風神雷神 (下) (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065221877

作品紹介・あらすじ

絵画界に革命を起こした「風神雷神図屏風」。爛熟した時代、天才たちとの出会い、天皇直々の評価
――そのすべてが、扇屋の絵師を鬼才・俵屋宗達にした。

万能の天才・本阿弥光悦からの鷹峯移住を断り、京で「俵屋」を継いだ宗達は、堺の商家の娘・みつを娶り、二人の子を生した。
都で一番の扇屋の主人として忙しく働いていたある日、名門公卿の烏丸光広が前触れもなく俵屋を訊ねてくる。烏丸光弘の手引きで養源院に唐獅子図・白象図を、相国寺に蔦の細道図屏風を完成させる。
後水尾天皇から法橋の位を与えられ、禁中に立ち入れるようになった宗達は、さらなる名品を模写する機会を得、その筆をますます研ぎ澄ませる。

日本の絵画に革命を起こした関屋澪標図屏風、舞楽図屏風、そして風神雷神図屏風
――世界が憧れた謎の絵師はいかにして生まれ、没したのか。
美術界きっての謎が斬新かつ丹念に描かれる。

感想・レビュー・書評

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  • 下巻から、絵師として成熟期を迎えた俵屋宗達の活躍が描かれます。芸術という分野から、慶長、元和、寛永という時代を覗き見ることができとても面白かったです。作中で、現代も名高い「松島図」「舞楽図」「養源院杉戸図」などが次々登場します。水墨画など違った方面からも貪欲に技法を取り入れる一方で、平安の王朝文化からの技も融合させる。形は違えど創造の手法は現代においても変わることがないと思いました。また、古今に伝わる秘蔵の絵を次々と模写し取り入れていく描写が多々出てきます。ものすごい量の情報が下地になって優れた作品が生まれるのも理にかなっていると思いました。絵の天才であるがゆえに「過集中」などの特性があったこと(あるいはサヴァン症候群のような)も十分にあり得ることだろうと思いました。謎多き俵屋宗達を様々な史実や人物群像の中から描ききっていて、小説として見ごたえがありました。

  • 商売に精を出す伊年の元に、教養高く型破りな公卿、烏丸光広が現れ、再建途上にある東山・養源院の内装画を依頼してきた。同院の杉戸に唐獅子・白象図を見事完成させた俵屋宗達は、烏丸光広によって再び "美の最前線" へと引っ張り出されることとなった。

    そして、「松島図屏風」、「関屋澪標図屏風」、「舞楽図屏風」などの傑作を次々と生み出し、「風神雷神図屏風」を完成させた宗達は、仕事をやりきったかのように突然息を引き取った。

    著者は、俵屋宗達という絵の天才を、本阿弥光悦、烏丸光広という二人の当代きっての文化人との交わりを中心に描いている。

    「最初は、本阿弥光悦という "巨人" の肩に乗り、その後は烏丸光広――重力を離れ、自由に飛び回る翼をもった "妖精" のような男に手を引かれて、宗達はいまこの場所に立っている。」「宗達は、本阿弥光悦・烏丸光広という特異な審美眼の持ち主二人とかかわることで、時空にとらわれない鑑賞者をイメージできた」

    風神雷神図屏風は、型破りな作品だったんだなあ。知らなかった。「屏風は本来、見て字のとおり「風屏ぎ」の品である。…その屏風面に、よりにもよって風神や雷神を描いて欲しいなどという途方もない逆説を、いったいどこの誰が思いつくというのか?」

    「源氏物語」を「ハーレクインロマンス扱い」したり、醍醐寺門跡覚定の気持ちを「グラビア写真集を部屋で眺めている感じ」と表現したり、と著者の現代風な語り口もなかなか面白かった。

  • 歴史ものですが、とても読みやすかったし、面白かったです。下巻は伊年ではなく、大人になった宗達の話。
    宗達は確かに才能あふれる素晴らしい絵描きですが、それを真に理解するには「広汎な趣味と優れた感性、既成の価値観にとらわれない自由な知性をもった教養人の目を必要とした。」そんな人材である光悦、光広という存在は大きかったし、彼らがいたからこその宗達だったのではないかと思います。

  • 上巻に続いて、週末に下巻も一気読み。
    下巻も面白かったです。

    ※風神雷神 (上)
    https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4065221862#comment

    主人公の宗達がお客からの依頼を次々にこなしながら、
    自分を成長させていくストーリー展開が自分好みでした。
    さらに、小ネタ的に所々にある歴史話もまたよし。

    作品をネットなどで鑑賞しながら小説を読むと、
    さらに楽しめそうです。満足。

  • 本当にこんな経緯で風神雷神図が残されていたのなら理想的だな、と思ってしまうほど、風神雷神図から受ける印象と物語の読後感がしっくりして気持ちよかった!!

  • すみません、柳広司さんという素晴らしい作家を存じ上げませんでした。猛反省中です。
    上下読み終わり、慌てて俵屋宗達の美術書を見返しています。素晴らしい美術の、歴史と時代の勉強になりました
    柳さんの感覚も大好きになりそうです。
    風神雷神図屏風を初めて見たときに私はもう、愉快で愉快で屏風の前で30分くらい笑ってしまっていて周りの方にご迷惑をおかけしたことを思い出してしまいました。
    琳派、素敵なのですが意外と理解するのがむつかしく、自分自身の教養のなさを痛感しつつ、でも、惹かれます。俵屋宗達、すごい!

  • 伊年から對青軒、法橋へ。
    宗達がどんどん人ならざる境地に踏み込んでいくにつれ、よりボルテージが上がるかと思いきや。

    カメラはぐんと引いて、徳川幕府と公家の勢力図をじっくり追ってみたり。
    それが阿国の目を伴って海外に飛んだり、光悦の目を伴って鷹峯の地に飛んだりと、不思議と宗達の内に内に潜ってはいかない。

    その流れが「風神雷神」をタイトルに冠したことに相応しいのか否かは、ちょっと分からない。

    けれど、人が神に変わってしまう物語としては、この俯瞰図を含めていて良かったように思う。
    時に、神の成した業よりも、神と呼ぶべき存在そのものに価値を見いだしてしまう。

    それは芸術家にとって、どのような思いをするものなんだろうか。

  • フィクションとノンフィクションを混ぜているが、読者は面白ければ満足する。
    特に最後の女性三人の思いはフィクションであっても、その様に納得するし小気味良い感じだ。
    小説に出てくる屏風図をグーグルで調べながら、成る程と感心しながら楽しく読めた。
    このやり方はお勧めする。

  • 俵屋宗達という天才絵師を、天才絵師たらしめた重要人物、本阿弥光悦と烏丸光広。この2人がいなければ本当にその才能が開花し偉大な作品が現在まで残るという事がなかったのでしょう、と思うと大いに感服、感動して読了。
    幼馴染の豪商や紙屋の子息や、宗達の妻や女性たちの存在も良いですね。
    醍醐寺の花見で始まり花見で終わる、と言うのも鮮やかな京の情景の中、一つの時代が終わっていくという展開も、歴史が作られ後世に繋がっていくという事が感じられました。

  • 上巻と同じ感想。

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著者プロフィール

一九六七年生まれ。二〇〇一年『贋作『坊っちゃん』殺人事件』で第十二回朝日新人文学賞受賞。〇八年に刊行した『ジョーカー・ゲーム』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞。他の著書に『象は忘れない』『風神雷神』『二度読んだ本を三度読む』『太平洋食堂』『アンブレイカブル』などがある。

「2022年 『はじまりの島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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