ローマの哲人 セネカの言葉 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065200520

作品紹介・あらすじ

パクス・ロマーナ期、ローマ帝国で弁護士、元老院議員、財務官、法務官、そして皇帝ネロの顧問官を歴任したセネカ(?~65年)は、思想家として人生、死、貧困、徳、欲望と快楽、真の自由という、誰の人生にも関わるテーマについて普遍的なメッセージを遺している。「どうしてこんな面白いものが今まで日本ではほとんど読まれなかったのだ」――特定の他者にあてた書簡の形で著した十数篇の文章を、『清貧の思想』『ハラスのいた日々』の作家・中野孝次が晩年自らの翻訳で読み解く。道徳的退廃に陥った21世紀の日本を憂え、人として生きる術を説くいきいきとした箴言として提示した、現代人のためのセネカ入門。(原本:2003年岩波書店刊)

感想・レビュー・書評

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  • 著者の相当なるセネカへの思い入れを評価対象しても良いと思う。
    セネカはネロの頃の哲学者であるが、暴君としてのねろが強すぎてあまり知られていない。
    キケロや孔子、孟子にも通ずる、心の拠り所となる存在と思う。知名度が足りていないのと、似たような事柄を取り上げる教科書は論語や大学にあり親しみがないだけ。
    セネカを知るために労した事柄の一つ一つが愛らしく、著者にも興味を持ちました。

  • セネカが周囲の人に当てた書簡集(すべて創作という見解もある)。「自然に従え」というストア派の哲学をベースに、セネカが悩める人へ人生の対処法を説いている。大切な人・ものを失うことへの恐怖とか、自分を信じきれなくて心が乱れることとか、人の悩みは2000年前も変わらない。セネカは具体的事例を交えながら文章を書くので、2000年後に生きる私が読んでも、心に刺さる。一番感銘を受けたのは「自分の心のうちにあるもの以外は、すべて借り物。依存せずすべてすぐにでも返す心構えをもって生きる」ということ。失う怖さを感じていたが、借り物であり、今この一時でも手にできたことが幸せだと思えるようになった(少しだけ)。著者の解説・解釈もセネカへの理解を手助けしてくれる。手元に置いて読み返したい。

  • 金大生のための読書案内で展示していた図書です。
    ▼先生の推薦文はこちら
    https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=35493

    ▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
    http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BB31424090

  • 昭和初期~平成の時代を生きた著者がギリシャストア派の哲学者セネカの言葉を現代社会に当てはめて紹介している。

    基本的には引用が1/3、それに対する補足や著者の思いが2/3という感じで、セネカ愛が伝わってくる。

    読んでいると、セネカの著作に当たってみたいと思うようになる。

    内容は
    「マルキアへの慰め」
    「人生の短さについて」
    「道徳についてのルキリウスへの手紙」
    「ヘルヴィアへの慰め」
    「幸福な人生について」
    「心の落ち着きについて」
    「閑暇について」
    「神意について」

    から引用されている。

    以下、気になった言葉

    ・やがては持ち主に返さねばならぬ物によって、人生の舞台は飾られているのです。終わりまで手元に残るのは僅かなものです。

    ・運命によって与えられたものはいかなるものでも、それを保証するものなしとして所有すべきです。

    ・奪い取られたことをあなたは嘆くべきでなく、すでにそれを得ていることを感謝すべきだ。

    ・死はあらゆる苦痛の解消であり、その終焉です。

    ・今を生きないで、未来の良い生活を夢みて今を犠牲にしていることだとして、そういう人間は生きているのではない。ただ生存しているだけだ。

    ・自分自身の時間と取り換えるに値するものなど、何も見つけられなかった。

    ・自分の全時間をただ自分自身の必要のためにのみ使う人、毎日を人生の最後の一日であるかのように生きる人は、明日を望みもせず、また恐れもしません。

    ・より大きな苦労をしなければ所有し続けられないものを、わざわざ大変な苦労をして手に入れようとする者の人生くらい、単に短いのみならずもっとも惨めなものはありません。

    ・人生は先送りされてゆく間に通り過ぎてしまうのです。

    ・所有の少ない人でなく、渇望の多い人が貧しいのです。

    ・偶然の機会が君に与えるものを避けよ

    ・自分自身で充足していてもなお、人を愛さずには生きているに値しないとするのが、賢人と言われる

    ・自分の求めるものが自然の欲求か世俗の欲求か知りたいのなら、それがどこで止まるかを考えるがいい。

    ・君の恐怖の対象は大したものではないか、長続きはしないだろう。

    ・心の病とは、ほんの軽い気持ちで願うべきこと、あるいは絶対に手に入らないものを何が何でも手に入れようとすること。そしてそんな本来小さな価値の物に途方もない価値を置いたりするものだ。

    ・正しい行為の報酬は、それを行ったという事にある。

    ・道を知るものは植える事を努む

    ・外から来たものを喜んでいるのは、壊れやすい基礎に家を建てているようなものです。

    ・持ってないものを欲しない事、提供されたものを喜んでい頂くこと

    ・運命の手中にあるものには、それがいい顔を見せるときでも、むごい命令を下した時でも、心を動揺されないだけの距離を置け。運命が与えたものを取り返しに来ても狼狽するな。

    ・自分の心の要求は何かをしっかり見定め、そこから発した目標、仕事を、よくよく研究し、確かめ、決意し、企てたことをやり抜こうとする。

    ・自分に不適な仕事をするものは不幸に陥る

  • セネカは二千年前に、「人のためになると思って」思索をしたそうですが、現代に生きる私達にも、生きる知恵としてその思索が充分役に立つところが素晴らしいと思いました。
    『倫理について』の本はアマゾンでかなり高額になっているので、その部分がたくさん掲載されていたのは良かったです。

    他の方も指摘されているように、「日本人は…」という著者のステレオタイプ的な思い込みの部分は不要だったかなと思います。
    解説はセネカの生きた時代背景についてなどで充分。

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著者プロフィール

1925-2004。千葉県生まれ。東京大学文学部卒、國學院大學教授。作家、評論家。『実朝考』『ブリューゲルへの旅』『麦塾るる日に』『ハラスのいた日々』『清貧の思想』『暗殺者』『いまを生きる知恵』など著作多数。


「2020年 『ローマの哲人 セネカの言葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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