- Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065280867
作品紹介・あらすじ
学問の「型」を理解すれば、勉強はもっと楽しくなる。
社会人にも役立つ、大学の双方向授業をもとにした「論文入門」の決定版!
「この型式に沿って書かないと、評価されません。」
学生の興味・関心を的確に導く。
圧倒的な筆力を持つ社会学者・小熊英二による論文作法。
「人間は不完全だから進歩するし、努力する。
そして、人間が一人でやれることには限界がある。
だから書いて、公表し、他人と対話する。
そのように、私は考えています。」(本文より)
◆アリストテレス『弁論術』に学ぶ説得の技法
◆「結論を先に言え」は古代からあった
◆人文・社会科学はなぜ「科学」なのか
◆「霊魂」「意志」「社会」という不確かな前提
◆「主題」と「対象」を混同しない
◆画期的な研究を行うためのヒント
◆論文における「よい文章」とは?
◆方法論は「料理のレシピ」
◆「パラグラフ・ライティング」のコツ ……ほか
【本書の構成】
はじめに
第1章 論文とは何か
第2章 論文と科学
第3章 主題と対象
第4章 はじめての調べ方
第5章 方法論(調査設計)
第6章 先行研究と学問体系(ディシプリン)
第7章 方法(メソッド)
第8章 研究計画書とプレゼンテーション
第9章 構成と文章
第10章 注記と要約
第11章 校正と仕上げ
おわりに
感想・レビュー・書評
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良書 論文とは何か、どういう構成で、どう考えて、どう描くかが丁寧にかかれています。
論文の構成、記述だけでなく、人を説得する技法として、テーマの選び方から、調査、そして、その記述までが平素な言葉でつづられています。
気になった点は以下。
・論文は①主題提起、②論証、③主題の再構成という構成が古代ギリシャから唱えられていた。
・古代ギリシャの構成が原型となっていて、現代アメリカでは、①序論・②本論・③結論というエッセイが教えられている。
・論文とは「人を説得する技法」である
・論文は、自然科学と人文科学とでは、若干構成がことなる。自然科学では、序文、対象と方法、結果、考察の四部構成となる。
・論文には、実験の結果だけでなく、過程も記録して保存し、公開する。他の人が同じ実験を繰り返して追試することが可能です。そのことを、再現性の確保という。
・人文科学の論文では、結果にあたる部分が長い。過去の資料を記述し、分析や検討をしていく過程が自然科学や工学系より長くなるためです。
・論文は、「実験/調査型」「試料分析型」「理論型」「複合型」
・資料について、自分が調べたものを「一次資料」、他人が調べたものを「二次資料」という
・問題となるのは、その論文にて問いたい「主題」は何なのか、調査する「対象」はなにかのかをはっきりすることです。
・主題と対象を設定するなら、調査の方法もある程度きまってきます。
・いまの大学で教えられている学問の主流は、経験的に観測できる対象から、観測できない主題を追求する学問です。
・主題設定は、「問い」の形で立ててみるとよい。
・主題は、抽象的な問い、対象は具体的に調査できるもの。
・先行研究を探すには、漠然とした関心でよいので、それに関係した「研究」を何か一つさがしましょう。
・主題や対象がある程度固まってきたら、手に入れた研究書や論文が言及している先行研究を、どんどん集めましょう。そして、集まった研究書や論文が言及している先行研究をまたどんどん集めましょう。
・少なくとも、論文で、Wikipediaを典拠に使うことは不適切とされています。
・方法を組み合わせて、調査全体を設計していくことを、方法論、もしくは、サーチ・デザインという
・見えたり聞こえたりした事象から、見えたり聞こえたりしない因果関係を推論することを、「因果推論」という
・調査設計する方法は、仮説検証型と、仮説生成型とがある。
・調査設計は、①探索、②記述、③比較、④因果の大きく四段階に分かれています。
・パラグラフライティングには、記述パラグラフ、比較パラグラフ、因果パラグラフがある。
・調査には、文献の先行調査による「事前研究」か、実際に調査を行う「サーベイ」がある
・「学」とは、ある前提をもとに、論理的な認識を行うこと。前提が変わると学問体系が変わる。これを「パラダイム転換」という。
・前提が異なる「学問」同志で議論することはむずかしい。学問体系が違うと使う理論も、方法論も違うことが多い。
・調査には、量的(定量)調査と、質的(定性)調査がある。
・認識論に対して、客観的に認識できるという実証主義と、主観的解釈を重視すべきとする解釈主義とがある。
・質的調査の方法 ①インタビュー、②オーラルヒストリー、③会話分析・言語分析・ナラティブ分析、④フィールドワーク・エスノグラフィ、⑤アクションリサーチがある。
・論文を作成にするにあたって、研究計画書を作る。
・パラグラフと同様、文章も、「一文一内容」にした方がわかりやすい
・複雑な論文を書くときは、構成表を書いてから、それから書き始めるのがよい。そして、カードに書いて、何度も並べ替えるのもよい。
・論文のレファレンスや注釈の方法は統一されていない。シカゴスタイルや、オクスフォード、ハーバードなどのやり方がある。
・構成がきちんとしていれば、そのまま要約を作れる
・論文の審査も校正も流れはいっしょ
①主題・対象、方法が設定されており、お互いに整合しているか
②既存の先行研究や学問体系との関係が十分に検討されているか
③明確な論拠と、明確な論理によって、論証がなされているか
④設定された主題に即した結論に導かれているか
⑤検討された先行研究の学問体系に対する貢献を明らかにしているか
⑥論文の文書として基本的な質が保たれているか。
目次は次の通り
はじめに
第1章 論文とは何か
第2章 科学と論文
第3章 主題と対象
第4章 はじめての調べ方
第5章 方法論(調査設計)
第6章 先行研究と学問体系(ディシプリン)
第7章 方法(メソッド)
第8章 研究計画書とプレゼンテーション
第9章 構成と文章
第10章 注記と要約
第11章 校正と仕上げ
おわりに
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本当に読んでよかった。というか、もっと早く読みたかった。論文とは何か、学問とは何かから、研究をするとはどのようなことなのかということが丁寧に解説されている。研究に取り組む大学生、特に人文社会科学の研究をする大学生は必読だと思う。
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【星:♾】
いやー、読み応えがあった。論文の書き方の決定版と言ってもいいんじゃないでしょうか?
ここまで分かりやすく、基礎的なことを網羅しつつも奥深く論文の書き方を書いてくれる本はもうでないんじゃないだろうか?
論文の書き方は当然として、そもそも学問をするとはどういうことか、科学とはなんなのかということまで優しく語りかけてくれる。
さらにビジネスにも十分役立つ内容である。
本当に素晴らしい!! -
2022年講談社現代新書。
理系の農学部出身から社会学に転じた学者が、そもそも論文とは何なのかというところから検討して課題の設定から参考文献の記し方まで、それこそ註を大量に記して丁寧に説く。良書だ。 -
これは凄い本でした。論文にご興味あれば、必読です。慶応の学生さんが羨ましい。学生で、これだけ論文の書き方を習えば、十分です。
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読みやすい。大学に入る前にこの本を読んでいれば……と悔やまれる。
そもそも学問における「論文」とはなんなのかを述べた上で、どんな文章で組み立てるか、を書いている。
確かに学生時代、「論文の書き方」みたいなプチ講座を受けたけど、大体、注釈の書き方とか参考文献の書き方、とかそんなことしか印象に残ってなかったので、なぜそれが必要なのか、が全く分かっていないままだった。
つまるところ、論文は「科学的思考」に基づいて書く必要がある。(お互いが共有する公理を前提にし、その上に根拠と論理を積み上げて論証し、追検証する。そして進歩していく。)主題がなんなのかをを明確にした上で、先行研究を探し、対象を絞り込み、根拠と論理を積み上げて、論証し、追検証出来るようにし、方法論を組み立て、必要な調査方法を使用する。そして、そのためにパラグラフライティングなどの技術を使用する。
随所で、理科の実験の例えや、料理の例えが出てくる事で、イメージしやすい。
あと、本書で筆者は大量の参考文献をあげているので、次に読みたい本がどんどん溜まっていく。筆者は、学問においての「プライマリ」「かかりつけ医」としての役割を学校で果たしているようだが、大学をすでに卒業した自分からしても、こんなに大量の参考文献をあげてもらえると、次にとっつくべき本がどんどん広がっていくので、まさに「プライマリ」の役割を果たしていただいた。 -
愛知大学図書館OPAC https://libopac.aichi-u.ac.jp/iwjs0012opc/BB01045533
書く方法がわかれば、勉強はもっと面白くなります。
論文の書き方をわかりやすくまとめてあり、さらに論文を書くとはどういうことなのかについても解き明かしています。
コツやテクニック、考え方が「型」として紹介されているので、見栄えのいい美しい文章ではなく、論文として納得できる文章が書けるようになります。 -
不完全だから勉強する、それが面白い。SFCの過去問を見たのをきっかけに読んでみた。異常な勉強量、ニュートラルな立ち位置、何を取っても感銘を受けた。では、自分もこうなりたいか、いや、もっと社会の役に立つことがしたい。
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科学的思考という土台の上に論文がある。
その思考方法と論文のスキルを丁寧にわかりやすく説明してくれている本。
人文・社会科学系の研究における定性分析(質的調査)の方法は決まりがあるわけではなく、分類も様々で、いまひとつピンと来なかったが、かなり整理できた。
論文の形式を知ることで、研究の道筋も見えてくる。
小熊英二は本気で「親切」だ。
「ネガティヴケイパビリティ」で帚木蓬生が言っていたように、現代社会において「親切」であるということは、どれだけ得難く、気高いことか。
こういう研究者がどんどん増えてほしいなあ。
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いままでの論文の書き方として475ページもある最も厚い本である。対話形式でも説明している。厚い本を読んだことがない学生にとってはきついかもしれない。しかし全く論文の書き方を知らない学生にとっては自習書として役立つであろう。ただ、ゼミの先輩がいたりした場合には、この本を読むよりも先輩の卒論を読んだ方が早いかもしれない。この本はゼミの先輩もおらず、指導教員とも疎遠で、ひとり卒論に取り組もうとする学生にとってはいい本であろう。