- Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065186572
作品紹介・あらすじ
ねぇ、嘘だって言ってよ、お父さん――。
その日、ありふれた日常がひっくり返った。
教え子を誘拐したまま、事故死した父。
親族、警察、マスコミーー誰も何もわかってない!
遺された娘は、父の名誉にかけて、真相を追う。
「静岡県三島で交通事故が発生。運転していた男性一名が死亡――」ニュースを見た森遠伊緒は愕然とする。亡くなったのは自分の父だった。だが、悲嘆にくれるのも束の間、追い打ちをかけるように驚愕の事実が判明する。事故発生当日の未明に失踪した少年の痕跡が、事故車から発見されたという。自分の父は誘拐犯だったのか――いや、そんなわけがない。周囲からあびせられる非難、マスコミの追求、警察からの圧迫。折れそうな心を奮い立たせ、伊緒は真相を知るべく、行方不明の少年を探すと決意するが……。
ミステリ界期待の新星が書き下ろす、「家族のカタチ」を問う傑作ミステリー!
感想・レビュー・書評
-
内容に惹かれて購入。
突然、父親の死亡ニュースを知らされて、状況は一変。さらに誘拐犯にされて、世間からはバッシングを浴びます。娘は、真相を知るために奔走していきます。様々な家族像が描かれていて、「家族とは?」という文章が、読んでいる間、ずっと脳裏に焼きついていました。
物語は、娘の視点と誘拐される少年の視点の2つの視点で交互に進行していきます。最初の方では、視点が変わることによって、人を視る解釈も全然変わります。
また、次々と提示される事柄には、裏があり、あっそういうことなんだったんだと思ったり、驚いたりとどういう展開になるのか、楽しむことができました。
無実を信じる娘と誘拐される少年、二人とも芯がしっかりとしていて、どんなことが起きても負けない姿勢には、圧倒されました。また、他の登場人物もキャラクターが際立っていて、想像しやすかったです。ただ主要人物、みんな万能すぎない?と思った部分もあり、都合良く解釈されるかなと思いました。
あと、ジャーナリストやマスコミは、嫌味たらしく描かれていて、イラッとしてしまいました。都合よく解釈し、それを世間に提供するあたりは、現実感があり、視聴者としては冷静に判断しなくてはと考えさせられました。
ネットやテレビに映る情報だけが真実とは限りません。ああすれば良かった、こうすれば良かったは、結果論にすぎません。何も関係ない人たちは、何もしないことが大切であると感じました。
気持ちよく明るく終わってくれたので、読後感はとても良かったです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
テレビ画面から流れた交通事故の映像、映し出された車は見覚えのある父の物だった。
プロローグから惹きつけられて一気読み。
主人公は、事故で死亡した小学校教諭の謙介を父に持つ森遠伊緒。
教え子の六助の行方不明と重なった事で父には誘拐犯の汚名が着せられる。
父の無実を信じ、真実を求め少年の行方を追う伊緒。
本作でもマスコミやネット民の根拠のない非難に怒りが募った。
平気で嘘を付く者、重大な秘密をいともたやすく口にする者達にもうんざりする。
人間の残酷な側面に嫌気がさすが、人と人との絆を感じ光が見えるラストに胸を撫で下ろした。 -
森遠謙介・早美夫妻の娘 伊緒(イオ)が謙介の起こした事故に関して真相を追及していく物語だが、事故車には恩田六助(ロク)が同乗していた痕跡があり、死亡した謙介が誘拐したと疑われる.ロクは行方不明.イオは友部日出郎(ヒデロー)の助けで活動するが、事故の関係者 篠山優一の話から次第に事件を解明していく.ロクと佐藤幹泰(ミキヤス)のやり取り、水口参子の登場など多くの人物が絡み合い話が展開する.ロクが父 継夫に虐待されていたことや、イオもロクも複雑な親子関係であったことも物語を深めていると感じた.
-
2020.07
-
前半の行き当たりばったりの捜査もどきから、全体像が読めてくる後半になると急に緊迫感が出てくる。このバランスの悪さが、より緊迫感を際立たせている。同じことがキャラ造形にも言える。高校生の女の子と小学生の男の子がメインキャラだが、とても年齢相応には見えないし、ありえない行動ばかりとっているように見えるが、そのことがキャラクタを際立たせているように感じる。さらに、物語にもありったけのものを詰め込んでいる。まるで「ごった煮」だ。しかし、枝葉を切って整理してしまったら、このラストには辿り着けなかっただろう。とても粗削りだが、読み手を引き付ける筆力を感じた。
#さよならが言えるその日まで #NetGalleyJP