スピノザ 人間の自由の哲学 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 188
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065273241

作品紹介・あらすじ

「本当に存在するのは神のみであり、人間を含め、その他のものはすべて神の<様態>に過ぎない」――一見、もっとも「自由」からはほど遠いように見えるスピノザ哲学が、自由こそは人間の「本性」と考えるのはなぜなのか? 政治的閉塞に被われた現代社会に風穴を開ける、もっともラディカルな思想の魅力を平易な文体で綴る。まったく新しいスピノザ哲学の入門書。
・「自然の権利や決まりとは、わたしの理解では、個物それぞれに備わった自然の規則に他ならない。あらゆる個物は、こうした規則にしたがって特定の仕方で存在し活動するよう、自然と決められているのである」(スピノザ『神学・政治論』第16章2節)。
・「スピノザが『神学・政治論』後半部で提示した政治哲学は、恐らくそれまでの西洋哲学史上類を見ないほどの徹底性をもって、わたしたち一人一人の「哲学する自由」つまり思想・言論・表現の自由のかけがえのなさを強調しています。しかもただ闇雲に大事だと叫びたてるのではなく、大事なものである理由を人間の自然権という、存在論的な基盤にまでさかのぼって徹底的に根拠づけようとしているのです」(本書第8回 自由は国を滅ぼすか――スピノザの思想<四>より)

感想・レビュー・書評

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  • スピノザの生涯と思想を分かりやすく軽い文体で書いた初心者向けの一冊。
    都度都度、その時代の国、人種、宗教についての解説が入るので背景を理解したうえでスピノザの思想を読み解くことができる。哲学に明るくなくても、難しい哲学用語にも適宜かみ砕いた説明を入れてくれるので突っかかることなく読むことができる。
    ただ、思想そのものに対して現代の日本人が心の底から必要としているかについては疑問を感じる。というか、「まあ、そうだよね」以上の感想が持てなかったのが正直な所でした。

  • スピノザにとってネックになるのは自由意志を認めない点であると思う。私が今まで読んできた本もそうだし、この本でもやはりしっくりこない。「自由意志を認めなくても問題ない」という結論ありきで、そちらの方向にしか議論を持って行っておらず、そのため端々に無理(そうじゃないケースもあるでしょ?途中まではいいけど、どうしてその結論に?など)が生じているように見える。

  • スピノザの生涯や17世紀オランダの社会背景、デカルトをはじめ関係する人物についての説明が豊富。思想の文脈をたどる上で欠かせないところに手が届いている。

  • 2023.3.5読了

  • スピノザの生涯と思想をていねいに解説している入門書です。

    すでに「講談社現代新書」では、スピノザの入門書として上野修『スピノザの世界―神あるいは自然』と國分功一郎『はじめてのスピノザ―自由へのエチカ』が刊行されています。著者もこのことに触れつつ、「スピノザの思想だけでなく、彼の生涯と生きた時代について、かなり立ち入って解説していること」と、「他の二冊が『エチカ』で展開された哲学・倫理思想を中心に取り上げているのに対し、本書はそれに負けないくらい、『神学・政治論』『政治論』で展開された宗教・政治思想にも目配りを試みていること」を特色としてあげています。

    著者は、『エチカ』がスピノザの「表の主著」であるのに対して、『神学・政治論集』は「裏の主著」にあたるといいます。そして、『神学・政治論集』においてスピノザがホッブズの社会契約説の枠組みを踏まえながらも、「自然権」についてまったく異なる考えを提出していることを解説します。つづいて『エチカ』の解説では、一人ひとりの人間の「現に働いている本質」であるコナトゥスという中核的な概念が、『神学・政治論集』の自然権の思想に通じる発想にもとづいていることを明らかにし、「表の主著」と「裏の主著」とをつなぐ発想に目が向けられています。

    スピノザの生涯にまつわる、ややマニアックな研究の成果も紹介されており、分量的にも新書としてはややヴォリュームのある本です。とはいうものの、賛否はあるでしょうが著者の軽妙な語り口のためもあって、たいへん読みやすく書かれているように感じられました。

  • 私にはちょっと難しかった、、、
    けれど、スピノザの考え方は好きだという感覚だけは分かりました。

  • やや分量は多い(とりわけ新書という判型をかんがえるとけっこう分厚い)が、文体の点でも構成の点でもひじょうに読みやすい。べつにくだけた表現がやたら多いとかそういうことではなくて、たんなるジャーゴンのパズルになってしまわぬように注意深く噛み砕かれているという意味で読みやすい書き方になっていると思う。15章立てで伝記的事実のパートも結構しっかりとっていることや、著作も『エチカ』に限定せず広く取り扱っているところなんかがこの本のチャームポイントだろう。

  • 生涯パートの情報量が楽しかった。

  • 『夜と霧』で引用されたエチカの一節が印象的で、その後読んだ別の本でもスピノザについての描写があり、スピノザを知りたいと思いこの本を手に取りました。
    エチカ(ほかスピノザの著作)を最初に読むべきだったのかもしれないと本を読み始めてから思いましたが、その時は書店で売り切れだったのでこちらを選んだのです。

    不勉強ゆえ、スピノザの引き合いに出される哲学の内容などもわからず、ピンとくることはなく思想の項目は文字が滑るように理解が難しかったのですがスピノザの一生についての描写は、研究に携わる人ならではの綿密な分析によって導き出した情報が丁寧でとても好ましく面白く読めました。

    過去の人の歴史を分析するのはとても大変なのだなと思いますし、こうして過去の限られた資料や時代背景を鑑みて丁寧に読み取られた情報を重宝すべきであるし、これに限った話ではなくSNSの発展と自己顕示欲の褒められない相乗効果でソースが不明の情報が独り歩きするのがとても不快なので、その点においてこの本は上質な情報がたっぷりだと言え、内容だけでなく姿勢も見習うべきなのではと思いました。

    スピノザの思想、中でも理性はとても高度なレベルで終わりのないものですが、とても好ましい心意気だなと思いました。

  • 東2法経図・6F開架:B1/2/2652/K

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著者プロフィール

吉田量彦(よしだ かずひこ)
1971年茨城県水戸市生まれ。慶應義塾大学文学部、同大学院文学研究科を経て、ドイツ・ハンブルク大学にて学位取得(哲学博士)。現在、東京国際大学商学部教授。専門は、17・18世紀の西洋近代哲学。著書に『理性と感情 スピノザの政治哲学』(ドイツ語、2004年)、『倫理学案内』(共著、2006年)が、訳書にスピノザ『神学・政治論』(上・下、光文社古典新訳文庫)がある。

「2022年 『スピノザ 人間の自由の哲学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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