虚構推理(16) (講談社コミックス月刊マガジン)

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  • Amazon.co.jp ・マンガ (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065250372

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  • 妖が事件を目撃せず、犯人の独り言も拾えていない為にいつものように調査を始める段階で真相を知る形が取れなかった今回の事件。真相究明の鍵は唯一生き残った丘町、そして現場に居合わせた六花の内心にこそ有った。それにより真相究明を難しくなっただけに、六花が全ての真相を明かした瞬間から始まるどんでん返しにはかなり驚かされたよ

    真相に至る手掛かりは関係者の心の内にしか無い。だから物証を手掛かりにそれを探っていくしか無いのだけど、そういった方法であるためにどうしたって誤認が生じやすい。今回の事件では初期段階で決めつけた誤認が最後まで琴子たちを縛り付けていたように思える
    六花や九郎は瓶詰めの手記により丘町の考えを読み違えた。琴子は最後の瞬間まで六花の企みに気づかなかった

    手記による勘違いは事件の真相を推理する上では真っ当な勘違い。それ自体は致命傷を負うものではないし、ああいった勘違いが有るからこそミステリは面白くなる。そう思えるものだね
    でも、琴子がしていた勘違いは致命傷となりうるもの。六花を鋼人七瀬事件の黒幕として認識し、その後も何かしらやってきていたという認識が有ったからこそ、今回の事件においても何か仕掛けてくると決めつけていた
    だから琴子はキリンの亡霊が表沙汰にならないよう、そして六花が仕掛ける余地が全く生じないように完璧に立ち回った。それが裏目に出てしまった

    丘町への処遇。これは『スリーピン・グマーダー』解決の際にも見えた傾向と同じものだね
    音無会長が妖の力を頼った事を後悔させる為に掘り起こす必要のない殺人を琴子は眠りから覚ました。今回も現実の亡霊に襲われた者達の問題を幻想の亡霊に襲われたという形にし、更には最後の関係者を死に誘った
    琴子は妖達の秩序の神として最も正しい選択をした

    あまりにも正しいから、そこには罠が待ち構える。琴子は妖の味方になったとしても人の味方になることはない。なら、半端に混ざりあった九郎と六花に対してはどうなるのか?そこをこそ、六花は鋭く突いたわけだね。
    六花が語る琴子への追求はじっくりと毒の効き目が現れていくような代物。最初は琴子が秩序の番人として秩序を最も重視しているという点の念を押している。その上で自分達は許容されない存在であるから琴子は私達を排除しなければならない。その時、果たしてどう思うのか
    それらをじっくりと琴子に突き付けていったわけだ
    琴子は何も間違えない。間違えないが為にいずれ至る正しい未来も想定できる。秩序を保つ機構であれば恐れるもののない未来。けれど岩永琴子が岩永琴子である限り、恐れを感じてしまう未来
    そこにこそ秩序の神・岩永琴子の敗北がある


    まさかこういう展開になろうとは……
    琴子に負け続けていたかのような六花が仕掛けた必中の罠。秩序の神が秩序を破るかもしれない可能性。今回の敗北は琴子をいずれ破滅させるものになるのか、それとも九郎を失う破滅から救うものになるのか?果たしてどちらの意味を持ってくるのだろう

    それにしても、この段に来てもぽや~とした顔を崩さない九郎は一体何を考えているんだ?六花が語る未来の光景を全く想像していなかったわけではないだろうし、その上で琴子の傍に居続けようと考えているのだろうか?いずれ小説版も読まねば…

  • 宿敵・六花との直接対決を描く「岩永琴子の逆襲と敗北」決着!キリンの亡霊によって崖から転落した男4人。発見された長塚による犯罪告白の手記と生存者・丘町の存在。あの晩に仕掛けられた本当の罠とは?!

    転落死にまつわる虚構の推理と、キリンの祟りを制するためのアクションという静と動で魅せる。真相に近づくほどに祟りよりもドス黒く滲み出てくる人の本性に恐怖する。祟りがなければつらい状態とは、実は琴子と九郎の関係性にも言えるのだろうか。九郎がどこまで覚悟して琴子と居るのか気になるところ。

    六花が事件に隠していた狙い。秩序のために正しい道を選ぶ知恵の神・琴子。その意志を信じているからこそ、その罠は琴子の足を強力に絡め取る。世界の秩序か、己の正義か。ここまでの物語をすべて伏線にして、人間性を巧みに揺さぶる六花。自分たちのために作り上げる真実を超える虚構の行方やいかに。

    ひとまず物語の山場はひと段落ということで、これからどんな風に事件が描かれていくのか気になるところ。そして、三人の運命の果てには何が待っているのか。

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著者プロフィール

【片瀬茶柴(かたせ・ちゃしば)】
本作にてデビュー。

「2021年 『虚構推理(15)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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