- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065207819
作品紹介・あらすじ
21世紀に入ってから、以前にもまして人類は、大地震、台風、集中豪雨などの自然災害に遭い、今また新しいウイルスとの共存という課題を目の前にしている。もちろん、日本も例外ではない。
ここに出現しようとしているのは、私たちが今まで意識することなく当たり前に存在することを前提にし、その中で生きていると思ってきた「世界」が根底から崩れ去ろうとしている状況ではないだろうか。その認識が示されているのが、2000年に提唱された地質時代の区分である「人新世」だろう。これは人類の著しい発展の末、地球規模の環境変化がもたらされる時代として定義される。そこでは、今まで当たり前だった世界は、まったく当たり前ではなくなる。
だが、そんな来たるべき時代にはどのような世界が出現するのか、そしてその世界の中で人間が「人間」であるための条件とは何か、そのとき私たちは何を拠り所にして生きていけばいいのか、といったことは、まだ問われ始めたばかりである。ドイツの哲学者マルクス・ガブリエル(1980年生)の名を知らしめた著作の表題になっている『なぜ世界は存在しないのか』という問いは、その一つの試みだと言うことができる。
本書は、ガブリエルのほか、近年日本語への翻訳が相次いでいる、カンタン・メイヤスー(1967年生)、ティモシー・モートン(1968年生)、グレアム・ハーマン(1968年生)といった1960年代生まれの哲学者たちを簡便に紹介しつつ、その思想を正面から検討し、日本の状況と照らし合わせる中で、これから先の世界と人間をめぐるさまざまな問いに答える方法を提示するものである。哲学・思想のみならず、建築や現代美術、演劇といった芸術の世界とも深くコミットしてきた著者が渾身の力を込めて書き上げた本書は、これまでの集大成であるとともに、「その先」に見える可能性を指し示すものにもなっている。
現代哲学の優れた概説書である本書が、同時に「予言の書」でもあることは、今後の時間の中で証明されることだろう。誠実に思索したいと思うすべての人に捧げる。
[本書の内容]
プロローグ
第1章 世界の終わり?
第2章 世界形成の原理──ガブリエルとメイヤスー
第3章 人間から解放された世界──ティモシー・モートン
第4章 「人間以後」の哲学──グレアム・ハーマン
第5章 人間の覚醒――柄谷行人
第6章 地下世界へ──フレッド・モーテン
第7章 新しい人間の条件──アーレントからチャクラバルティへ
エピローグ
感想・レビュー・書評
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新実在論は、人間の暴力や人為的な環境破壊を防ぐ倫理学となりうる。
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なかなか核心に踏み込まず周辺をウロウロしているな、と思ってるうちに終わってしまった。
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SFを楽しむ者にとって「人間が滅んだ後の地球」である
とか「人間が生まれる前の地球」を想像するのは別段難しく
もなく、よくあることと言ってもいいだろう。人新世の哲学
とはそれを「哲学」の問題として「実感」できるかどうかと
いうことなのではないだろうか。
感じるということ、開かれているということが重要な点で
あるような気がした。 -
人新世についての考察を、さまざまな思想家を手掛かりに自由に展開しようとした書物。たんなる感想の延長にすぎないところもなくはない。
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気候危機に直面したいま、言語を重要視する公共圏の概念を超えて、脱人間中心の世界を「探っている」。
解決のヒントは西田哲学にあるのでは、という示唆で終わってしまっている。情緒的を通り越して、あとがきは感傷的にすら感じた。
アーレントを始め、多くの思想家の言を多く引用しているが、解決の光明が見えなかったため、4つ星とした。