- Amazon.co.jp ・マンガ (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065251317
作品紹介・あらすじ
同じ高校、同じクラス、家が隣同士の男女、純とかおる。幼馴染みの2人には、あるヒミツがあった。深夜0時になると毎日、2人の性別が入れ替わるのだ──。純が男の日は、かおるは女、純が女の日は、かおるは男。一組で二度かわいい! 男女入れ替わり青春ラブコメ!
深夜0時になると性別が入れ替わる、純とかおる。家が隣同士、幼なじみの2人にも夏休みはやってくる。 「どっか行こうよ」 どこかソワソワ、ワクワクさせる夏の匂いに誘われ、純とかおるは2人で遊びに出掛けるが――。男女入れ替わり青春ラブコメ完結巻!!
感想・レビュー・書評
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沈黙は物語った、夏も終わった。だから物語は仕舞われる。
二駅ずい先生の体調不良による休載もあって、おおよそ二年と半を挟んでの完結巻です。語弊ある言い方なので先に断っておきますが、残念に思いながらもネガティブな意味でない納得感の方が先立ちました。
なぜならば、いくらでも続けられそうに思えた夏を終わらせたという一点に尽きます。夏は、六月を舞台に始まった、純とかおる、ふたりの物語をいったん閉じるに申し分ない理由になりうるからです。
同時になにか都合や機があれば、物語を再開できるかもしれないというささやかな希望を残すように思え、寂しさとともに嬉しさを運んでくれました。ゆえに微笑みながら最後の頁を閉じることができます。
ふんわりとした余韻を残すことが結末として機能しているために、実際どうであれ心に染み入る読後感として、とてもとても好きです。さしずめ、この読後感を喩えるとするならこれで終わってもいいな、どうにでもな~れ、っと青天の青空を見上げて四肢を投げ出したくなるような気持ちを与えてくれたのかも。
青春って、「春」と付くくせして夏も似合ってしまう人生の時節なのが悪い。古代中国人ってズルい。
さて、あらすじを私の口から語ろうにも、裏表紙にも載っている八行だけで大体理解できようものです。
ことさらに起こったイベントを連ねるのもなんか違う。よってふわっとした感想を述べて終いとします。
こればかりは実際の漫画を見てあなたご自身の目で、心で感じ取っていただくのが一番の近道です。
いくら言葉を並べ立てても、この漫画特有の空気感を実物を抜きで言い表すことは不可能でしょうから。
時に、前の一巻のレビューでこの作品はシチュエーション重視と私は書きました。
ひるがえってここ二巻はどちらかと言えば、沈黙から生まれる余韻重視と言えるのかもしれません。この辺は、ほかの方々も触れておられるのでおそらく本作について多くの読者が感じ取れるポイントかと。
すなわち、純とかおる。タイトルを占める主人公ふたりは、気負わずとも気心の知れ合った同士、阿吽の呼吸というべきか。ここぞといわんばかりのタイミングでは必要な言葉があまり出てこないのです。
なんでしたら、息遣いだけで話を作れそうな、言わんとすべきところが見えてくるかもしれません。
時々、なにかをごまかすかのように雄弁となるタイミングもあったりしますが、それもまたどこかほろ苦い青春の味なのでしょうか?
そうとは気取らせずに、劇的なイベントなしにくっついてしまうふたりの関係性を揺るがせはせず。
ちなみに最終話一歩手前のタイミングで、ふたりは一線を越えたらしいと裏話で作者は述べられています。確かに言われてみれば納得はできました。
けれども、どこまでも自然体で特別感があり過ぎない、腐れ縁幼馴染の関係描画が見事です。
他方。ほんの少しばかり、ふたりの関係に割り込めるでなく触れ合う共通の友人はいます。第三者としてふたりの関係を見つめるクラスメートのぽつりとした一言モノローグもあります。
連載継続も見越してか、世界を広げる試みはきっちりとされています。けれど、今はこれで十分ですといわんばかりに、夏は終わりました。ふたりの間で完結する表情がすべてを物語ってもくれていました。
私がはじめこの作品を手に取った理由である、性別のゆらぎを軸に据えた作品であることは確かです。
けれどそれは、相手と同じ性になることはできる、だけどそれは同じ時を過ごすことを意味しない――、という特殊なシチュエーションがもたらした独自の距離感へ感じる心地よさだったりもしました。
最後の方に、性別が同じだったら……? なるエピソードが示唆的に置かれていることからもわかりますが、いい意味でこの作品の特性を作者は理解されていますね。感服です。そちらの観点に立っても「TS(性転換)」ジャンルの限界を早二巻にして突破してくださったこと、それは確かでしょう。
ただ、それだけに留まらずふたりが対になっている理由をなんとなくな実感で読者にも届け、性別が違うという理由を代わる代わる分かち合えるからこそ同じ時間を共有できた、そんな和やかな感動をくれた。
それと、一瞬にみえる素敵な時間がゆんわりと流れるよう引き伸ばして見せてくれた感謝もきっと大きい。この辺りは、漫画というメディアとしての妙を感じるなどしました。ほかではきっと難しい。
あとは――。最後に言っておくと。しばしコメントに困るシュールな絵がリアルな街並みや絶景な風景にぽけっと投げ込まれ、織り交ざるのはたぶん二駅先生の味だとは思うのです。
ですが、これもふっと気を抜き、ふたり取り巻く環境を流し見て、ぐっとふたりそのものに注目を集めるためと考えれば、そういった緊張感のゆるみもいとおしいと思う限りなのでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示