中国の歴史8 疾駆する草原の征服者 遼 西夏 金 元 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065223109

作品紹介・あらすじ

「中国の歴史・全12巻」の学術文庫版、第5回配本の第8巻は、中原の「中華王朝」を脅かし続けた北方遊牧民の興亡史。
8世紀半ば、唐王朝を揺るがした「安史の乱」は、600年におよぶ大変動の序奏だった。耶律阿保機のキタイ、李存勗ひきいる沙陀、李元昊の西夏、完顔阿骨打の金。多極化と流動化のはてに、歴史の統合者たる大モンゴル国が浮上する。13世紀に世界史を大きく転回させた「大モンゴルの時代」は、突然訪れたわけではなかった。
10世紀初頭、耶律阿保機が建国した「キタイ帝国」すなわち大契丹国は中華風には「遼」と呼ばれる。現在の中国東北部から東モンゴルを領域とし、北宋を圧迫したが、1125年、金により滅亡する。その後、耶律大石が中央アジアに建国した「第二次キタイ帝国」は、「西遼」「カラ・キタイ」と呼ばれる。タングト族の李元昊が1038年に建国した大夏は、中華からは西夏と呼ばれ、1227年、モンゴルにより滅ぶ。ジュシェン族(女真族)の完顔阿骨打が建国し、北宋を滅ぼした金も、1234年、モンゴルにより滅ぼされる。
そして、チンギス・カンに始まる大モンゴル国は、5代皇帝・クビライの時代にユーラシアの海陸を覆う世界帝国となった。この超域帝国の宗主国を、中華風には「元」と呼ぶ。グローバル化の扉を開き、現代へと続く巨大帝国誕生のドラマ。〔原本:2005年10月、講談社刊〕

感想・レビュー・書評

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  • 2021/5/5読了
    元朝は正確には「大元ウルス」というのは出口治明『全世界史』で教えて貰った。遊牧民族国家が絡むことで、中国史はユーラシア史と言っても良いくらいのスケール拡大を見る。版図の拡大の他に、元の都である大都が今の北京になっていくのだから、現在の中国があるのは、モンゴルのお陰である、とも言えるのではないか?

  • 中国の北に長期間繁栄し、強大を誇ったというキタイ帝国という言葉は学校時代の世界史では学んだことが無かった用語。そしてその始祖・耶律阿保機(916年に帝権確立)という英雄も初耳。キタイは後年、中華風の国名「遼」を名乗ったという。遼、金、西夏などの国々は中国史の地図の中で北に描かれているが謎の国だった。キタイと北宋、そして沙陀の李克用・李存勗親子の三国者迭立なども知らなかった世界。いかに中華王朝を中心とした歴史しか視野に入っていなかったかを痛感させられた。キタイは金、西夏を滅ぼし、その政治的遺産がモンゴルに受け継がれていくという。モンゴルの世界席捲という覇業はモンゴル系であったキタイの継承であり、そのモンゴル帝国の伝統が、胡元と卑しめた明帝国、そして今に至るまでロシア「帝国」に引き継がれている?という示唆。著者は大胆な主張をこの本の中でいくつも述べている。
    そして面白いのは日本の平将門がキタイ耶律阿保機が渤海を滅ぼし帝位に就いたことを「新皇」を名乗った際に書いていること。そして遣遼使が来貢したと遼史に記載があるとのこと。当時の東アジアの情勢も面白い。

  •  書き方が難しすぎる。著者が大学教授なのはわかるが、読者は一般人であることを意識していない。全部で400ページなのだが、300ページ以上はタキイ国(遼国)のことが書いてある。たぶん著者の専門は遼なのだろうが、題名である「疾駆する草原の支配者」といえばモンゴル帝国の事を期待する。

     せっかくの中国の歴史なのに中国史上最大の領土で、世界史に最も大きな影響を与えたモンゴル帝国の扱いが少ないのは疑問。さまざまなドラマがあったはずなのに…

     文章も読み辛い、いろんな事を言いたいのはわかるけれども、読者のことを考えていない。12巻の中で最低の本だった。

  • 遼による南北共存の成立までで半分以上を占める。特に耶律阿保機の時代が詳しく、あまり知識が無い領域だったため新鮮だった。宋朝を扱った前巻の別面としても面白い。

  • 著者特有のアクの強さがにじみ出ている。「中国の歴史」と銘打つからには、ある程度概説書としてのスタンスが求められるが、史料批判は当然良いとしても、好悪や色眼鏡が入り込み過ぎている為、かえって本書への信頼性を損なっている。また副題に対しても、キタイに関しての詳述が多く、構成にもバランスを欠く印象。中華史観へのアンチテーゼを強調するあまり、公平性を欠く結果を生んでいるのは明白で、編集者の責任も問われる内容。著者は別シリーズ「興亡の世界史」の同時代も担当しているが、それほど専門家の人材不足なのだろうか。一点、当時外国人によってはキタイ=中国(という言葉は適切ではないとしても)の認識があり、キタイの存在が中国史の一要素なのは確かで、それを知るには適切な一冊かもしれない。ただし別企画で執筆されるべきではあったと思う。

  •  書名と表紙から手に取った。副題に「遼 西夏 金 元」とある。
     「唐」が終わり「元」を経て「明」が起こるまでの500年余の現在の中国国土に起こった複雑な国家群の解説だ。多様な民族が国を形成し、また多民族により国が形成されていた様子が詳細に語られている。特にキタイ帝国(契丹国)について多く語られている。
     モンゴル帝国の第5代の帝位に就いたクビライが「大都」として造営したのが今の北京であるという。また、陸・海の交易も確立したとのこと。他書でこの辺の歴史をもう少し詳しく学んでみようと思う。

  • 表紙はチンギスハンですが、内容はキタイ帝国が主。従来の中国史では、宋の記述が多く、それは日本人の文化受容過程で刷り込まれたものだという主張。

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著者プロフィール

京都大学大学院文学研究科教授
1952年 静岡県生まれ。
1979年 京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学、
    京都大学人文科学研究所助手。
1992年 京都女子大学専任講師を経て同助教授。
1996年 京都大学文学部助教授・同教授を経て現職。
主な著訳書
『大モンゴルの世界――陸と海の巨大帝国』(角川書店、1992年)
『クビライの挑戦――モンゴル海上帝国への道』(朝日新聞社、1995年)
『モンゴル帝国の興亡』上・下(講談社、1996年)
『遊牧民から見た世界史――民族も国境もこえて』(日本経済新聞社、1997年、日経ビジネス人文庫、2003年)など。

「2004年 『モンゴル帝国と大元ウルス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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