- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065214442
作品紹介・あらすじ
人間の不可解さを知りたいと思ったとき、私は「脳」研究を一生の仕事にすることに決めた――人気脳科学者が初めて明かす特異な半生。
感想・レビュー・書評
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ペルソナとは人格なり。
外的な側面とはべつに
内側に潜む自分も在る。
いわゆるキメラでない
人などいない。
暗いネガティブな面を
持っていることは人と
して自然である。
清く正しく明るくあれ
と言われたとて、
そうなれないのは当然。
その人の心の問題など
ではない。
それが自然なんですね。
やれ女らしく男らしく
日本人らしく・・・
「らしく」にどれだけ
囚われてしまってるか。
たしかにそうかもねと。
私とは、モザイク状の
多面体と表現する著者。
光の当てかたによって
さまざまな色に変化し、
見え方も形も変わって
いく。
本来の私は一体どんな
人間なのか?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
気が付いてみたら中野信子さんの本
これで15冊読み終えていました。
私は彼女のファンだったのですね!
そしてこの本では初めて、彼女自身のことが書かれています。
今までは謎の女性の書いたものとして、
愛読させていただいていました。
彼女も、私や多くの女性と同じように、
たくさん悩んだ人でした。
〈夜中に目が覚めてしまう。
原因のわからない不安と恐怖。
鬱かなあ、と理性的に判断する私をおしのけて、
どす黒いしみは広がっていき、
ついには私の全体を覆ってしまう〉
あんなに綺麗で才媛なのに。
いえ、綺麗で才媛だからこその辛さがあるのです。
今は、だからいろいろ乗り越えたのでしょうね。
彼女に近づいてくる人たち、
たとえば自称ファンとか、お酒を呑みに誘ってくる人とかに
はっきりと本音が言えるのも、
強くなったからなのでしょうね。 -
TVでよく見る中野先生のエッセイ。
とても頭のいい方なんだということがあふれ出ている文章で、ちょっと難しい感じもしました。
でも、全体的に怒っているし愚痴もあって、そういうところがなんだか私たちと一緒じゃん!と思えたりもします。
親子関係がやや難しかったのかな・・・?と感じさせる部分がありましたが、具体的な話はなかったのでもう少しその辺りを読みたかったなと思いました。(でもご両親が健在だと、きっと書きにくいですよね...。)
ちょうど中盤あたりの「溺れる人は静かに沈んでいく」「ネガティブ思考には独特の中毒性がある」というところは以降はとても面白く、一気読みしました。 -
〝私のペルソナ(他者に対峙する時に現れる自己の外敵側面)は、私がそう演じている役である、といったら言い過ぎだと感じられるだろうか? あなたが、私だと思っているものは、私ではない。一時的に、そういう側面を見て取ってもらっているだけのことである〟・・・人間関係が苦手だった私(中野信子)が、その原因を探ろうと、親との葛藤、少女時代の孤独、男社会の壁など、思考の遍歴を続けた脳科学者の自伝エッセイ。〝人付き合いを大事にしたい私と、連絡先を消す私は果たして同一人物なのか...人間は思っているほど一貫しているわけでもなく、一つの顔しかもっていないわけでもない〟〝過去に存在した無数の集積で、人間はできている。そのデータのどの部分に焦点を当てて語るのかは、当人の問題意識にかかっている。その問題意識とは、現在の自分の持っている問題意識である...己の闇を見つめることは、人間にとって、認知のワクチン、心のワクチンのようなものだ...人間は明るく希望に満ちているようにみえても、些細なきっかけで不意に深淵に飲み込まれ、死んでしまうことがある。どんなに健康に見える人でも、誰にでも起こり得ることだ・・・〟
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まず、「はじめに」を読んで…テーマというか題材というかが余りにもバラバラとたくさんある事に戸惑い、読み切れるかなぁと不安になったが、結局は最後まで一気読みする程面白かった。
TVなど見て中野信子さんを変わった人と(失礼ながら)思っていたが、何となく私自身にも同じような「変わった所」があったので、この本を読んで少し安心出来たのは良かった。なので読後、中野信子さんへの印象は良くなったように思う。
もしかしたら中野信子さんは幾つかの対象に向かってこの本を通じて物申しているんじゃないかな?という部分も多く、「いいぞ!言ってやれ、言ってやれ!」と、ちょっとした興奮も味わえたのも楽しかった。 -
メディアで大活躍の脳科学者の、初の自伝。
といっても、オーソドックスな自伝ではなく、いろんな要素が混在している。
彼女が著作でいつもやっているような、〝脳科学の知見をふまえて世相を論ずる時評〟的な部分もある。
一方、「ここは書き方をもう少しチューニングすれば純文学になりそうだな」と思わせる、私小説的な部分もある(そろそろ、中野さんには文芸誌から小説執筆のオファーがいっているのではないかな)。
内容があちこちに飛んで、とっちらかった印象の本ではある。
ただ、帯の惹句のとおり、これまでの著作では明かさなかった自らの「心の闇」を赤裸々に明かした一冊ではあり、面白く読めた。
〝ブラック中野信子〟全開という感じで、随所で毒を吐きまくり。
若き日に出会ったセクハラオヤジたちをディスり、著書も読まずに取材に来ては浅い記事を書く記者たちをディスり、科学者が一般向け啓蒙書を出しただけで堕落したかのように言いつのるアカデミアの人々をディスる。
母親との葛藤を明かし、子どものころからずっと感じてきた生きづらさを明かす。
また、「わかる人にはわかる」書き方で、「ここまで書いて大丈夫なのか?」という踏み込んだ記述をしている部分もある。
中野さんの数多い著作の中で、ひときわ異彩を放つ一書。
私には、これまで読んだ彼女の著作(全部読んでいるわけではないが)の中でいちばん面白かった。 -
興味深く読ませていただきました。脳の一貫性に疑問を呈している所もなるほどと納得。ブレないことが求められている世の中に怖さを感じていた私にとっては救いでした。自伝とありますが、幼少期から様々な思いを抱えてきたであろう中野さんは、非凡であるが故に周囲との間で感じてきた繊細な記憶が心に響きました。研究者の視点で書かれている表現自体にも惹きつけられました。
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「わたしのペルソナ(他者に対峙するときに現れる自己の外的側面)は、わたしがそう演じている役である、といったら言い過ぎだと感じられるだろうか?」(「はじめに」より)
脳科学者の著者が、自身の内面を、そしてこれまでの人生で感じてきた喜怒哀楽を時間を遡る形で記した。
多くの著書で、様々なテレビ番組で、脳科学の知見から、的確で鋭いコメントを穏やかに紡ぎ出す笑顔の奥底にあったものが、読みやすい言葉で語られている。
時代遅れの男性原理の象徴のアカデミズムでの奮闘。
テレビ番組での大きな気づき。
テレビは、トレーニングステーションだった。
脳における「正義」のトリック。
必要なのは「マイルドヤンキー」のコミュニケーション能力。
正確さを目指す日本人、アレンジを誇るフランス人。
「誰かほかの人を介するのではなく、本を介して直接、私の頭の中と皆さんの頭の中をつなぐことができればと思っている。これなら、本が存在し続ける限り、私と皆さんとはいつでも会えるのと同じことだ」
「一隅を照らす、という言葉がある。こうして書いている一文字一文字が、闇のような世界の中で、誰かの足元を照らすことができればいいなと思っている」
中国の文豪魯迅は語った。
「生きていく途中で、血の一滴一滴をたらして、他の人を育てるのは、自分が痩せ衰えるのが自覚されても、楽しいことである」
本書を読み通したときに、この言葉が頭を駆け巡った。
偉大な知性との対話。
苦闘する英知との語らい。
「学びに年齢は関係ない。いつでも思い立ったときに始めればいいのだ。勉強したいと思ったときが適齢期、だと私は思う」
そして、読書を通して学びを通して自分自身を見つめ直す。
他人なれどもかたらひぬれば命にも替るぞかし。
学びと対話こそ、闇のような世界を照らす光だ。 -
なんかすごいと思った。ものごとの真実、というより現実を的確に言ってる気がした。メンサ は承認欲求のために受けているひとがいるとか、テレビについて、言葉について、正義中毒、自殺、結婚のメリット、砂時計、どれもなるほどと思った。
84冊目読了。