- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065181263
作品紹介・あらすじ
『現代日本の精神構造』(1965年)や『近代日本の心情の歴史』(1967年)で日本と日本人がたどってきた道行きを具体的な事象を使って鮮やかに分析した社会学者は、人々を震撼させた連続射殺事件の犯人を扱う「まなざしの地獄」(1973年)でさらなる衝撃を与えた。その名を、見田宗介(1937年生)という。
続くメキシコ滞在を機に、さらなる飛躍を遂げた社会学者は、「真木悠介」の名を使ってエポックメイキングな著作『気流の鳴る音』(1977年)を完成させる。ここで形を得た人間観と、そこから導かれるコミューンへの憧憬は、独自の理論に結晶していき、数多くの信奉者と、数多くの優れた弟子を生み出した。その成果は、『時間の比較社会学』(1981年)や『自我の起原』(1993年)といった真木悠介名義による労作を経て、ついに『現代社会の理論』(1996年)に到達する。現代の世界に向けられた冷徹と愛情の共存するまなざしは、最新の社会現象についても常に鋭利な分析をもたらし、今なお他の追随を許すことがない。
その思想が、かけがえのない「他者」たちとの対話を源泉にして生まれてきたこともまた間違いのない事実である。対談や座談会は収録の対象としなかった『定本 見田宗介著作集』(全10巻、2011-12年)と『定本 真木悠介著作集』(全4巻、2012-13年)を補完するべく精選された、珠玉の11篇。現代日本社会学の頂点に君臨する著者が望んだ初の対話集がついに完成した。
[本書収録の対話]
河合隼雄 超高層のバベル
大岡昇平 戦後日本を振り返る
吉本隆明 根柢を問い続ける存在
石牟礼道子 前の世の眼。この生の海。
廣松 渉 現代社会の存立構造
黒井千次 日常の中の熱狂とニヒル
山田太一 母子関係と日本社会
三浦 展 若い世代の精神変容
藤原帰一 二一世紀世界の構図
津島佑子 人間はどこへゆくのか
加藤典洋 現代社会論/比較社会学を再照射する
交響空間――あとがきに(見田宗介)
感想・レビュー・書評
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テレビの箱が世界になり一方通行のコミュニケーションができないとあったが、ネット文化になり双方向コミュニケーションになっても本質は変わってなさそうなところが興味深い。
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対談集だが、一部の記述はよく理解できないものもあったが、社会学者が広範に社会を見つめていることに驚いた.河合さんの発言で「現代社会の問題は、本来的祭りがものすごく少なくなったということではないでしょうか(p18).」そう思う.吉本隆明、廣松渉はよく理解できなかった.ラテンアメリカの国で「よい人生を生きた賞」(p193)がある由.瑞宝章のような公務員の賞より素晴らしいと思った.藤原帰一が第一次世界大戦、ロシア革命と第二次世界大戦と中国革命をセットにして考察しているのは面白かった.さらに1789年のフランス革命と200年後の1989年のベルリンの壁崩壊をリンクしているのも新たな視点だと感じた.新自由主義に関連して「競争しない自由」の提言も斬新だ.週2日、各5時間程度働けば、現代社会を回せるとの指摘は面白かった.
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迷いということは、さっき出てきた軽いということと裏表ですね。政治とか社会とか、あるいは人間の「実存」とか「生活」とか、戦後の知識人が重いと思っていたものが何かしら幻影めいたものだという認識を、大衆のほうが先に、感覚として持ち始めている。そして、宇宙の目で見れば、このほうが正しいのですね。人類の歴史の全体も、束の間の夢みたいなものですから。ただ、これは僕自身の欠点なのでよくわかるのですが、あまり子どもの頃から天文学にさらされていると、宇宙人みたいな目で人類の歴史を見てしまうので、生活の現実感覚がなくなるのですね。望遠レンズで自分の生活を見ているような。現代っ子にも時々それを感じます。
けれども、それは人間が一度は通過しなければならないニヒリズムだと思うのです。そのことを本当に知った時には、束の間の夢だからこそ大事にしよう、今たまたまここに人間として生きていることはとても不思議なことなのだ、ということが実に鮮明に感覚されるわけですね。そういうふうに人類が生き始める時代が来ると思っています。(p.39) -
見田宗介の対談を集めた一冊。対談時期もテーマも多様なので一つ一つを咀嚼するのは大変。しかし、見田さんが何を目指して自らの営みを続けてきたのかはなんとなく分かった気がする。