京都四条 月岡サヨの小鍋茶屋

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 215
感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065215654

作品紹介・あらすじ

〈ドラマ化『鴨川食堂』の人気作家、初めての幕末時代小説〉
「いやもうとにかく面白い、そして何より旨そうだ! 幕末の京を舞台に偉人怪人相手に繰り広げられるサヨの絶品料理。さすがは京都の名物グルマン、調理の細部に至るまで描写と蘊蓄が完璧だ。料理人必読」【13年連続ミシュラン三ッ星獲得】日本料理かんだ・神田裕行氏推薦!

頃は幕末、清水寺にほど近い京都四条。「小鍋茶屋」は、近江草津出身の月岡サヨがひとりで切り盛りする料理屋。縁あって訪れる客とサヨが料理をとおして心を通わせる。サムライの江戸時代からハイカラな近代へと移ろう時代、つかの間の安らぎを得た志士たちはサヨに何を語るのか? 風情漂う京の街で、今夜も美味しい料理を求めて幕末人が集う。

感想・レビュー・書評

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  • 鴨川食堂同様、京都のイメージがっつりと、そして美味しそう(o^^o)
    現代の噺家さんが、古書店で古い料理本を手に取るところから始まります。
    お昼はおにぎり屋さん、夜は完全予約制の1組限りの貸し切りの料理屋さん。手軽な方にもコース料理にも対応できるサヨの料理の腕前は素晴らしい。
    時代が幕末の走りなので、バターとか豚肉とか、江戸人情グルメ系では出ることのあまりない食材も出てきます。さらに名前は伏せるけど、誰だかわかる幕末の偉人が次々と来店するのがワクワクする!
    おにぎりの具材とか、鍋の味付けとか、真似できそうなネタも出つつ、やっぱり京都だなと感じる鱧とか山椒の花とか品のある感じです。
    神様に愛された料理人という設定なので、どんどん登り詰めて女性料理人の中でも抜きんでた出世をするような感じかと思いましたがそうではなく、本人が無自覚のうちに、料理を通してお客様の決断を促す大事な言葉を投げ掛けてます。こういうところに神懸り的な要素があるのかな。。
    偉人さんは出てきますが、招かれた客としてのみで、サヨが巻き込まれてしまうことはなく、あくまで料理人として次々に美味しい料理を出す役割に徹底してるので、通してグルメ小説として読み切れます。
    ほっこりとは違いますが、じわっと染みるような料理の描写が食欲を促進する美味しい小説です。

  • 売れない噺家・桂飯朝(かつら はんちょう)がネタ探しのために回っていた古書店で『小鍋茶屋の大福帳』という、十冊ほどがひとくくりになった日記帳を見つけた。
    鍋茶屋を一人で切り盛りしている女の子の日記のようだが、これが大層面白い。

    飯朝がそれを小説に仕立てたという体で、合間のトークとして、ちょっとした解説やツッコミを入れてくるのが絶妙な合いの手になっている。
    仏像が動くという、突拍子もない設定だが、「妙見さん」が人間臭くてユニーク。

    月岡サヨは近江出身。
    昼は行列のできるおにぎり屋、夜は完全予約制で、客一組だけの茶屋を営む。
    料理は、実家の旅籠『月岡屋』の板場で習い覚えた。

    なんでも、自分の手と足と頭を動かして切り抜けていくサヨが、パワフルで爽快。
    迷惑客を撃退し、押し込み強盗に説教!
    お酒もくいくい行ける口。
    ・・・と書くとすごい女傑みたいだけれど、本当にかわいい二十歳そこそこの女の子なのだ。
    女傑は『菊屋旅館』の女将・中村フジだろう。
    サヨに店を出させてくれた恩人だ。
    なぜだか、幕末の有名人、あ〜んな人やこ〜んな人を、サヨの茶屋にお客として紹介してくる。

    その人たちは、誰もが知るような幕末の偉人たちを彷彿とさせるのだが、名前ははっきり書かれていない。
    サヨがお客様の名前を記していないのだ。
    また、幕末真っ盛りの京都が舞台だが、サヨは血なまぐさいことも書かない。
    もっと猛々しいかと思っていた男たちも、酒飲んでメシ食う時は普通の人、とは飯朝の感想。

    何かとサヨをライバル視してくる、老舗料亭『大村屋(おおむらや)』の長女・秀乃(ひでの)は、自身も女料理人。
    清壽庵の住職・宗和の息子の宗海も気になる存在。

    第一話 しゃも鍋
    第二話 鰻鍋
    第三話 黒豚鍋
    第四話 鱧鍋
    第五話 豆腐鍋

    お客たちはサヨとの会話から、何か思いついたり、決心したりして帰っていく。
    割れた器を金継ぎして使っているのを見て、くっつけることを考えたり。
    おにぎりが塩むすびと海苔巻きむすびが二つでひと組になっている理由を聞いて、そうあらねばと思ったり・・・
    長く生きられないと思うから大切な人と形見を交わしている、と涙ぐむ芸妓さんが色を添え、一捻りだった。
    飯朝さんのトークを読むまで、その人が分からなかった。

    そして、ここまでで一冊目の大福帳が終わったところ、ですって。
    シリーズ化の予告かもしれません。
    楽しみです。

  • 幕末の京都で女料理人サヨがひとりで切り盛りする小鍋茶屋。
    昼はおにぎりのみ、夜は1件だけの予約客。
    来る客は大概わかったけれど、歴史に詳しいと更に楽しめるのだろうな。
    長いシリーズになりそうな予感。
    次回作が楽しみ。
    [図書館·初読·1月4日読了]

  • 内容はともかく発想が面白い。一夜一組の客を迎えての女料理人の孤軍奮闘。しかも倒幕派や佐幕派らしき(あくまでも)客との会話。気分転換にはおすすめの作品。

  • 登場人物、皆んなが温かい。
    こちらも自然と前向きな気持ちに。

    料理にひたむきで、真面目で芯が通っていて、ちょっぴり酒好の主人公サヨ。
    そんなサヨを取り囲む温かいお客さんや世話人さん、妙見様、美味しい料理が沢山出てくるお噺。
    ほんわかとした優しい雰囲気の良いストーリー。

    時代ものでありながら、現代の語り部さんの解説もあるので読みやすいです。
    この本をきっかけに、どんどん時代小説にも手を出したくなりました。

    続編も出そうなので、今からとても楽しみにしています。

  • 小説現代2020年4月しゃも鍋、に書き下ろしの鰻鍋、黒豚鍋、鱧鍋、豆腐鍋を加えて、2020年11月講談社から刊行。5つの連作短編。サヨさんのお料理の出し方は、同じ作者の鴨川食堂と似てるなーと思いました。幕末の京都を舞台にして、歴史で活躍した人物たちをこっそりと登場させたり、京都妙見さん巡りを忍ばせたりのお話サービスが面白い。割烹形式のお店をデザインしたサヨさんの次の展開が気にかかります。

  • 女料理人サヨが、昼はおにぎり屋、夜は1組限定の料理屋を営み、料理人として成長していく姿を描く。人の縁にも、また妙見菩薩との縁にも恵まれたサヨは、菩薩様に導かれてお客様に喜んでもらえる料理を、鍋料理として披露する。幕末期の、志士達も登場する、ちょっと不思議な、でも気持ちのいいお話ばかり。続編も出そうな感じで、楽しみ。

  • 頃は幕末、京都四条にある「小鍋茶屋」は、
    近江草津出身の月岡サヨがひとりで切り盛り
    する料理屋。縁あって訪れる客とサヨが料理を
    とおして心を通わせる。風情漂う京の街で、
    今夜も美味しい料理を求めて幕末人が集い…。

  • 本書は、とにかくサヨの柔らかさとそこに秘めたる芯の強さのような京都弁が印象的だった。
    サヨは強い女性だと物語からは読み取れるが、料理のことや人の情けが絡むとよく涙をするところから、人一倍感情が豊かな側面もあって魅力的だった。
    男二人が金をもらいに押しかけに来た場面は、ただただかっこよかった。


    時は幕末で、あまり激しい雰囲気はないものの、それこそ各々の方言や我々の知る歴史上の人物の存在、彼らの会話によって、一見のほほんとした生活を送るサヨも、当時騒がれていた尊皇攘夷やら公武合体やら幕末の危機迫る状況と隣り合わせで生きていたのだと感じられた。

  • 先にこのシリーズの2冊目を読んだので
    第1話を借りた
    面白く読んだ
    料理の奥深さと、工夫の大切さ
    人を大事にすること
    日常をきちんと生きること
    本当にそう
    みんなつながっている
    また美味しい料理を食べたくなった

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著者プロフィール



「2023年 『歩いて愉しむ京都の名所』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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