乱 (講談社文庫)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065196656

作品紹介・あらすじ

少年時代を独り野生児として育った「虎」が、畑を荒らして村人に捕まってしまう。処刑されそうになるところを四郎という少年に命を救われる。天草四郎と虎の出会いだった。そのころ、九州の島原と天草の切支丹に対する迫害は苛烈を極め、四郎の父親らを首謀者にして公儀への反抗が企てられつつあった。他方、老中・松平信綱は、三代将軍・家光の治世に不安を抱いていた。江戸に幕府が開かれて三十有余年、天下は徳川家の下に本当に治まっていると言えるのか。歯向かう大名家は無くとも、民草はまだ治まっていない。信綱の心の中に潜む闇が蠢く……。

感想・レビュー・書評

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  • 天草四朗は授業で習うけど、島原の乱しか知らなかった。その時代背景がわかって興味深かった。幕府側も、四郎側にも、それぞれの人間模様があって、歴史上の出来事も結局は人なんだな。

  • 一揆だったのか、それとも宗教戦争か。「島原の乱」の裏側までわかる傑作歴史小説!

  • 島原一揆を扱った歴史小説。天草四郎が等身大の少年として描かれる。すごく平易に書かれてたのですごく読みやすい。子供でも読めそう。
    島原一揆はキリシタン弾圧、島原藩の圧政に対する反旗、といったくらいの理解しか無いのだけれど、本書で描かれるような世界もあったのかも知れないと思わされる。一揆の規模に比べ、登場人物が多く描かれず、いい意味で単純化されている気がするけど、ご都合主義とも見れるかも。それがエンタメ的でおもしろくもありました。

  • 所謂「島原の乱」は、キリシタンへの弾圧が激しく行われたことへの反発、島原に転封して日が浅かった松倉家の苛政に堪えかねた人達の憤懣の爆発、江戸幕府の下で改易された大名家に仕えていた経過が在る武士達の不満等々の要素が絡まり合って、大規模な蜂起が発生し、幕府側も大規模な軍勢を動員して事態収拾に取組んだとされていた。本作はそういう通説を下敷きとしながら、事件が大規模化して行った「裏側に何が?」ということに想像の翼を広げ、同時に事件の渦中に身を投じた人達のドラマが展開する。
    四郎との係わり、蜂起に身を投じた人達との係わりという中で「“人間”であること」を取り戻すかのような、“野人”という生き方をせざるを得なかった処から出発している虎が巡らせる想いや“乱”の中での彼の闘いというようなことが、本作の物語の最も主要な軸かもしれない。他方、「旗頭として担ぎ上げられる」という中で「人が生きて行くこと」、「社会の安寧が保たれること」という問題に向き合うような四郎の移ろう想いというのも大切な軸だ。
    そういう“乱”の渦中に突入した人達の他方に、渦を寧ろ起こしたという感の松平伊豆守信綱が在る。そしてその周辺に柳生宗矩や、柳生十兵衛が登場している…
    ダイナミックな映像が眼に浮かぶような展開で、夢中になってしまい、非常に速く読了に至ってしまった一冊である。

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著者プロフィール

1976年福岡県生まれ。2008年『蛇衆』で第21回小説すばる新人賞を受賞。その後、『無頼無頼(ぶらぶら)ッ!』『兇』『勝負(ガチ)!』など、ニューウェーブ時代小説と呼ばれる作品を手がける。また、『戦国BASARA3 伊達政宗の章』『NARUTO-ナルト- シカマル新伝』といった、ゲームやコミックのノベライズ作品も執筆して注目される。’21年から始まった「戦百景」シリーズ(本書を含む)は、第4回細谷正充賞を受賞するなど高い評価を得ている。また’22年に『琉球建国記』で第11回日本歴史時代作家協会賞作品賞を受賞。他の著書に『清正を破った男』『生きる故』『我が名は秀秋』『戦始末』『鬼神』『山よ奔(はし)れ』『大ぼら吹きの城』『朝嵐(あさあらし)』『至誠の残滓(ざんし)』『源匣記(げんこうき) 獲生伝(かくしょうでん)』『とんちき 耕書堂青春譜 』『さみだれ』『戦神(いくさがみ)の裔(すえ)』および『THE LEGEND&BUTTERTLY』(ノベライズ)などがある。

「2023年 『戦百景 大坂冬の陣』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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