セカンドチャンス

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065279519

作品紹介・あらすじ

50歳を過ぎても、敗者復活の大逆転!

麻里、51歳。長い介護の末母親を見送った。
婚期も逃し、病院に行けばひどい数値で医者に叱られ、この先は坂を下っていくだけと思っていたが……。
親友・千尋の「自分ファーストにしな。一生、利用されっぱなしで終わるよ」で一念発起。
水泳教室に飛び込んだら、人生がゆるゆると転がり出した。

ほろ苦く、やがて元気の出る応援歌

謎の上級者・伊津野「あたしさぁ、命かけてんだよね、全国大会に」
イケメン・イケボディの岸和田コーチ「タイムから言えば、俺が社長だ!!」
元文芸編集者・古矢「接待接待で太って、デブキャラに」

人生、まだまだ捨てたもんじゃない。

感想・レビュー・書評

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  • 51歳の麻里。
    医師から痩せるように言われ、通い始めたスイミングスクールでのお話。
    麻里は親の介護に終われ、気付いたら独身のまま51歳。
    元々、世話好きで義理堅いので、当たり前にこなしてきた介護や親戚との付き合いや町内会の仕事。
    でも、幼なじみの千尋に言わせると、“利用されるだけの人生”。
    何かと理由をつけてはスイミングスクールに通うのを後回しにしようとする麻里に発破をかける千尋。歯に衣着せぬ物言いで、だからアンタはダメなんだよ!と。
    そんなこと言ってくれる友だちは貴重ですね。
    やっとのことで通い始めたスイミングスクールには、自分と同じようなぽっこりお腹のおじさん(表紙にはぽっこりさんが何人かいます笑)がいて、ちょっとご飯に誘われれば、私そんな気ないんですけどー、、、と意識しちゃって、でも相手には全然そんな気がなかったりして……
    最後までそういう話はホントに特にありません笑
    そこがリアルで逆に良かったです。
    異性の友だちなんて今までできたことなかった麻里が、新しい環境で男女問わず新しい仲間ができて、なんてことない内容のグループLINEを送り合う。
    まさしく第二の青春です。
    若い人が読んだらきっと退屈なお話なんだろうと思うけれど、それなりの年代の人たちには「わかる、わかる」ってところがたくさんあると思います。ある程度の年齢になったら“自分ファースト”大事です。

  • 介護の末、親を見送り気づけば婚期も逃して高血圧に高脂血症で病院通いの50歳。

    医師から運動は?食事指導は?と聞かれても、時間が取れなくて…とか、腰と膝が痛みだしたので動かすのはもうちょっと…
    なんのかんのと言い訳ばかりで何もしない。

    いやいや、これって私のこと言ってるやん⁇
    って思わずツッコミいれてしまった。
    マジで、2日前から腰痛がひどくて朝起きるのに悲鳴をあげるほど。
    これって何?ちょっと仕事場でコピーしてる時に中腰になっただけやんって。
    まさしく、運動不足と筋力低下に年齢のせいだと。
    そのうちに散歩くらいは、などと思っている自分には、プールはまだまだハードルが高いスポーツである。

    なので彼女が、プールに通い始め着実に成果をあげていくのに凄いことだと感心した。
    初めましての状態から性格の合わない人もいる中で、なんとか諦めずに続けられたのも親友のひとことだったのかもしれないが、努力もあるだろう。
    楽しいと思えることがあるというのは羨ましい。

    これからでも遅くはないのかな?
    一歩踏み出す勇気をもらえた気がする。
    あっ、でも腰痛が治ってからにしよう。
    でも今回は、かなり痛い。日にちがかかるだろう。

  • 篠田節子さんの作品はずっと気になっていたのだが、なんとなく後回しになっていたのだが、思いがけず読む機会を得た。


    自分と同世代の女性が主人公ということもあり、彼女の変化やその先が気になり一気読みだった。

    この物語の主人公麻里は、52歳。
    一昔前によく言われたいわゆる結婚適齢期に、母の介護に徹していたため婚期を逃したという。
    祖母、母の教えをしっかり守るところは立派だが、夫や孫のために自分の時間を捧げる友人の千尋も含め、感覚的にはちょっと上の世代のような気がしてしまう。

    とはいえ、何事にも控えめで、ともすればそれは自信のなさの表れのようにも思える麻里の態度が、地元のスイミングスクールで、様々な泳法を覚え、体も心も健康になり変わっていくのは清々しい。
    読後に思わず、地元のフィットネスクラブを調べてしまった。

    netgalleyにて読了2022.6

  • 二十年あまり介護を終えて母親を見送った大原麻里は、独身で高血圧・高脂血症のアラフィフだ。
    健康のために運動を勧められても色々理由をつけて一歩を踏み出せずにいたが、友人の言葉もありスポーツセンターでスイミングを始めることになった。

    この主人公の麻里、親の介護をはじめ、親戚付き合い、町内会の行事など、誰かに頼まれたら断れない性格で、人に何かしてもらったら、必ずお礼を返さないと…という女性。
    多分、こういう人が沢山いるんだろうなぁ。

    そんな麻里が、水泳を始めたことで、少しずつ人のためではなく自分のために生きるようになっていく。
    でも、すんなり変身していくわけではないところが、この作者らしくてリアルだなぁと感じる。

    『女たちのジハード』を思い出させる雰囲気で、今作では50代女性が古い殻を破る姿が、読んでいて快かった。

  • 何歳からでも始められる。言い訳しないでやってみれば、何かが変わるかもしれない。  健康の為に、水中ウォーキングから初めて、競泳までやってしまうなんて、凄い。感動してしまった。☺

  • お菓子作りが大好きで、健康についてはレッドゾーンな麻里が、気が乗らないままに行ってみた水泳教室で少しずつ変わっていくエンタメ小説。

    ちょっと私の読みたかったお話ではなかった…。
    私もジムのプールに通ってたけど、教室の付き合いって面倒だし、知ってるだけにあんまりうらやましく思えなかった。
    今もジムには通ってるけど、誰ともしゃべらないのが一番!

  • あ~楽しかった!
    「自分ファースト」私自身が、まさに今現在、大好きな言葉です。
    篠田さんの「爽やか系」(私の中での呼び名)のお話。「女たちのジハード」系列という感じかな?
    ホラー、ミステリー、SF、宗教、テクノロジー、民族、芸術、などなど、篠田さんの作品群も、本当に幅広い。そして、どんなジャンルであっても、登場人物たちが、自然というか、私達の生活の中で、すぐそばにいる人達というか、そんな感じがあるので、スイスイ読めてしまうのです。

    今作の主人公・麻里。風邪で倒れても、お見舞いをいただくと布団の中で、お礼はどうしようか?と考えてしまうような女性。お若い方には「イタイ」とか言われてしまうかもしれないけど。
    私はねえ…ちょっと分かる気がしたんですね。もちろん、麻里の考え方や行動、全てに同意~ということはありません。麻里は独身ではあったけど、親や親戚、そして法事や地域の行事など「当たり前にやるべきことだと思って、ちゃんとやってきた」という女性。こういう感じ、自分がこの年代になってみると、ああ~~~と共感してしまう部分もあり、なんだかしみじみしちゃったのです。
    そして、こういう女性だからこそ、ちゃんとやらないと、本人もストレスになっちゃったりするんだよあなあ~と、そんなこともじんわり感じて。
    「わかるよ~!でもそこまでやらないでもいいよ~」という、麻里の友達の千尋(彼女がとっても良い!)の気持ちにもなったりしました。

    今作は、麻里が水泳教室に通い始め、戸惑いながらも、コーチや仲間たち(これまた、様々な人がいる)との交流で、少しづつ変わっていく様子が、あっけらかんと現実的に描かれていきます。
    人は急には変われないけど、一歩踏み出すだけで、ちょっとずつ変わっていける、そんなことに勇気をもらえた作品でした。終わり方も良かった〜!

    私自身は、OL、結婚、出産、子育て、PTA、パート、夫や両親を見送り…と、一般的には普通、といわれるコースかもしれないけど(普通じゃないとこいっぱいあるけど)さてと、ここまで来て、60間近になり、やっぱり何かと寂しくつまらないと感じることが多いです。子育ては楽しかったけど、これからは「自分ファースト」でいきたい!ってちょうど感じていたので(私は水泳は出来ないけど)いろんな意味でエネルギーをもらえた作品でした!

  • 51歳、麻里。独身一人暮らし。20年にあまる母の介護の末(やっと)昨年母を見送ったら、腹は出る、高血圧、高脂血症に。看護師に促され病院の生活習慣撲滅プロジェクトに参加し、水泳教室に通うことに。そこで出会った、コーチ、同じ中高年の仲間たちなどとの「水泳」を通して、麻里に新たな未来が生まれる。

    「女たちのジハード」の主人公は、競売の家を買う、という行為で、今までの自分とは違った道が開けたが、こちらは水泳を通しての再生、という感じがした。女たちのジハードでは、まだ若い女性だったが、こちらは51才。まだまだ「セカントチャンス」はあるんだよ、というエールだ。

    この51才、麻里、30歳位の時に母が58歳で心筋梗塞を起こし介護状態に。すると常勤をやめパートにと、結婚もせず親の介護優先で30代、40代を過ごしてきたのだ。兄はさっさと結婚し家を出た。が近くにいて姪を可愛がっている。そして、自治会の役員、法事、墓参り、親戚づきあい、とかなり濃い、地縁血縁生活を送ってきている。ここまで濃密な人っているのかな、と思うが、篠田氏は、親といて、生まれた家にずっと暮らすということは、こういう「めんどうくさい」つきあいをし続けることですよ、と麻里を通して描いたんだと思う。

    またお嫁に行ったら行ったで、麻里の友人は、娘、嫁、母、祖母の役をする。

    先生にウォーキングとかやってるの? と言われると、いえ膝も痛くて。先生は、治らない人っていうのは、必ずそういう言い訳を用意するんだ、と言う。これは象徴的な言葉だ。言い訳はしない、そういう生活ができたらいいなあ。

    しかし、麻里の母は58歳で倒れ、20年の介護の末78歳で死んだ。これって、88歳。98歳と、麻里が60歳、70歳まで介護生活が続いた可能性もあるわけで・・・


    初出「小説現代」2022.4月号

    2022.6.27第1刷 図書館

  • 親の介護の後、このまま坂を下って行くだけだと思ってた人生。でもそうじゃなかった。自分もまだ頑張れるのかもと思えた。泳ぎたくなった。
    篠田節子さんに持っていたイメージが刷新されました。

  • 長い介護生活の末母を見送った麻理、51歳、独身に残されたのは肥大した身体と、最悪の検査結果。病院の生活習慣病撲滅プロジェクトでお尻を叩かれ一念発起、スイミングスクールに通うことになった麻理が、カナヅチからタイヤ〜オタマジャクシ〜クマノミ〜金魚を経てカワウソになっていく過程で取り戻していく自分のための人生。泳ぎの上達度がそのまま章のタイトルになっているのが面白い。

    麻理の自分に甘く、常に言い訳を用意して自己弁護に終始する姿には正直イライラするが、そんな彼女に言いたい言葉を読者に代わってぶつけてくれる親友・千尋の存在が大きい。

    言い訳を準備し、いらない気を回してぐじぐじする麻理に対し、千尋を始めスイミングスクールの伊津野や谷口といった周りの女性が魅力的。
    自分を犠牲にして、便利にこき使われて、それを人の役に立つことは自ら望むことと自分に言い聞かせて変わろうとしなかった麻里が、それでも最後には叔母からの電話をシャットダウンすることができるまでに成長。まあ、この後も一悶着あるんだろうけど。

    自分とは余りにも性格が違う主人公に共感はなかったものの、中年からでも人生を変えることは出来るというメッセージはしっかりと伝わりました。

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著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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