- Amazon.co.jp ・マンガ (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065280546
感想・レビュー・書評
-
最新の人の子と、人の噂や声の大きさ、精霊ちゃんに振り回されたりもするけれど。今日も高耳様は元気です。
TVアニメ化も決定し、いよいよ絶好調な本作『江戸前エルフ』ですが、だからといって作中でも大盛り上がりといえばそうでもなく。
テンションにおいてはいつもとお変わりありません。東京・月島の街は今日も平和です。
ここから読みはじめる方もいらっしゃるにはいらっしゃるとは思いますが、ゆるゆるとした日常モノであることにお変わりもありません。よってどこから読んでも問題なしかと存じます。
また、ここ六巻についてはほかの巻に見られた大阪、金沢に座すエルフの祭神が関わってくるということもほとんどなしだったりします(幕間にちょっとしたパートがほんの少しあったりはしますが)。
裏表紙などに記載された紹介文が過不足なく本作を語ってくれているのも、新規ファンを獲得する上での追い風になるかもしれませんね。
さて。今回に限らずとも初見でキャラクターの大枠は大体つかめると思いますし、積み重ね――、ここでは事前知識という意味で大事になってくるエピソードもそれほどみられないということもあります。
たとえば、この巻の導入となる親戚の赤ちゃん襲来のエピソードも、これまでの流れを押さえておけばより趣深いものになると思う反面、どちらかといえば作品を象徴するような話とも言えましょうし。
子はかすがいと申します。未来ある赤ん坊という希望の象徴に振り回されたりもしながら、見事にあやして見せた主人公「エルダ」の姿は驚きでした。一巻から見てきた一読者としては、なおさら。
タイトルを冠するところである江戸前住まいでエルフなエルダも定命の人の子に囲まれ、過去に対する諦念を抱えるばかりではなかったようです。ええ、不老不死に取り残される寂しさはつきものだけど。
紡がれていく人の縁に絡まって縛られるではなく、過去を糧に未来に向けて微笑んでくれる。
そんなこんなで、私は彼女の複雑な内面がにじみ出た表情が大好きです。
一方、巻数が進んだことでだらけたり気を抜いたり困り顔だったりなデフォルメ化の頻度は多少下がった風ですが、やはり健在です。敬されつつ、親しみが先立つバランス感覚が本作の素敵なところなのかな。
そういったわけで四百年とここ十数年、ふたつの時間軸が交差する感覚をここまで味わえたのは四巻以来な気がします。
もうひとりの主人公「小糸」の今はなきその母「小夜子」も、今回の回想で顔を出してくれましたし。
それと作品全体を貫く構成・テーマを象徴する話が幕開けだったことに加えて、祭りを終えた五巻に続くだけあり日常に回帰したエピソードが今回は多めだった気がします。
だらけっぷりという意味ではなく、いい意味で気が抜けた話の方が目立ったのかな。振り回すばかりでなく、振り回され役やツッコミ役がエルダに回ってくる機会も多くなり、話の幅が広がった気もします。
具体的には、質屋からつなぐお金の話、軽い気持ちから付いたウソに振り回される話、髪結いの話など。
江戸文化と現代文化を比較、類似点と相違点を紹介しながら日常を送っていく従来のスタイルを踏襲した話が基本であることに変わりはありませんが、グッと身近に迫っている気がしますね(当社比)。
ここに来て存在感を発揮したか、精霊ちゃんリターンズというべき回も収録していたりします。
一巻のロングコートなど、ロングパスな言及も光る一方で、この巻単独でいえば耳ネタを引っ張るのがツボに来るなどしました。
なんだかんだで先に進んでるんだなぁ……とほっこりするエピソード目白押しです。
小糸もエルダへの好意を隠さなくなってきた、照れが抜けてきたところにも注目したいと思います。
ついでに言うと。
本作はエルフと巫女の主役ふたりだけの回でも話は回るなど、登場人物は絞られている感はあります。
ただし、地元や同族の縁に起因する準レギュラー、ゲスト陣は豊富で次は誰かな? と思わせる厚みもそろそろ備えてきたように思われます。本作のテーマ上、積み重ねるほど強くなる。
また、エルダの見た目の麗しさは一貫して外さない上、さらに磨きがかかっているようにもみえます。
といったわけで以上、余談をふくめ六巻のレビューをお送りしました。
今回は日常的な話が多めであった分、語りは控えめにさせていただきましたが、そのことで巻ごとに特色が生まれていることにいまさら気づくなどもしました。
短期間で劇的に変動するタイプの物語ではないんですが、長い目で見た時に生まれる人の縁がどう結ばれていくのか? 気付きを新たにした巻であると、念を押させていただきますね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
私もガンダムはヒト型の必要は無いと思う………効率悪いしねぇ