ハジメテヒラク

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065201374

作品紹介・あらすじ

『おはようございます。実況はわたし、出席番号三十三番、綿野あみがお送りいたします。』
ひそかな趣味は脳内実況!そんなわたしがなぜか生け花部に……。2019年度中学入試最多出題作『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』で講談社児童文学新人賞受賞のこまつあやこ氏、待望の2作目。
ユーモラスで爽やかな青春小説!

「あ、いえ、そうじゃなくて、生け花ってふつう……」
女の子がやるものじゃないんですか?
その言葉が喉(のど)から出かかってわたしははっとした。
【実況ってふつう男性がやるもんだろ】
むかし、おとうさんが早月ちゃんに向けた言葉が蘇る。
ダメだ。同じようなことはいいたくない。──本文より。

感想・レビュー・書評

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  • 小学校からの友人のいない私立中高一貫校に入学した綿野あやは、小学5年生のときに友人の恋愛を応援しようとして暴露し孤立してしまった経験から、人の恋愛には関わらない方針をとっていた。両親と暮らすあやの家に競馬の実況アナウンサーになるべく内定していた就職先を蹴って家出し居候していたいとこの早月から、「実況中継」を教えてもらったあやは、孤立時間を実況で乗り切って以来、「脳内実況」が習慣になっていた。あやは、友人になりたての美紗姫が男子目当てで男子バスケ部のマネージャーを一緒にやろうと言うのを断る目的で、偶然部長に勧誘されたことをきっかけに、生け花部に入ることに。ところが、高校2年男子の部長は、仕入元の花屋の店員可奈子に片思い中で、あみはそれを応援するために文化祭で生け花ショーを企画し、実況を引き受けてしまった。

    過去の失敗を引きずる少女が、生け花と出会い、得意の実況を活かして、周りの人に助けられながら乗り越え成長していく物語。





    ******* ここからはネタバレ

    申し訳ないんですが、私には合わなかったようです……。
    ちょっと前半の展開が突拍子もなさすぎて、実は読み進むのが苦痛でした。
    1回諦めかけました。きっと読まなくてはならない本でなけれは完読していなかったと思います。

    主人公のあやは、5年生のときに友人の恋バナを応援しようとしてうっかり暴露し、それから孤立してしまうという痛い経験をしています。
    それを救ってくれたのが、競馬アナウンサーを目指している家出中だったいとこの早月。
    一人ぼっちのときは「脳内で実況したらいいよ」と教えてくれます。
    あやの孤立はだんだん解消されていきましたが、「脳内実況」は続けていました。
    入ったばかりの学校で偶然出会った生け花部の部長に誘われて、バスケ部から逃れるために入部します。
    そこであみは、生け花の成り立ちや日本の季節について知り、感慨深く思うのです。
    ところが、実は、部長は花屋さんに惚れていて、近々お店をたたむ花屋さんに恩返しのために(?)文化祭の出し物で1位になりたいといい出すんです。
    そこであやは「生け花ショー」を企画して自分が実況をすると言い出します。
    ショーの立案は通ったけど、過去の後悔から、自分は失言せずに実況できるか不安になるといった物語なんです。

    いやいや、きっと生け花ショーを文化祭でやるお話を書きたかったのではないかと思ういのですが、ちょっと持っていき方がしんどい感じがします。

    部長が、ちゃんと当番の水やりをしないと言って先生を怒るのですが、そんなこと普通しませんよね?じょうろを持って注意しに行くぐらいなら自分で水やりしたらいいのにって思いました。ましてや先生が相手です。何回言っても忘れられてしまうなら、生徒会で当番決めしたらいいのにって考えてしまいました。
    さらに、父親と笹を運んできた可奈子さん。お父さんは根の方を、可奈子さんは葉の方を持っています。そこで、先輩は重いから代わるって”可奈子さんに”言っているんです。可奈子さん25歳。いやぁ、代わるんなら父親の方とでしょ?と思わず突っ込んでしまいました。だって、お父さんと代われば、可奈子さんと一緒に運べるじゃないですか?
    また、部長は、閉店する花屋さんに感謝を伝えるために文化祭で1位を取るっていいましたが、なぜこれが感謝につながるのか?ごめんなさい、私にはわかりませんでした。
    加えて、電車内に花を忘れて取りに行くあみに同行するために塾を休むとか?、行動が今ひとつわかりにくいです。

    久島さんが、1人で部室にいるとき「笹の葉さらさら~」と「たなばたさま」の歌を歌っていました。中学1年生がそんなこと学校でするなんてありえん、と思いました。イマドキの子なら、歌うとしたらポップとかじゃないかと思ったんです。でも、彼女は、ベトナムからの帰国子女だったんです。あー、それなら、とここは納得しました。

    早月が競馬実況アナウンサーを目指したきっかけも謎です。
    始めて競馬を見たとき、女性ジョッキーがいて驚いて、就職活動でも男性が優位で、そういえば女性の競馬実況アナウンサーはいない、だから目指そうと思う、って唐突過ぎません?
    話すことが好きとか、少しでも入っていたら納得しやすかったと思うんですけど……。

    生け花ショーで久島マイだけが、実況なしでベトナムの歌を歌いながらのパフォーマンスだったんです。見に来てくれたベトナム人のおばあちゃんのためだったんだけど、ちょっと内輪ネタすぎると感じました。他のお客さんたちにはわからない世界でしょう?
    それに、それ以外の実況でも、プライバシーを暴露しすぎに感じました。事前に了承をもらっていればいいんですけど、そうでなければまた「暴露で孤立」のリスク大ですよ。言ってしまったらどうしよう?ではなくって、言ってほしいこと欲しくないことを本人に確認すべきだと思うんです。
    言ってしまったことばを消すことはできないんですから、ここはもう少し慎重でいてほしかった。

    まあこれだけ文句を書き連ねながらも、後半部分は、生け花と向き合いながら実況の準備のために部員と向き合って、よく知ることが大事とか、大事な部分を活かすために切り捨てることが必要とか気付いたりとか、けっこう良かったと感じました。


    私自身は支離滅裂な印象を持ちましたが、字は大きいし227頁と短い。
    読むのが苦手な子でも取り組めます。
    読める子なら中学年、もしかしたら低学年からでもイケると思いますよ。

  • 前作「リマ・トゥジュ・リア・トゥジュ・トゥジュ」が結構おもしろかったので、読んでみることにしました。
    小学生高学年、中学生も向けのとても読みやすい本で、サクサク読めてしまいます。
    他の方も感想に書いていたのですが、今回のベトナムや、リマ・トゥジュのマレーシアといい、作者自身が東南アジアに何らかの関わりがあるのでしょうか。
    生け花と実況という組み合わせ、前作リマ・トゥジュのマレーシアと短歌の組み合わせといい、なかなか結びつかないものを組み合わせて、多少無理がある展開がありつつも、物語としてかたちづくってしまうのは感心してしまいます。

  • 脳内実況と生け花部。個性バラバラの4人がそれぞれを尊重しながら、バランスをとって。読後が爽やか。読んで良かった!

  • 『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』がよかったので。今作の題材は生け花×実況。『リマ~』ではマレーシアからの帰国子女が主人公だったけれど、今回はベトナムにルーツをもつ登場人物が出てくる。作者は東南アジア方面になにかルーツがあるのでしょうか?

  • 生花の良さ、実況の奥深さも散りばめられて、最後まで楽しめました。失敗やしんどいことを一つ一つ乗り越えていく姿が大人にも響く良書です

  • ちょっとの失敗から居場所をなくした綿野あみ。
    でも実況中継が彼女を救います。
    生け花と花のようす、部員とその性格特徴、見方を変えれば、いろいろバラバラなものも案外まとまっていたり。
    作者のこやまさん、『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』もそうでしたが、リズム感がとってもよくて、あっという間に読めちゃう。

  • 実況、面白いな〜! 生け花との相性も意外と良かった。
    私も脳内実況でコトバを研ぎ澄ませたい。

  • 中高一貫校に通う女の子のお話。中高一貫校だから高校生もいる部活の話が中心。
    軽い青春小説なので、とても読みやすい。内容は薄いが、脳内実況という発想や、部活の華道のうんちくなどが面白かった。

  • 娘のために借りて先に読みました。
    リマトゥジュも面白かったけど、本作もとても読みやすくて、数時間で読めます。

    華道部に入ることになった主人公がまわりの人との関わりを通して成長していくお話。
    子どもにもたくさん失敗して、たくさん人と出会って、悩んで、楽しんで、成長して欲しい。

  • ハジメテヒラク、タイトルのつけかたがとても素敵。
    あみの悩みは中学生らしいなと思った。応援したい気持ちはあっても、応援する方法を間違えちゃうと大変だから。余計なことはしゃべらないように、深く関わらないようにする気持ちはすごくわかる。
    生け花部のみんなに会えて、実況が好きなことも言えるようになってよかった。最後の文化祭での実況は読んでてうるっとした。バラバラ・バランス、それも悪くないのかもしれない。

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著者プロフィール

一九八五年生まれ。神奈川県在住。
清泉女子大学文学部日本語日本文学科卒業。公共図書館にて司書として勤務した後、私立中高一貫校に司書として勤務。2017年『 リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』で講談社児童文学新人賞受賞。『ハジメテヒラク』で日本児童文学者協会新人賞受賞。

「2023年 『雨にシュクラン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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