パンとサーカス

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 511
感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (562ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065268742

作品紹介・あらすじ

政治的関心を失った民衆には、食料(パン)と見世物(サーカス)を与えておけば支配は容易い。
戦争、犯罪、天災、疫病――どれもがサーカスとなる。

ヤクザの二代目、右翼のフィクサー、内部告発者、ホームレス詩人……
世直しか、テロリズムか? 諦めの横溢する日本で、
いざ、サーカスの幕が上がる!

「私の暴走にどうかお付き合いください」 ――島田雅彦

不正隠蔽の犠牲となった父親の復讐を果たすため、CIAエージェントになった男は、
日・米両政府の表と裏を巧みに欺き、いつしか日本国民の仇をとる。

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった〜!
    日本でスパイ物の、もっともらしい理由付けは難しいだろうと思ったけど、実社会をベースにエンタメにしていてめっちゃ良かった。
    キャラの名前の付け方が覚えやすくていい、ペヤングとかミュートとか。
    現実の世界はクソまみれなので、小説内のドンパチで憂さ晴らしさせてもらえるのが幸せ。

  • 整った美しい小説ではないけれど、著者が今作に込めた熱量に心動かされる。
    しかし実際の日本はフィクションの更にずっと下を行き、パンとサーカスが与えられればまだマシだというほどの惨状になってきたと暗澹たる気持ち…。

  • 何の因果か、この本を読み終えた翌日に元総理は射殺された。
    東京新聞等で連載された小説。産経や読捨で連載したら大変な騒動になるだろう。話の根底に流れている考えは、”世襲で無能な男が首相に収まると、政府のマフィア化は進み、不正は公然と行われるようになったにも拘らず、国民はサイコパスに洗脳されたかのように、その無為無策の政権を支持し続けた”という世界観だ。
    少年時代からの幼馴染、火箱空也と御影寵児。空也は広域暴力団火箱組の跡取り息子で、人材派遣会社で社会勉強中。寵児は秀才で東大法学部を経て留学し、CIAで働くことになる。その二人がそれぞれ異なる立場を最大限に生かして、日本の世直しを敢行する。とんでもない実力行使も有り、胸躍る展開。
    中国とアメリカとロシアの間で上手く立ち回る必要があり、この国にとって外交は大昔から重大事であるが、現在は全てを米国に依存しているというか支配下にある為どうすることもできない。唯一の頼みは経済なのだが、それも今や先細り状態。それでもほとんどの国民は政権を強力に支持し続けている。もっともリベラルは迷走を続けたり、政権にすり寄りおこぼれを頂戴しようとの狙いが有ったりで、泥沼にどんどん足を踏み入れつつあるからどうしようもない。
    自主独立国家の確立など、本当に小説の中でしか有り得ないだろう。明日の選挙結果を見るまでもなく…

  • ひゃー、長編もろもろ疲れました。
    上下巻にしてもよかったんでは(笑)

    これを新聞連載していて、皆さんついていけたのでしょうか?
    著者の帯、「私の暴走にどうかお付き合いください」
    があるから、なんとか読了しました。

    しかし、最後が尻すぼみ。
    今の日本を憂いていても、どうせ思い通りにならないのですから、いっそ最後はもっととっちらかしてしまってもよかったのでは。

    といろいろ思いながらも、一抹のうすら寒さを憶えながら本を閉じました。

  • 新聞で毎日楽しみに読んだが、デビュー作「やさしい左翼のための嬉遊曲」以来の踏み込んだ政治小説だなと思った。結局、若い時の思いはいつまでもその人の中核として埋み続くものなのだなと。
    現代の政治に対する失望は多くの人が感じるところではあるが、作者もまたその一人として、清濁合わせ飲んででも政治をbetterなものにしたらどうかという提言、と読んだ。
    私もその姿勢に共感する。

  • 文芸誌などで短編やTwitterでは時々読んでいたけれど長編の島田雅彦作品を読むのは初めて。先ずはその厚みに怯みつつ、読みはじめてみればモデルになったであろう事件やニュースが次々に思い出されるし、映画や小説で馴染み深い騙し騙されの世界が繰り広げられ‥私たちは誰を、何を信じればいいのかと悩み、現実と創作の境い目を行きつ戻りつしながら一気に読了。結論は出ないけれど、悩み続ける。それしかないのかも。

  • 前半はほとんど現代の日本で起きていることのように感じた。
    後半、うまくいき過ぎる感もあるが、物語としてはこれくらいの希望がほしい。
    骨太でエンタメで読み応えのある作品

  • 革命に向かう野心と現実との混沌は、ワクワク感に満ちている。その分、尻すぼみ感が惜しい。
    どうせ物語なんだから、一回はドカンと行くとこまで行けばいいのに。なんか現実に絡め取られて、でも完全な敗北ではなくて、再起への希望を若干感じさせるというラストが、惜しいなあと思ってしまったのは何でか自分でもよくわからない。
    ワルキューレカルテットも、便利屋さんとしてでなくもう少し活躍してほしかった。

  •  現在の与党の立場に対する認識で書かれれば、もっと辛辣であっても構わない。
     

  • 発言が物議醸した島田さん。でも、作品は日本の将来考える指針に。テロはダメだけど。今さら、要らないかもしれませんが、今年の直木賞に…。「政府のマフィア化は一層進み、公然と不正がまかり通り、貧富の差は拡大の一途を辿ったにもかかわらず、市民はサイコパスに洗脳されたかのように無為無策の政権を支持し続けた」「自由よりも管理の徹底を求める自発的服従者」「限られた少数者の利益に奉仕する政権を利益に与れない多数者が支持するという茶番」「日本は世界の沖縄になってしまった」「パンとサーカスだけでは足りない。武器もオカネもない。地位も権力もない。あるのは良心だけ。でもそれさえあれば、いくらでも世界を変えられる」先日、財務副大臣が税金滞納で4回も差押え判明というジョークとしか思えないニュース。それでもなんのアクションもなし。現実は、この小説以上に無気力。

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著者プロフィール

作家

「2018年 『現代作家アーカイヴ3』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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