだが、妻の好きな音楽を聞かせたく、ホールで、演奏をする。
    その時 拍手してくれたのは・・・・
    いい終わり方である。

    どんなに大雪が、降って、回りが、一面何もない位真っ白に覆われても、自然と、雪が解けて元に戻ってくれたら、、、、と、思う。

    短篇であり、すいすいと読める本であった。

  • 記録的な積雪による予期せぬ出会いや別れなど珠玉の六つの物語。吉川英治文学賞受賞作。

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著者プロフィール

1950年福井県生まれ。早稲田大学文学部中退。パリ滞在中エール・フランスに勤務。76年『野望のラビリンス』で小説デビュー。95年『鋼鉄の騎士』で第48回日本推理作家協会賞長編部門、第13回日本冒険小説協会大賞特別賞をダブル受賞。その後恋愛小説へも作品の幅を拡げ、99年『求愛』で第6回島清恋愛文学賞、2001年『愛の領分』で第125回直木賞受賞。17年には『大雪物語』で第51回吉川英治文学賞を受賞した。その他『タフガイ』『わかって下さい』『彼女の恐喝』など著書多数。2020年逝去。

「2021年 『ブルーブラッド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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