近いはずの人 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065181058

作品紹介・あらすじ

同い年の妻が事故で死んだ。それから3ヵ月、心が動かない。北野は亡き妻の鍵のかかった携帯電話に、4ケタの数字を順番に打ち込むだけの毎日を過ごしていた。ついにロックの解けた携帯には、妻の秘密が残されていた。4年間を一緒に過ごした女性のことを、僕は何も知らなかったのかもしれない――北野俊英、33歳。喪ってから始まる、妻の姿を追いかける旅。


同い年の妻が事故で死んだ。それから3ヵ月、心が動かない。

北野は亡き妻の鍵のかかった携帯電話に、4ケタの数字を順番に打ち込むだけの毎日を過ごしていた。
ついにロックの解けた携帯には、妻の秘密が残されていた。
4年間を一緒に過ごした女性のことを、僕は何も知らなかったのかもしれない――

北野俊英、33歳。喪ってから始まる、妻の姿を追いかける旅。

感想・レビュー・書評

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  • 作者名で読んでいるが、今回の作品は主人公側に多分に問題が多く、内容も暗く辛い場面が続くが、淡々として書かれているので何とか読み終えられた。
    結婚して4年目なのに奥さんが交通事故で亡くなってしまう。毎晩、ビールを飲みながら残された携帯のパスワードを打つ毎日。どんどん酒量が増え、止瀉剤も飲むほどで仕事にも影響が出始める。
    解除された奥さんの携帯に残された不倫の形跡。
    奥さんの秘密が次々と明かされて行くが、その原因の一つに主人公の問題も。主人公の高校時代の恋愛観、奥さんが流産してから関係など。
    重い、重すぎる。多少の未来への明るさが仄みえて、何とか締めて貰った。

  • 自分は誰に一番感覚が似ているかな?と思いながら読み進めていった。妻を亡くした夫の行動は想定内。(真実はわからないけれど)不実をなじることも、弁解の言葉を聞くことも出来ない事は辛すぎるな。
    弟と妻との写真を見て(弟の事はわかるから…)と言う安心感は何だか理解できて不思議。《夫婦は他人》と言うけれど、お互い解った気にならず夫婦は思いを言葉で伝え合わなければならない時もあると言うことかも。ただ冷たい言い方だけれど不倫関係では無かったとしても(相談女)にしか見えない奥様でした。
    そして栄人さんの様に女性に優しい男性は、時には罪作り。

  • 結婚4年で妻を亡くしてからの一年。
    配偶者という一番身近にいる人のことを、自分がどれだけ知っているのか分かっているのか、考えさせられた。信じるのがちょっと怖くもなった。
    最後は前を向いた終わり方でよかった。

  • 妻を突然事故という形で失ってしまった男性の毎日が淡々と綴られてる。
    実感がわかず、平気な様で全然平気じゃない感じが、地味に切ない。


  • 主人公俊英は、突如妻を不慮の事故で亡くしてしまう。
    絶望と自暴自棄の生活の中、遺された妻の携帯電話のロックキーを長い時間かけて解除することができたとき、妻が別の男と温泉旅行に行く途中の事故であったことがわかる。
    最も身近な妻が実は自分の全く知らない顔を持っており、当の妻は亡き人になっている。
    亡くなった人を美化したくなる気持ちはとても分かるので、亡くなってからこんな疑惑が出てきてしまうとツライ

    夫婦はあくまでも他人であり、他人が永く生活を共にするだけあって、お互いの全てを理解し合うというよりも、互いを思いやり相手が幸せな気持ちで過ごせるよう自然な距離感をもって関係を保つものだと、私自身思っていた。
    ゆえに、俊英のように衝突やトラブルを回避する彼の言動から妻は<夫に見限られた>と思うなんて考えても見なかった。
    もっとちゃんと向き合いとことん話し合っていればよかったのか?
    ぶつかり合いの話し合いは、結局お互い傷つけ合うだけなのに?

    答えの出ない苦しさが淡々とつづられるが、知らず知らずのうちに、少しだけ妻の死を受け止められて行く。
    こうやって、時間をかけて遺された人は前を向いて行くんだと感じた。

  • 『許してはないわよ。受け入れただけ』

     突然の事故で妻を亡くした主人公・北野俊英の実母のセリフ。『お父さんが浮気したこと、ある?』への返答。

    "受け入れただけ"

     俊英は、妻の携帯のロックを解こうと、毎日ちまちまビールを飲んで、ウダウダ・・・なんとも煮え切らない男といった感じだけど、「妻の死のその後」によって、変わって行く。
    色んな気付きが描かれていて、その姿は不甲斐ないながらも、ちょっといい!

     妻の姉も、様々なこと(妹のこと、婚約者のこと、親のこと)受け入れて前に進んでいる。

     職場の後輩の女の子も、現実を受け入れて恋を諦める。
    『自分さえ我慢すれば、あとはすべてがうまくいく。無駄な我慢でないことも、理屈としてわかる。わかっているのに、その我慢ができない。そういうことも、ある。』

    うんうんと、頷きながら読んだ。わかるー!、と。

    『どんな理由があれ被害者は自分だと、知らず知らずのうちに思いこんでいた。そうなって当然だ。思いこんでいいのだと、今も思う。
     だが。知らず知らずのうちに自分が加害者になっていることもある。のか?・・・』


     読後、なんともモヤモヤして、スッキリしない。
    ましてや、『感動が胸を満たす物語』⁇⁇

     だけど、・・・時間と共に、
    大きく心を揺さぶる物語ではないけど、"人って、イレギュラーなことには不甲斐ないのよね"と想うと、"リアルだなー"と、じわじわ心に沁みてきた。
    俊英の葛藤、わかる。よく頑張った。


    わたしなりにこの物語から受け取ったメッセージ!

    "受け入れて生きる"


    『楽は楽かもしれないが、心に澱(おり)は残るだろう』
    心に澱を溜めず、あるがままを受け入れて生きるのはなんと難しいことだろう、と想う。

     でも、まぁ、俊英は人をおもんばかり、受け入れて、変わりつつあるところで終わるのは、嬉しい。

  • 『ひと』を読んでから気になった作家さん。
    今回は「近いはずの人』ということで、夫婦のお話。

    亡くなった奥さんの携帯から、別の男性とのメールのやり取りを見つけてしまう。それを知った男の葛藤。

    0000から暗証番号を打ち続けてロックを解除してするとか、どんな根気…。

    真相は何とも言えないけれど、近くにいる人の事なんて、分かっているようで分かっていない。
    知らない事なんて多いし、知らない方がいい事もあるかもしれない。

    「313ページのたったひと言にあなたはきっと涙する」って帯に書いてあったけど、それはあまりよくわからなかったなぁ。

    結婚してると違うのかなぁ。

  • 「許してはいないわよ。受け入れただけ」
    俊英の母の言葉、真理すぎる

  • 正直言って感動はなかったけど、主人公が一つ大きなヤマを乗り越えた気がします。片肘張らずに頑張ってるところが好印象。

  • 小野寺ワールドなのに、何か違う。先が気になった。残高だが、スッキリ出来なかった。

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著者プロフィール

一九六八年千葉県生まれ。二〇〇八年『ROCKER』で第三回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞し同作で単行本デビュー。著書に「みつばの郵便屋さん」シリーズ、『ひと』『ミニシアターの六人』『レジデンス』『タクジョ!』『銀座に住むのはまだ早い』『君に光射す』などがある。

「2023年 『片見里荒川コネクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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