- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065227091
作品紹介・あらすじ
戦争は戦場だけではない。米大統領選、ウクライナ危機、各国へのサイバー攻撃--。民間軍事会社、サイバー部隊など新しい戦争の実態
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
「ハイブリッド」というのは「異質なモノが交じり合って成立している」という程の意味で、現在では広く用いられている表現になるように思う。それが付せられた「ハイブリッド戦争」ということになれば「??」という感だ…
「ハイブリッド戦争」というのは、正規軍による活動、非正規な武装勢力による活動、所謂“情報戦”ということになる情報操作等のあらゆる活動、陣営に有利になり得る勢力が権力に近付くことが叶うような、所謂“情報工作”というようなこと等、様々な要素を織り交ぜて「自身の陣営が有利になるようにあらゆる要素を適宜組合わせて展開する活動」という事柄の総称ということであるらしい。本書によれば、ロシアは21世紀に入ってから、場合によってはその以前から、利用可能なあらゆる資源を使って、そうした「自身の陣営が有利になるようにあらゆる要素を適宜組合わせて展開する活動」に努力していて、それを<ハイブリッド戦争>と呼ぶようになっているということであるようなのだ。
“戦争”とでも言えば、軍艦が列になって航行する様、軍用機の編隊が上空に飛び交う様、物々しい車輛の一群が街や原野を行き交う様を想うが、実はそれは「末端の事象」で、陸海空軍の兵器が動くに至るまでの「余りにも多彩な様々な事柄」というようなモノが存在する。そういう意味では、“戦争”というモノは何時の間にか「様々な要素が組み合わさる」という意味では「かなり以前から“ハイブリッド”」なのかもしれないと思っている。自身の中にそうした問題意識も在るのだが、それはそれとして、本書をなかなかに興味深く拝読した。
近年、ロシアでは「自身の陣営が有利になるようにあらゆる要素を適宜組合わせて展開する活動」に努力が執拗なまでに重ねられているのだという。それを本書の著者自身を含む論者が<ハイブリッド戦争>と呼んでいるということになる。
そういう<ハイブリッド戦争>というような展開の中に世界の様々な地域が関わるのだが、実は日本もその関りと無関係でも居られないのである。
色々な意味で「広く読まれるべき研究」というように思った。そういうことで広く薦めたい一冊だ… -
執拗なサイバー攻撃、SNSを利用したプロパガンダ、暗躍する民間軍事会社 —— 。世界を脅かすプーチン流「現代戦」の全貌に迫る。
第1章 ロシアのハイブリッド戦争とは
第2章 ロシアのサイバー攻撃と情報戦・宣伝戦
第3章 ロシア外交のバックボーン―地政学
第4章 重点領域―北極圏・中南米・中東・アジア
第5章 ハイブリッド戦争の最前線・アフリカをめぐって -
プーチン以後のロシアの外交戦略を調べると、国力の不足する中でハイブリッド戦争の手法を編み出してきたことがわかる、そのキーワードはサイバー戦・PMC・政治技術(世論誘導攪乱)である、と言うあたりが著者の主張で、流れや事例を鳥瞰しているところに価値があると思う。
概観なのでここの事例については踏み込む紙幅がなかったようだ。
世界情勢やサイバー戦に興味のある方にお勧めする。
-
明確に定義付けされていないハイブリッド戦争、特にロシアのそれについて、実例豊富にわかりやすくまとめている。
正規戦・非正規戦の境を越え、ありとあらゆる手段を用いて政治的目的を達成しようとするハイブリッド戦争。ジョージアとの戦争で実績を積み、ウクライナで花開かせたと言われる。そしてシリアへこ介入もハイブリッド戦争の一環であり、かなりの部分がPMCに担われている。現代のロシアの戦争目的は領土拡大自体ではなく敵対的な同盟の弱体化、自身の同盟の拡充である。面白いのはロシア自体は自身の戦略をハイブリッド戦争と呼びたがらず、むしろ西側諸国からハイブリッド戦争を仕掛けられていると考えていること。ハイブリッド戦争にはprobing、探りとしての手段という側面がある。
コサックの由来やPMCが持つ魅力、ソフトパワーの悪質版であるシャープパワー、サイバー戦とタリン事件、北極圏や南米、アフリカ等での地域ごとのロシアの活動、についてもまとまっていてわかりやすい。 -
ロシアが実施しているハイブリッド戦争や現代ロシアの地政学を解説した本。『コーカサスの十字路』を著した廣瀬先生の新作だったので早速読んでみた。この前に古川氏の『破壊戦』を読んでいたので、内容はすっと頭に入ってきた。第3章の『ロシアの地政学』は、『新しい地政学』のロシアの章とほぼ同じ内容であったものの、新書で手軽に読めるのは大変助かった。
第4章以降は、ロシアが近年重要地域とみなしている北極、中南米、アフリカについてであった。特にアフリカは、近年ロシアの「ハイブリッド戦争展開の最前線」と位置付けられており、ロシアの「安全保障の輸出」戦略、はたまた他地域に対する「ハイブリッド戦争」の展開に利用されているという点は、非常に参考になった。
一読だけでは理解しきれない重厚な内容なので、折を見て再読したい。 -
ロシアのハイブリッド戦争について、純軍事面というよりその背後の外交や戦略も含めて扱っており、それだけに読みやすい。
前半はいわゆるハイブリッド戦争について。ウクライナ危機への介入、PMC、全容が掴みにくいサイバーのAPT攻撃、情報戦・宣伝戦。2020年米大統領選に対しては静かだったと思っていたが、ファイア・アイ社への攻撃に始まり、また米政府機関への米国史上最悪の被害という機密窃取にロシア当局の関与が濃厚とされているという。
後半は地政学と重点地域。プーチン政権の戦略はロシアの勢力圏(一義的にはバルト三国を除く旧ソ連諸国、次いで旧共産圏と北極圏)の維持。北極圏は天然資源と航路の両面から重要。アフリカに対しては、武器輸出、それ以外の軍事支援という「安全保障の輸出」、それに非軍事的な情報操作などの総合的な組み合わせ。
なお、中国に対しては全般的に警戒と協力が併存するという感じだ。また著者はインドについて、露中米日の四大国を手玉に取るバランス外交と同時に、それでもインド外交のベクトルはロシアに向いているように見える、と指摘しているが、これは気になるところだ。 -
新書のお手本のような本だった
スパイ映画みたいでおもしろい! -
2022/03/29 amazon 886