教養としての金融危機 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065267158

作品紹介・あらすじ

激動の世界史と時代の大転換点――。
「100年間」に起きた「9つの危機」を「ストーリー」で一気に学ぶ…!

世界的な金融危機はなぜ起きたのか? なぜ金融危機は10年に1度起こるのか? 新型コロナショックは新たな金融危機を引き起こすのか? 危機を何度も乗り越えたこの世界は、いったいどこに向かうのだろうか?

【目次】
序――国の黒字・赤字とはどういう意味か?
――国際金融危機の仕組み
コラム 日本はこれからも経常収支黒字ですか?

第1の危機 なぜ史上最悪の危機は起きたのか?
――金本位制、大恐慌、ドイツを巡る資金の流れ
コラム あなたの国の経済的トラウマは何?

第2の危機 なぜブレトンウッズ体制は崩壊したのか?
――固定相場制、ドルの垂れ流し、ニクソンショック
コラム 人民元がドルに代わって基軸通貨になるのですか?

第3の危機 なぜドルは大暴落したのか?
――変動相場制、オイルショック、インフレ
コラム 経常収支の赤字や黒字は国内政策で是正できますか?

第4の危機 日米・米独貿易摩擦は乗り越えられたのか?
――プラザ合意、円高パニック、バブル発生
コラム 為替市場介入に意味はあるのですか?

第5の危機 発展途上国の債務危機はなぜ同時多発したのか?
――ラテンアメリカ大混乱、IMFプログラム、ブレイディープラン
コラム 発展途上国の貧困問題は解決できますか?

第6の危機 アジア通貨危機とは一体何だったのか?
――サドンストップ、パニックの伝播、アジア通貨基金
コラム 固定相場制が守れないのはなぜですか?

第7の危機 米国発金融危機はなぜ起こらなかったのか?
――ヘッジファンド、質への逃避、FRBの介入
コラム ハゲタカファンドに勝つにはどうしたらいいですか?

第8の危機 世界金融危機を引き起こした複合的要因とは?
――リーマンショック、金融工学過信、群集心理
コラム 国際金融は誰が運営しているのですか?

第9の危機 絶体絶命のユーロを救った「一言」とは?
――単一通貨導入、ギリシャ危機、ドラギマジック
コラム EUは連邦国家に向かっているのですか?

第10の危機? 次の危機はどこで起こるのか?
――新型コロナ、債務累積、資産価格高騰

感想・レビュー・書評

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  • 金融危機には理由があり、きちんと説明が可能だという事が分かるが、ならば何故それを食い止められないのか、分かりながら極限まで利益追求に走る構図や、そもそも金融危機でダメージを食らわないから気にしない等の私欲が邪推され、権力構造にただただ無力さを感じるのみ。

    本著が記述する歴史の話で言えば、戦争に繋がる以下のような話が興味深く読めた。ケインズの予想通り、賠償金支払いが困難になったドイツが1922年に支払いの一次猶予を求めるがポアンカレ政権のフランスはベルギーと協調し、工業地帯であるルール地方を占領。アメリカもイギリスも損をするからと戦時債務のキャンセルはしない。ドイツは強烈なインフレとなり、パンの値段は10ヶ月で8億倍。1922年初に1ドル=160マルクが、23年11月には1ドル=4.2兆マルク。貯蓄や年金は無価値。国民の連合国への怨みが強まり、極右勢力が拡大。

    第二次世界大戦後はイギリスもほぼ破産状態。アメリカからレンドリースという名の実物支援により、食糧や航空機、船舶等を受けていた。

    終戦直後から1950年代はドル不足が国際金融システムの最大の問題。貿易決済に使われるドルが手許にない。そのためマーシャルプランにより、西側諸国に対し120億ドルの資金供与。9割は返却不要であり、欧州は輸入決済のドルを確保、など。

  • 新書なので入門書なのだろうが、中々どうして読みごたえがあり、自分の知識では理解できない内容も多々あった。

    このレベルを専門でない人間が、世界経済あるいは金融政策の在り方の基礎教養として求められると中々厳しい(笑)

    自分は年はとっているので第4の危機以降は、リアルタイルで経験している事になる。

    振り返ると欲と叡智の狭間で金融危機も繰り返されたし、これからも危機に直面しそれを乗り越える事が繰り返されるであろう。自分が生きている間にどんな危機が起きるか分からないが、過去の歴史に学び賢くふるまう様にしたいと切に思う。

  • 近時100年間に発生した主要な国際金融危機9つを取り上げてわかりやすく解説した本。よくまとめられていて興味深く読んだ。

    第1の危機は、言うまでもなく1929年の大恐慌前後の金融危機。戦後の国際金融システムの試行錯誤はここから始まったということは異論がない。だからこそ経済史の研究者たちの関心を惹いてきたわけだから。

    第2の危機以下は次の通り。
    2.なぜブレトンウッズ体制は崩壊したのか?
    3.なぜドルは大暴落したのか?
    4.日米・米独貿易摩擦は乗り越えられたのか?
    5.発展途上国の債務危機はなぜ同時多発したのか?
    6.アジア通貨危機とは一体何だったのか?
    7.米国発金融危機はなぜ起こらなかったのか?
    8.世界金融危機を引き起こしたの複合的要因とは?
    9.絶体絶命のユーロを救った「一言」とは?
    10? 次の危機はどこで起こるのか?

    こうして列挙してみると、自分が生きてきた時代は戦後の国際金融危機連発の時代だということがよくわかる。各章あとのコラムもいくつか勉強になった。

  • 金融危機に纏る歴史の流れ
    金本位制や固定相場制から変動相場制への移行の流れ。
    米国の財政赤字が世界の景気に大きく貢献する。
    米国の財政赤字は、アメリカ自身に対しても大きなベネフィットになるけど、もちろん、ドル高によりドル資金が引き上げられた場合のショックも大きく、アジア危機などで示されてきた。日本も経済が好調な時期は貿易黒字の削減を求められたり。
    中国の経済発展により相対的にアメリカの地位も下がったかもしれませんが、基軸通貨としての存在感は当分の間続くのでしょうか。
    ユーロの行末もきりなりますが、世界の金融危機がウクライナの件も含めて、一部のひとの手によって如何に歪められてきのかという気がしました。
    資金流入がストップするサドンストップという言葉を始めて知りました。

  • ●日本は、ものを売って稼ぐ国から、投資収益で稼ぐ国に変わっている。
    ① 1920年代、金本位制、大恐慌、ドイツをめぐる資金の流れ。ブロック経済化。
    ②ブレトンウッズ体制の崩壊。ニクソンショック。
    ③ドルの大暴落。オイルショック。
    ④プラザ合意、円高、パニック、バブル発生
    ⑤ 1980年代、発展途上国の債務危機。
    ⑥アジア通貨危機。メキシコ、タイ、インドネシア、韓国
    ⑦米国発の金融危機は何故起こらなかったのか。ヘッジファンド、FRBの介入。
    ⑧リーマンショック。住宅バブルの崩壊から。サブプライムローン。
    ⑨ユーロ危機。アイルランド、スペイン、ギリシャ。ドラギマジック
    ●コロナ危機

  • 歴史を知ること、専門家が分析した事実関係を大まかに把握しておくことは重要。

  • 経済のことは、あまり知らない。
    特にマクロ経済は…難しい。
    本書は自分にとってチャレンジだと思って選んだ一冊。

    20世紀から現在までの金融危機の原因を「お話」として説明した本。
    「お話」化されているので、何とか読了できた。
    今まで自分の中でバラバラに入っていた昔学校の授業で習ったこと、その後ニュースで聞いたようなことが、だんだん結びつき始めたような感覚を味わった。
    その意味では、いい経験をしたと思う。

    経済を学んだ人には噴飯物だろうなあ、と思うが、恥を忍んで書いてみる。

    20世紀の間に起きた国際金融の変化は、ざっくり言えば金本位制から固定相場制、そして変動相場制へということになる。
    基軸通貨もポンドからドルへと変化する。

    自分など、アメリカはどうしてあんなに景気がいいのに、「小さな政府」を志向しているのに、財政赤字があるのか不思議だった。
    正直、財政がうまくないのかと思っていた。
    この本を読んで、ちょっと事情がわかった。
    国際収支が黒字なら安心という単純な話でもないことも。
    いや、もう、それくらいの無知なのだ。

    最近話題の為替市場介入についても、コラムで解説があった。
    今までは、中央銀行の「やるぞやるぞ詐欺」だよなあ、と思っていたのだが、ある意味それが「正しい効果」だとのことが本書でわかった。
    実際に相場を左右することなど、あまり考えていなくて、心理的に冷や水を浴びせることを狙っているのだと。
    なにか、先生の一喝で、一瞬だけ教室が鎮まるみたいなものなのね。

    金融危機は、資金の流れが止まることで起きる。
    引き金や、ファクターは少しずつ変わっていくけれど、今後も起きることだけは間違いない。
    金融危機のたびに、各国のエゴもむき出しになるものの、国際協調の模索もされてきた。
    常に後追いで対応されるのだ。

    今、インフレが起こり、円安が起こっている。
    自分の人生のスパンではこんな時期が珍しいこともあって、不安に思っていた。
    が、本書を読んでみると、これもまだ経済の歴史的な変動としてはそれほど深刻な状況には当たらないのかもしれないという気もしてくる。
    あ、いやいや、そんな気になるのはまずいか。
    貧困対策、気候変動対策は、経済の問題でもあるのだ。

  • 割と面白かった。自分達の都合と妥協だらけ。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/775141

  • 今まで起きてきた国際金融危機、そしてこれから起こり得る国際金融危機を体系的にまとめられた一冊。
    自分の勉強不足でまだまだ内容が咀嚼できていないけれど、経済には浮き沈みの波がつきものだということは良く分かった。
    もっとお金の勉強をした後に読み直して理解を深めたいな。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。1984年東京大学法学部卒業。1988年英オックスフォード大学にて国際関係論修士号(M.Phil)取得。1984年大蔵省(現・財務省)入省。主計官、国際機構課長、副財務官など歴任。欧州復興開発銀行(EBRD)日本理事室、金融安定化フォーラム(FSF)事務局での勤務を経て、2008~2016年国際通貨基金(IMF)アジア太平洋局及び戦略・政策・審査局審議役、2017~2021年世界銀行駐日特別代表。ロンドン、バーゼル、ワシントンなどで通算17年間海外勤務。2016年より、東京大学大学院(総合文化研究)客員教授。現在、三井住友信託銀行顧問。


「2022年 『教養としての金融危機』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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