サージウスの死神 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065192801

作品紹介・あらすじ

徹夜明けの仕事帰り、俺はビルの屋上から飛び降りてきた男となぜか目が合った。男はすぐに目の前のアスファルトの上でぐちゃぐちゃになった。警察の取り調べを受け、男の側頭部に3センチくらいの穴が開いていたと聞かされる。警察から解放された俺は、着替えを持ってきてくれた会社の同僚と地下カジノ「freeze」に繰り出すことにした。早速ルーレットへ。初日は負けたが俺はルーレットが気に入り、しばしばfreezeを訪れるようになる。300万円近く負けて俺は勝負に出た。そして預金のすべてを失った。会社にも行かず、俺は借金をしてルーレットに賭け続けた。ルーレット台にかじりつきホイールを凝視していると、突然影が落ちてきて数字の形になった。頭蓋骨から焔がこぼれ「26」という数字が見えた。一数字賭けに勝った。その後俺は家に戻らなくなった。カネは狩るものだと理解し、勝つことに徹底した。俺は賭けて、生きのびることができる。なぜなら、頭蓋骨のなかに「数」を飼っているからだ。あの男と目が合ってから……。

感想・レビュー・書評

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  •  解説も含めて二百頁強の中編なのに結構時間がかかり読了した。前回読んだ「QJKJQ」とは随分テイストが違うように思う。

     著者には申し訳ないが、冒頭から暫く読んだところで、不覚にも笑ってしまい突っ込んでしまった。勿論、小説の本質ではないが、物語の展開が始まることは充分理解している。

     純文学に分類されている―賛否両論があるように思うが、読書の過程の中で、主人公の思考に共感しなければ読めない作品かと問われたら、否です。傍観しながら、言葉の妙と絞り出した極論を楽しむのも有だと思う。

     俺(主人公・華田)はⅮTPデザインの会社に勤務している。五年間三日以上の休みをとったことがない。女性誌に掲載するカラーページを作っていた担当者が、しめきり直前にいなくなった。午前三時頃、仮眠していた俺を先輩社員に叩き起こされた。ビルのオフィスに貼りついて働きながら、現実に過去を食われ、未来を食われる。魂はカネを稼ぎながらゆるやかに腐っていく。

     俺の左側にある十階建てくらいのビルの屋上に人影があった。そしてなぜだか俺と目があった。水滴が当たった、影は音もなく俺の方へ落ちてきた。ひどい音がして足もとのアスファルトが揺れた。(投身自殺即死)

    そして、俺は足もとの男に言った。「あんた、俺と目が合ったよな。俺に当たった水滴は、あんたの最後の涙なのか?(以下省略)」砕け散った脳と肉片と血で着ていた服が汚れてしまった。しかし華田が見たのは影だけの筈だ。だから笑ってしまった。そこは笑う場面ではないと言われればそれまでだが。
    涙が落ちてきても夏の日中なら地表には届かない。ことわざなら「二階から目薬」、「不可能犯罪」なら、乱歩先生の「屋根裏の散歩者」のレベルだと思っていた。影が滑り落ちてきて、蒼白い焔が見えて鉄の味がする。
     それが幸運なのか不運なのかはわからない。

    あることで、華田は「俺の頭蓋骨のなかに数を飼っている」と言うようになる。身辺の境遇が劇的に変わってしまう物語だった。

     生と死の境界線での狂気。現実と幻?

    著者の筆圧の強さと世界観に酔った。

     読書は楽しい

  • アンク以来の、1年越しに佐藤究さんの作品を読んでみた。
    この作品がデビュー作とのこと以外はほとんど何も知らない状態で読みました。
    深夜3時でも新たに仕事が舞い込んでくるような、ブラックな職場で働いている主人公。
    ひょんなことで同僚から裏カジノに誘われ、そこで行われている「ルーレット」に心を奪われる。
    頭の中に数字が浮かび上がる能力がわかった時点では、これはギャンブルで勝負していく展開の話なのかな?!と思いきや、全然違いました。
    まあひたすらに荒れ狂った世界が淡々と描かれていました。
    主人公が”ギャンブル”を通じてどんどん破滅へと向かっていく姿が終わりまでひたすら続きます。
    怒涛の展開!みたいなものはあまりないのですが、淡々と描かれている分「ギャンブル」というものへの恐れが、読み終わってからは増しました。
    何を見せられているんだ?みたいなシーンも沢山ありましたが、人間の理解を超えた部分が少ないページ数ながら満遍なく描かれていました。

  • 佐藤究のルーツを辿る。
    それは恐慌なる純文学。なぜだろう。妙に感情移入できてしまった。ただ、わたしは一切の賭け事に興味はない。……はず……。侵食。

  • いずれ文庫化する「テスカトリポカ」のために過去作をぼちぼち読んでいるが、これは2005年の群像新人文学賞の優秀作らしい。
    純文学の章にしてはソリッド……当時の流行りだったのか。中原昌也とか。
    しかしのちの「QJKJQ」「Ank: a mirroring ape」につながる衒学はたっぷり。
    そして鏡のモチーフ。
    思弁的作風も、デビュー当時から。

    が、どうしても「ホムンクルス」(2003~2011)を思い出してしまい、ノイズに。
    安易にいえばドストエフスキー「賭博者」だが、本作のハセガワという独特の人物は一歩抜けている。
    が、そうはいってもさらに村上龍を連想したりして、既視感の糸にこんがらがってしまうのだ。

  • 佐藤究氏の純文学作品。ただ、今後のエンタメ作品の感性も感じさせる描写が見られ、引き込まれるタイプの純文学に感じました。

  • ミステリを期待して買ったけど、純文学の方でした…
    話のスピード感がすごい。そして難解。目の前で飛び降り自殺を見てからギャンブルにハマっていく男の話だけど、全体的に煙がかった世界な上に眩暈のする気分。

  • 目の前で飛び降り自殺を目撃した男のお話
    男はDTPデザイナーだが、それからギャンブルをするようになり、うんたらかんたら
    その内容はよくはわかりませんでした
    残念

  • 佐藤究のデビュー作。
    あまり有名ではない?し評価も高くなかったので正直あまり期待していなかった。
    が、他の作品同様かなり読み応えのある作品で佐藤究作品の狂気が溢れている。

    主人公が賭博にのめり込み、どんどんと狂気にまみれていくわけだが、読んでいるこちらまで頭がおかしくなるような読むドラッグのような作品。
    特に後半、薬師寺やスキンヘッドの男との会話のシーンは殴られてるかのようなヘビーさとテンポ感で中弛みすることなく世界観にのめり込んだ。
    特にこの作品から何かを学んだりすることは少ないかもしれない。
    ただ、エンタメという観点で言えば最高にエキサイティングでスリリングなエンタメ作品だ。

  • 直木賞作の『テスカトリポカ』と同じ作者の群像新人文学賞優秀作ということもあって読んでみる。
    死とギャンブルとカネの狂気というか、難解という内容とも感じないが、分からないというのが正直な感想。
    21-32

  • わっかんない……でも不思議と一気読みしてしまう魅力があった。狂気うずまく。

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著者プロフィール

1977年福岡県生まれ。2004年、佐藤憲胤名義で書いた『サージウスの死神』が第47回群像新人文学賞優秀作となり、デビュー。2016年『QJKJQ』で第62回江戸川乱歩賞を受賞。『Ank: a mirroring ape』で第20回大藪春彦賞、第39回吉川英治文学新人賞を、『テスカトリポカ』で第34回山本周五郎賞、第165回直木賞を受賞。

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