遊廓と日本人 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065260951

作品紹介・あらすじ

人権無視の悲哀の場か、日本文化の聖域か。
「日本史の陰影(タブー)」を再考する。

江戸学の第一人者による「遊廓入門」の決定版!

遊廓は二度とこの世に出現すべきではなく、
造ることができない場所であり制度です。

一方で遊女が、高い教養をもち、輸入香木を焚いてとても良い香りを放ち、和歌を作り、三味線を弾き、生花や抹茶の作法を知っており、一般社会よりもはるかに年中行事をしっかり行い、日本文化を守り継承してきた存在でもあったことを忘れてはなりません。


【本書の内容】

・遊郭は「辺境の別世」「身分のない世界」
・「不夜城」と呼ばれた吉原遊廓
・「色好み」という日本文化の伝統
・井原西鶴が描いた「床上手」な遊女たち
・恋を創るために読まれた「色道」
・江戸の「いい男」「いい女」の条件とは
・遊女を世に知らしめた「洒落本」と「浮世絵」
・遊女の人権が問われた「マリア・ルス号事件」
・吉原遊廓の凋落と消えゆく江戸文化  ……ほか

感想・レビュー・書評

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  • あの人気アニメの舞台はどんなところ? 意外と知らない「遊郭」の実態に迫る:時事ドットコム
    https://www.jiji.com/jc/v4?id=yukaku202112220001

    「遊廓と日本人」田中優子氏|日刊ゲンダイDIGITAL
    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/297528

    明治政府が「遊女たちの解放命令」を出すキッカケになった「大事件」をご存知ですか?(田中 優子) | 現代ビジネス | 講談社
    https://gendai.ismedia.jp/articles/-/88705

    『遊廓と日本人』(田中 優子):講談社現代新書|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000358371

  • 鬼滅の刃の放送でも「子供に説明できない」と、疎まれる遊郭。炭治郎のいる大正時代ならそうかもしれない。でも江戸時代には、文化人がこぞって足を運ぶ、格式高い社交場があったという。光と闇が混ざり合う、白黒つけられない存在で、いいじゃないか。

    ※※※※※
    ■ Before(本の選定理由)
    遊郭が江戸の文化発展に寄与したって?
    何故そんなことを言えるのか、気になった。

    ■ 気づき
    遊郭は、歌の文化、もてなしの文化、文芸にも影響を及ぼした。トップ層だけの話だが、そんな時代もあった。食事が芸術を言えるのと同様、欲求を昇華した匣が、遊郭という存在だったと思う。

    ■ Todo
    印象だけで毛嫌いしない。でも制度上の闇もあるので賞賛しない。白黒つけない。

  • ジェンダーから見た遊郭の問題がある一方で、遊郭は日本文化の集積地だった。遊女の能力や人柄は、和歌や文章や筆など平安時代の文学に関わること、琴や舞など音曲や芸能にかかわること、中世の能や茶の湯や生け花、漢詩、俳諧など武家の教養にかかわること、着物や伽羅や立ち居振る舞いなど生活にかかわることなど、ほとんどが日本文化の真髄に関係している。そしてこれらの、特に和歌や琴や舞などの風流、風雅を好む人を平安時代以来、「色好み」と呼んでいた。「色」には恋愛や性愛の意味もあるが、もともとは恋愛と文化的美意識が組み合わさったもので、その表現としての和歌や琴の音曲を含むものだった。遊女が貴族や大名の娘のように多くの教養を積んでいったのは、日本文化の核心である色好みの体現者となり、豪商や裕福な商人、大名、高位の武士たちと教養の共有、つまり色好みの共有を果たすことを求められていたから。これらの伝統的文化に遊ぶことこそが、彼らにとっての「遊び」だった。好色とは、高度に洗練された音楽や絵画や文章、衣食住を楽しむことであり、性関係を含む男女関係は、それらのひとつと考えられていた。つまり「文化」。文化は、欲望に人間的で伝統的なかたちを与えたものである。単なる欲望を精神的、社会的な喜びに変えることである。遊郭は、性を中心にそのような総合的な文化創り上げた場所である。食欲が料理と演出によって真に贅沢で裕福な時間に生まれ変わるように、性欲や愛欲も、贅沢で夢のような経験に生まれ変わり得る。そのためには努力が必要で、色道とは、その努力の方法を示すもの。遊郭は性のみで成り立つことはできず、そこに恋の文化、もてなしの文化が成立した。遊郭は、日本の芸能史の観点とジェンダーの観点から語り継ぐべきだ。

  • 最近、時代劇を見なくなりました。というか、好んで見ていたのは必殺仕事人のシリーズくらいでしょう(中村主水が出ていた方)。ドラマの中でたぶん遊郭と呼ばれるようなものをちょくちょく見かけました。花魁道中というのも見たことがあります。華やかな姿で、自信をもって歩いているように思えました。でも、結局は皆、借金のカタに自由を奪われて働かされている女性なのですね。それでも、客相手の仕事に就くわけで、お茶やお花をはじめ教養はいろいろと身につけていたとのこと。当時、時計のねじの調整ができるというのが特殊技術だったわけですね。年中行事なども行われ、遊郭は文化を継承してきたわけでしょう。遊女たちは長くその中で仕事をしていると、自分の仕事に誇りを持つようにでもなっていたのでしょうか。そのあたりの気分がちょっと分かりません。男性には「女性を性の対象としてしか見ない」というような人が多くいたわけでしょうし、それを割り切ってできていたものなのか、どうなのか。それと、遊郭という場所自体ですが、新宿歌舞伎町みたいな、何か繁華街の中の歓楽街と呼ばれるような場所とのイメージがあったのですが、どうも畑の中にポツンと人工的に作られた街だったようで驚きです。その郭の中だけが、パッと華やいでいたということなのでしょう。不思議な空間です。「千と千尋」のトンネルを抜けた先のようです。著者も最初から書かれていますが、二度と同じようなものをつくってはいけませんが、でも、文化や行事など残しておきたいものも数多くあるのは確かです。歴史をきちんと学ばないといけませんね。

  • 遊廓とはただの風俗場という認識だったが違った視点で面白かった。芸としておもてなしとして、遊女はかなり優れた人だったというのも驚きだった。読みきれないところもあるがかなり満足した。

  • 「文化は欲望に人間的で伝統的なかたちを与えたものです」と著者がいうごとく、性欲にまつわる文化が織りなす時代模様を遊郭を題材に一覧した著作。

  • 「遊郭と日本人 田中優子著」読了。なんとなく、AV業界に似ているのではと思った。庶民の手の届かないはかない存在。

  • ●なぜ読んだか
    →遊廓というものがどんな場所なのか、
    遊女とはどんな女性たちだったのか気になったから。

    ●感想
    →遊廓とはどんな場所でどんな遊女たちがどんな理由で働いているのかを知れた。歴史には疎いため少々聞きなれない用語が多く何度も読んでしまう部分もあったが、大まかに遊廓というものを知りたい人にはいいと思う。

  • 遊郭の基本的な情報が知れて良かった。

  • <目次>
    はじめに
    第1章   吉原遊郭の誕生
    第2章   遊郭とはどのような場所か?
    第3章   遊女はどんな人たちか?
    第4章   男女の「色道」と吉原文化
    第5章   吉原遊郭の三六五日
    第6章   近代以降の吉原遊郭
    終章    遊郭をどう語り継ぐべきか

    <内容>
    この時期に田中優子がなぜ?だったのだが、中世から江戸初期は、「遊女」は売春よりも芸能に重きがあり、様々な日本の芸能のルーツになっている(歌・楽器・踊り・工芸品・服・化粧など)ことだ。むろん、ジェンダー論から見ても必要な所はあるのだろう。ただこの本は興味本位ではなく、微に入り細に入りではなく、本筋をサーっと流す感じ。歴史上の(吉原)遊郭を学ぶにはいいだろう。

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著者プロフィール

1952 年神奈川県横浜市生まれ。江戸文化研究者、エッセイスト、法政大学第19 代総長、同大名誉教授。2005 年紫綬褒章受章。『江戸の想像力』( 筑摩書房) で芸術選奨文部大臣新人賞受賞、『江戸百夢 近世図像学の楽しみ』( 筑摩書房) で芸術選奨文部科学大臣賞、サントリー学芸賞を受賞。近著に『遊郭と日本人』(講談社)、
『江戸問答』( 岩波書店・松岡正剛との対談) など

「2022年 『手塚マンガで学ぶ 憲法・環境・共生 全3巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

田中優子の作品

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