裏道を行け ディストピア世界をHACKする (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065265703

作品紹介・あらすじ

ふつうに生きていたら転落する。

知識社会化が進み、人生の難易度がますます上がっていくーー。

残酷な「無理ゲー社会」を攻略するための
たった一つの生存戦略とは?


才能のある者は人生を攻略(HACK)し、
才能のない者はシステムに搾取(HACK)される。

常識やルールの「裏道を行け」!


【本書の目次】

PART1 恋愛をHACKせよ
ーー「モテ格差」という残酷な現実

PART2 金融市場をHACKせよ
ーー効率よく大金持ちになる「究極の方法」

PART3 脳をHACKせよ
ーーあなたも簡単に「依存症」になる

PART4 自分をHACKせよ
ーーテクノロジーが実現する「至高の自己啓発」

PART5 世界をHACKせよ
ーーどうしたら「残酷な現実」を生き抜けるか?


【本書の内容】

・「女性嫌悪」に走るモテない男たち
・ナンパ師が手にし損ねた「ほんとうの愛」
・道徳的な「モテ戦略」とは       
・「寝てるだけでお金を貯めた」天才の極意
・ブラックジャック必勝法は存在する
・ノーベル経済学賞の先を行け
・ギャンブルは「向精神薬」
・大学生の50%が「ネット中毒」
・「ちがう自分」という強迫観念
・「自己実現した主体」が幸福をもたらす
・トランスヒューマニズムと「優生学2.0」
・「寝そべり族」はなぜ生まれたか
・自己啓発としての「ミニマリズム」
・「ストア哲学」は究極のメンタル術   ……ほか

感想・レビュー・書評

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  • ベルカーブや、ロングテールの、下位から、上位へとハックする方法

    どんなシステムにも、バグがあり、そのバグをついて、上位へとハックする
    めちゃくちゃ頭のいい少数がその富を得ることとなる

    女にもてるようになることも、ギャンブルに勝つことも、同様だ。

    大脳生理学から、いわゆる女にもてるためにはどうすればいいのかハックをするための科学があり、ギャンブルにも、金融にも、複雑な数理モデルを駆使して富をえることができる

    一方、脳にもバグがあって、そのバグのために、セックス依存症や、薬物中毒から逃れられない、Webを介したE/Cのビジネスは脳の特性を理解して、できるだけ多くの買物をさせようとしている。

    結論は、こうだ。

    「人間はしばしば不合理な選択や行動をし、社会・制度のバグは簡単にはなくならない。それを考えれば、むやみに大きなリスクをとることなく、経済合理的に考え行動することで、人生をハックすることは、またじゅうぶんに可能だろうと思う」

  • Part3 脳をHACKせよ あなたも簡単に「依存症」になる
    の章が一番面白かった。報酬系回路を発見した後のラットや人間の忠実な反応ぶりを読むと、生き物も煎じ詰めるとアルゴリズムの塊に過ぎないのかな、と思わないでもない。
    塩基とタンパク質を通じての個体統治では、俊敏性に絶望的な弱点があるため、脳があり、その脳を通じた代理統治が人生だと考えると、その脳にどの程度のバグが許容されるのかは、よく分からない。多すぎると淘汰圧を掻い潜れないだろうし、完全を目指して余りに脳がエネルギーを使うと燃費が悪過ぎて生き残れなさそうだ(ネアンデルタール人のように)。結局、今(ご先祖様を含めて)生き残っている、ということは、そこそこバランスは取れているのだろうか。

  • より良く生きていくための人生のウラワザを教えてくれる本だと思い読んでみたら、そうではなく、恋愛、金融、依存症、自己啓発等、庶民にとって上位に行くのがほぼ不可能とされる「無理ゲー」をハックした人たちの顛末を中心に、著者の考察を加えた内容であった。

    心理学の理論を応用して、今までの自分には到底モノにできるようなレベルではなかった超ハイクラスの女性を次々に簡単にゲットできるようになったナンパ師、経済理論をベースにカジノや金融市場で大儲けをした学者、依存症の仕組み他、まさにタイトル通りの「裏道」にまつわる内容がてんこ盛り。

    それにしても、著者の著作を読んでいていつも感心するのが、参考資料の多さ。これらを全部理解した上での記載内容なので、裏付けも理論構築もしっかりしていて信頼度が高い。

    世の中を渡っていくのにこのような方法もあり、それらを実践した人たちの栄枯盛衰を知るというだけでも、今後の生き方の選択肢が増えるような気がした。

  • 果たして本書が世の中をハックするような示唆に富んでいるとか、その事例を紹介するような本ななのかというと、必ずしもそうでも無いが、引用が楽しい。話題が興味深い。グッと引き込まれるような本だ。

    例えばこんなデータ紹介。婚活サイトのビッグデータ分析では魅力度下位80%の男が下位22%の女を奪い合う図式。逆に上位78%の女が上位20%の男に集まるのだという。まあ、これに関しては、データ説明の仕方がおかしく、上位80%の男女の傾向を示さねば対等じゃない。ただのランキング人気投票と同じなら、上位20%が男女共に票を獲得するのは、あり得る事だろう。

    リンストロームのニューロマーケティングの話。商品名を隠してペプシとコカコーラを比較するとペプシの勝ち、商品名を明かすと結果は逆。脳の味を感知する腹側被殻だけでなく、高度な思考や認識を司る内側前頭皮質の血流も増加。これがブランドの力だという。

    しかし、そもそも人間なんて所詮動物で、欲望を抱えながら生きているから、恐怖や快楽を餌に、十分ハックできる存在なのかも知れない。お互いがハックされないように警戒しながら、極力仲間同士で身を守りながら生きていく。恋愛とは気の緩みなのかも知れない。

  • 本書は、社会の王道と言われる方法ではなく、独自の視点から人生を攻略してきた人達の記録である。
    誰もができることではない彼らの行動を振り返ることで、私たちにも学べることがあるのだと思う。私なりの解釈では、例えば、、、
    使う側に立つのか、使われる側に立つのか?
    大きな視野で物事を捉えたら、どんな景色が見える?
    などの言葉が浮かぶ。
    ただ搾取され続ける人生に疑問を持ち、立ち止まり思考を促す一冊になっている。
    依存症の実態とメカニズムを学ぶことができたのが大きな収穫だ。

  • 我々の大半は自分達を中流と思っているが(家あり、職あり)、実態は世界の富を一部の少数が独占し、中流という言葉も普通の生き方をしていればすぐに下流に転落するということで形骸化しつつある。著者が言うところの無理ゲー社会に今生きている。
    上級国民に近づくためにはHACK、ルールを無視して近道を見つけ、ふつうの奴らの上を行くしかない、ということらしい。
    「ふつうの奴らの上を行く」この言葉が表すように、著者には優生思想が根強くある。

    性愛、金融、ギャンブル、生存本能、自己改革などの分野にHACKを試みた人達の実例が紹介されている。これらの分野に共通するのは、人間の欲望に結びついている、何らかの脳内物質が関係していることだ。
    HACKをしていく過程は苛烈だ。そしてHACKし尽くした末の彼らの心持ちは、もうその分野に執着の見られない悟りのような状態になっている。

    皆必ず何かに依存しながら、HACKされながら生きている。言ってしまえば人間は動物で、等しく脳に支配されているのだろう。何を好んで手に取るのかも、本当は自分の意思など関係ないのかもしれない。猫が好きな自分は、オキシトシンの下僕だ。

    そして現代、人には自分の思う道を進む(と思い込む?)権利がある。そしてそれが許される社会のためにある程度の義務を果たし、逸脱しすぎれば相応の代償を払う。国家はその公正な受け皿であらねばならぬ。

    しかしこの権利部分だけのいきすぎ(いわゆるリベラル思想の一部)が、今のこの無理ゲー社会の大きな一因であるという点は賛同できる。
    そのうえ自分の思う通りに生きなさいと、世界は手をこまねいて人をHACKしようとしている。必然的に義務や依存は増え、ものを考えたつもりになり、転落すると受け皿はザル。抜け落ちた先は荒野で誰も助けてくれない。どっぷりとHACKされた頭では今さら這い上がる知恵も意欲もない。極端な想像だけれど。

    だからこその逆にHACKせよ、だろうが、個人的にできぬ者の人生を高みの見物でおとしめることは好きではない。自分から見れば著者も、自分より下だと思う他者を見下すことで出ている脳内物質の、もしくは強烈な真実(と思っている)を他者に見せつけることによって出る何某かの脳汁(書いていて馬鹿になった気する)の依存症に見える。

    この本を読んでも、新しい抜け道を見つけ世界出し抜くことは極めて難しいと思う。我々の脳はほぼ何かにHACKされているのだから。一度知った様々な快楽を誰が手放せる。また快楽に依存している状態が全て理不尽であるとも思わない(本人がそう思っている場合や被害者がいる場合は除く)。民へのHACKを誘導することで金を稼ぐ企業を軽蔑できても、この世から永遠になくなりはすまい。

    逆に出来る人は、矢印を内向きから外向きに変え、できれば政治家等になって、今よりマシな暮らしができる最大公約数を増やしてもらいたい。国家は民を飼い慣らすと言う意味では最大のHACK集団なので親和性は高いと思われる。

    人間はよほど追い込まれないと真価を発揮できない。そしてできない理由を適当にごまかしているうちに大体寿命が尽きて死ぬ。だがその一人の人生の中で成し得た僅かのことが、人間の数だけ何世代にも積み重なって、世界は変わっていくのかなと思う。その成し得たことがHACKすることだけならば、逆に未来は暗いのでは。

    この世界をどう生きるか、最後に提案されているのは、物を捨てミニマルに暮らしながら節約投資し、早期リタイアはせずある程度社会貢献しながら自分の価値を保ち続けること、と理解した。結局皆それなりにやってることのような気もする。

    この本には夢も希望もほとんどない。読んでいて疲れた。
    しかし夢も希望も好きなだけ見なさいと人間を誘導し、いざ立ち行かなくなれば放置される世界もたいがい残酷だと思う。得体の知れない怒りもわいてきて、ちょっとゲロ吐きそうになった。やはり著者はある程度の本質をついているのだろう。
    俯瞰的な視点を忘れずに、かつ自分は地面(現実)を歩いて行こうと思う。長文失礼。

  • 恋愛、金融市場、依存症、自己啓発…さてその共通点は?個人的には「優生学2.0」が薄気味悪い。

    本書に登場する、ALSで余命2年を宣告されたことを機に、AIと融合としたサイボーグとして生きる道を選んだピーター・スコット=モーガン博士は6/15に逝去されたそう。ご冥福をお祈りします。
    そして同じ月に井川意高『溶ける』の続編が出版された。そのタイトル、『溶ける 再び』だって。やっぱりギャンブルの依存性は半端ないようで…。

  • 面白かったけどもうしばらく新刊は買わなくていいかも、素直に「読書案内」として書いてくれればもう少しモヤモヤは薄れたのではと感じました。

  • 30代でFIREして数年。そんな立場で読んだ感想。

    まず、恋愛、金融、依存症、自己啓発の残酷な現実をこれでもかと紹介。
    この辺はそうなんだなぁと流し読み。

    では、どうしたら残酷な現実を生き抜けるか?
    筆者の答えが、ミニマリズムとFIRE。

    FIREの達成はモノをミニマムにしてれば、お金貯まる。
    そして、資産運用して、4%ルールで暮らすと。
    これは自分も似たような方法で達成した。
    ぶっちゃけモノをミニマムは、遺伝というか性格も影響あると思う。
    私は、元々モノにお金を使わない性格+副業+資産運用で達成できた。
    努力でミニマムな人になれるかどうかは、わからない。
    努力で収入を増やすことのほうが現実的かもしれない。

    そして、FIRE達成したとして、それで幸せなのかだ。
    「RE、悠々自適ではない
     好きな仕事を通して大きな評判を手に入れる」
    と筆者は述べているが、そこがポイントだと思う。
    REは、結局、仕事関連のストレスから開放される点では幸せだが、それ以上でも以下でもない。

    個人的には
    ・自分が真に好きなこと、やりたいことをみつけてやること
    ・日々、自分が少しずつ成長すること
    が幸福につながると思っている。
    月並みかもしれませんが、今のところそれが自分の結論。

    真に好きなことと書いたのは、
    フルタイムで働いている時に「やりたいなぁ」と思っている事は、大して好きでもないしやりたいことでもない、事が多い。
    FI状態になる前は、基本的に大半の時間を生きるために使っている。
    その時にやりたいと感じることは、残った細切れ時間の中でやりたいと思い込んでることだから。

  • 「金は何らかの目的を達成するための手段にすぎない」ユダヤ人、ジョージ・ソロスの父ティヴァダールはこう息子に教えてきた。

    「金儲けは好きではありません。ただ、うまいだけです。」

    冷静・客観的な考えが、自分の思考を防護するのかなぁと思いました(^^)読んでいる途中です、、、(メモ書き)

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著者プロフィール

2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)、『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』『橘玲の中国私論』(以上ダイヤモンド社)『「言ってはいけない? --残酷すぎる真実』(新潮新書)などがある。メルマガ『世の中の仕組みと人生のデザイン』配信など精力的に活動の場を広げている。

「2023年 『シンプルで合理的な人生設計』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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