- Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065207758
感想・レビュー・書評
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波打つ一冊。
良かった、その思いで心が波打つ。
女性初の潜水士"海蝶“。
華やかなイメージとは裏腹、想像を絶する過酷な世界。
女性を受け入れることで生ずる、わかってはいたけれど厳しい現実。
志はあるのに身体がついていかない自分に涙をのむ、主人公 愛の姿に何度も心は波打ち、臨場感溢れる描写には息をのむ思い。
そして心の傷。
何度、潮水がこの心の傷に入り込んで痛みを広げたのだろうか…。
互いの"きず"に"な"を添えれば"きずな"に変わる。
その"な"をもたらすのは温かい手。
そんな想いを馳せたくなる読後感がまた良かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
初めての作家さん
そのままドラマになりそうな際立ったキャラクターや
ドラマチックな筋書きに、少し乗り損ねてしまったかな。
海蝶の存在は、正直わたしも「迷惑」の方に一票。
女性がこの任務に就くのは、男女平等という考え方以前に無理があるように思う。
男性と同じか、それ以上にこなせるのなら、とも思うけど、なんとなく海蝶なんてネーミング自体に
上からの思惑を感じてしまう。
母親を海難事故によって亡くしてしまった主人公に、
この仕事はあまりに負担が重く、冷静ではいられないだろう。
登場するその他の女性陣にもあまり好感は持てなかった反面、愛の父、正義や、兄の仁、バディの八潮などには共感。
東北弁が愛しい正義に、気遣いの鬼のような八潮。
そして特にお兄ちゃん。
義理の父との関係をこじらせたまま大人になり、
ずいぶん苦しんだけど、最後は良かった良かった。
ブツブツ文句を言いつつも、小説自体は読みやすく、手に汗握るラストも満足。
他の作品もチェックしてみたい。 -
海上保安庁にて初の女性潜水士になった忍海愛。通称「海蝶」
父親も兄も海上保安管として働く
311で母と一緒に津波にのまれかけ、自分だけ助かった事との葛藤、家族との関わりに悩む愛のお仕事成長物語かと思いきや、思わぬ方向に舵がきられてました。
それでも、最後には泣いてしまう。私の涙腺どうした。
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女性初の海保潜水士を主人公にした作品。作品を描くにあたり作者が相当な調査をしたであろうことが伺えるし、主人公の職場での試練や家族との葛藤もよく描かれている。
しかしながら、読んでいて登場人物達にリアリティがないと言うか、血が通ってない気がしてどうも感情移入が出来なかった。 -
私もスクーバダイビングをしていたので、器材の説明や水中での意思疎通の様子など、イメージしやすく楽しんで読めた。
あぁ、知らない人に説明するとしたらこんなふうに書くのか、と勉強になった。
非常にドラマチックな展開で、小説というより映画やドラマを見ている感覚の作品。面白かったけど、もう少しそれぞれの人物に深掘りして深く読みたかったなぁ…とも思った。
ドラマチックなだけに、海蝶も周りの人物たちも、感情的になりすぎではないかと興醒めしてしまうところも。お仕事小説として読んだので、もう少しプロフェッショナルな振る舞いというか、個人的な感情を表に出してギャンギャンするより、仕事中は淡々と仕事に徹して欲しい…とか思っちゃう。
と、言いたい放題だけど、続編も読もう。気になる。 -
日本初の女性海保潜水士、通称「海蝶」。
その栄誉に選ばれた忍海愛は、父はベテラン潜水士、兄は特殊救難隊と言うエリート一家。しかし、女性と仕事をする事に対して周りは良い顔をしない。明らかにお荷物状態の愛だが、船の転覆事故により思わぬ事件に発展し…
華々しいキャッチコピーとは裏腹に、待っていたのは男だけの所へ一人だけ女性が参加するやり難い現場。バディを組んでくれた八潮は、かつて兄のバディを組んでいた人で、優しく頼もしい存在。だが、愛の失敗によって八潮の経歴に傷をつけるかもしれないってのは悩ましかったです。
家族の反対を押し切ってやったのに足を引っ張ってばかりだったけれど、事件に巻き込まれた父を助ける為、父とわだかまりがあった兄もようやく家族一丸となって乗り越えた時、とても爽快でした。
「正義仁愛」の元、忍海家の絆がより一層強くなったと感じました。
震災のトラウマが残る愛だけど、今後の活躍に期待しています。 -
13階シリーズが好きな作家さん。でもこの作は主人公の必死さが伝わらなかった。彼女の私的な要素が強すぎて、こんな独りよがりの人が集団にいたら困るだろうな、と他の海猿達に同情してしまった。自分の意見を高める事と、生死に関わる事は別なのに、現実の地震や津波に対しての思いが伝わらない
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一気に読み終える。先へ先へとよみたくなるが、栞の左側が減るのが堪らない。そしてラスト。正義仁愛が命(空気)を分け合うシーンは最高でした。
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女性海上保安官かつ潜水士を主人公とした名著
映画では『海猿』で脚光を浴びる潜水士。その訓練の厳しさに加え、女性として潜水士を勤めることの厳しさを知らしめてくれる
その背後には東日本大震災のトラウマ
最後はめちゃくちゃ感動して涙が止まらなかったです -
エンタメ度抜群だった。海上保安庁初の女性潜水士「海蝶」となった愛は、東北大震災の津波で母を亡くしている。体力や力が絶対的に必要な海保という世界で、女性というハンデを背負い海へ立ち向かう。津波のトラウマで海を憎く思う気持ちと恐怖が湧いてくる。母を死なせてしまった悔い、父と兄の確執。それでもそこにあるのは絆と愛があった。