銀河鉄道の父 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065183816

作品紹介・あらすじ

第158回直木賞受賞作、待望の文庫化!

『銀河鉄道の夜』『注文の多い料理店』など数多くの傑作を残してきた宮沢賢治。
清貧なイメージで知られる彼だが、その父・政次郎の目を通して語られる彼はひと味違う。
家業の質屋は継ぎたがらず、「本を買いたい」「製飴工場をつくってみたい」など理由をつけては、政次郎に金を無心する始末。

普通の父親なら、愛想を尽かしてしまうところ。
しかし、そんなドラ息子の賢治でも、政次郎は愛想を尽かさずに、ただ見守り続ける。
その裏には、厳しくも優しい“父の愛”があった。やがて、賢治は作家としての活動を始めていくことになるが――。

天才・宮沢賢治を、父の目線から描いた究極の一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 徒然と感想

    当時の父親像からは程遠いリベラル寄りの父親に育てられたんだから、息子がちょっと世間からズレててもしゃあないよな。その結果「普通」になれず悩む賢治が気の毒。
    テレビもYouTubeもない時代、孤独でたまらなかったやろうなと思う反面、実家が太いから甘え放題なわけで、親としての歯がゆい思いもわかる。

    でも、お父さん、あなたの息子さんがこういうふうになったのは、大体はあなたの子育ての結果ですよ。そして、家族がみんな仲がいいのも、愛情深いのも、献身的な人柄に育ったのも、あなたの子育ての結果ですよ。

    農学校の教師の仕事内容がブラックすぎて戦慄。ほんま彼の生まれた時代がしんどすぎ。
    あとは家族から結核患者が出ても、家が金持ちなら大丈夫なんやなって学んだ。そういう意味では賢治は恵まれてた。ゴールデンカムイの杉本は家燃やしたのにな。

  • 随分と前『あの宮沢賢治は実はボンボンで金食い虫だった』という裏話のようなものを聞いた時は、何故だかせっかくの名作の価値が下がったような気がした

    その事実は事実のままに、読み終えたあと賢治の作品が更に輝き出して見える素晴らしい1冊でした

  • 文字通り宮沢賢治の父政次郎から見た宮沢家の物語。
    とにかく子煩悩な父親だったのが意外でした。自ら賢治の看病をしたり、常に賢治のことを第一に考え資金を提供したりと少々過保護なのではと思うところもありますが。。。ここまで子を愛せる政次郎がまぶしいです。
    政次郎の目で語られるので賢治以外の妹、弟の様子も垣間見えて興味深い作品です。

    また、昭和な考えが何かと上書きされる昨今で、大正世代の生活の様子や価値観がなんだか新鮮に感じました。それでも女性が社会に出るようになっていく様子はどの時代も同じなのかと親近感すらわきます

  • 子供の頃、注文の多い料理店が好きだった。宮沢賢治は今では誰でも知っている知名度だが、評価されたのは死後数年でようやくとは…  正岡子規とかもそうだが、この時代は結核で亡くなるケースが多い。 政次郎が過保護気味で良き理解者として描かれている。 自らの危険も顧みずに看病するなど立派な父親、見習わないとなぁ

  • Audibleで聴いた。

    宮沢賢治の父親目線で描かれた、宮沢賢治、宮沢家のお話。
    宮沢賢治の生い立ちについて全然知らなかったので、お金持ちの家で育ち、頭は良いけれど商売には向いていなくて、長男だけど家業の質屋は継がず、作家になる前に色々なビジネスをやろうとしていたり、幼い頃から病気がちで結核で若くして亡くなったり…という生い立ちを知れたのが面白かった。
    ラストは唐突に終わったなと思った。

  • 親の愛情は宇宙よりも広い。
    自分が親になることがあれば、もう一度読んでみたいな。

  • 実は宮沢賢治先生の本は読んだことがなかったけど、ずっと気になってた。子供の頃、銀河鉄道の夜を読もうとして、少し怖いのとよくわからなくて苦手意識ができ、大人になってもそれが抜けなかった。その克服として気になった本を読んでみた。
    先生の親父さん、なんとも愛らしいキャラ。厳しいけど子供が大好き。その葛藤する姿に深い優しさを感じ、それで読みやすかったと思う。
    この時代まだまだ「人生50年」とか言われていて短い。一生や日々の生活が人にとってとても重い。大事にするために、仕事も勉強も厳しく決めて導いてあげる必要があったのかなと。いまは「人生100年」。自由が増えた代わりに一生や日々の生活が軽くなってるんじゃない?なんちゃって。とはいえ、自分は、大事だからと頭ごなしや厳しく言われるの大嫌いだ。だから、自由な雰囲気はいいなと思うし、もっと素直に優しさを出していければいいのになとも思う。
    あと、やっぱり覚悟を決めた表現者の残す作品はその人の何かが宿るんだろうなぁ。前に読んだ「楽園のカンヴァス」でも、ルソーの気迫が作品に移るような描写に引き込まれたけど、今回も同じような感動があった。
    芸術家の作品、ほんとポジティブだ。

  • 素晴らしい小説だった。親子愛を描いた本として傑作だと思う。この小説での父・政次郎は、宮沢賢治という、人とは一風変わった個性と真摯に向き合う、人間味あふれる父親として描写されている。実際の父親がどのような人であったかは、資料がないために、はっきりとはわかっていないらしいが、いつの時代でも、このような父親のもとで育つ子供は幸せだと思う。賢治の最愛の妹・トシが亡くなる場面であったり、その約10年後に賢治が亡くなる場面は、残された人たちの気持ちを考えると、とても辛かった。

  • この父でありすぎる父が生きたのが、人間50年で結核が死の病だった時代だったとは言え、今の人生100年時代という言説や風潮に流され、子供との一つ一つの時間をないがしろにしてしまって来た気がした。この春、二人の子供たちはそれぞれ次のステージに歩みを一歩進める。二人のけんこうを切に祈りながら、私も父でありすぎたい。

  • 賢治のわがまま具合と、父が親バカすぎて、終始イライラしながら読んだ。宮沢賢治を嫌いになってしまった。物語の構成は良いはずなのに、キャラクターと相いれなすぎて、私には合わなかった。

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著者プロフィール

1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年、第42回オール讀物推理小説新人賞を「キッドナッパーズ」で受賞しデビュー。15年に『東京帝大叡古教授』が第153回直木賞候補、16年に『家康、江戸を建てる』が第155回直木賞候補となる。16年に『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で第69回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、同年に咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。18年に『銀河鉄道の父』で第158回直木賞を受賞。近著に『ロミオとジュリエットと三人の魔女』『信長、鉄砲で君臨する』『江戸一新』などがある。

「2023年 『どうした、家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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