40歳からは自由に生きる 生物学的に人生を考察する (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065293881

作品紹介・あらすじ

人間の寿命は38歳です。現在は、医療の発達や栄養状態が良くなったために人間の寿命が延びるようになったのです。生物学的に考えると40歳以上になったなら、人間は自分なりの規範を掲げ、上手に楽しく生きるようにした方が良いのです。
本書ではなぜ人間に生と死があるのかという初発的な疑問から、人間の進化の歴史、ファーブルのダーウィン批判など進化論論争から読む「生命の本質」まで、「人間の生と死」を幅広く考察します。
そして中高年齢期になったなら、人間は自らを解放し、自由に恋愛をし、社会システムの変革を心掛けることを提案します。自分の生き方は自分で決める他はないのです。それが「かけがえのないあなた」を承認することになるのです。
個人の規範は大事であり、繰り返しと循環に基づく生活リズムを大切にします。そして試行錯誤を繰り返し自分に最も良く合った生活習慣を身に付けることが重要です。
人生に目的や目標をもつことを生物学的に考えることが本書の狙いです。金沢城のヒキガエルが最高の生き方(必要な餌を求める時間以外はほぼ大体寝ている)かもしれませんが、悲しいかな大部分の人間は目標を立てて頑張らないと善く生きられない生物なのです。
では他人との関係はどうするか。たとえ妻や夫であっても、基本的に他人です。他人との関係も自分が最も気持ちよくなれる規範を持つことが大切です。
長寿になってしまった人間としての日々を生きる読者の「生きる価値」とは何か。この問題を「人間の生と死」の生物学的視点から考察する本書は40歳以上の読者のみならず若い方にも読んで頂きたい必読書です。

感想・レビュー・書評

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  • 自分の規範を作る

    基本は我慢し、時に我慢を解放してエクスタシーを得ることが大事である

    社会の規範を疑う
    利他主義、努力という2大ペテン語は要注意

    がん検診は受けない

    40歳位の人生はオマケである

    新しい事には興味を持ち若々しくする

    他人との距離感を持つ

    日本のように人口減少は自然作用である

    短いスパンで小さな目標を作り日々こなして達成感を得る生き方をする
    何かをして行くことが心の安定に繋がる

    極度の健康志向は逆効果である

  • 38歳以降は、ボーナスステージというのが伝わってきた。

  • 今から30年程前に全ての哺乳類の体重と平均寿命には、一定の法則があるという本を読んだことがあります、確か人類は40歳程度だったと記憶しています。現代の人類の平均寿命がそれよりも長いのは、他の動物・植物からエネルギーをもらっているからとの解説があったのが記憶に残っています。

    そんな記憶を呼び起こしてくれたのが、隣駅の本屋さんで見つけたこの本のタイトルでした。人類の平均寿命を過ぎたら、世間の常識に合わせて無理するのではなく、自分で決めたルールに従って楽しく生きようという趣旨の本です。読んでいて元気付けられました。

    子育てがひと段落した今だからこそ書いてある内容が自分に入ってくる感じを受けました。良い時期にこの本に出会えて嬉しく思います。

    以下は気になったポイントです。

    ・生物学的には自然寿命を超えた40歳以降はいわば「おまけ」のようだと分かります「おまけ」があることに感謝するのなら、自らの規範に基づいて自分自身の人生を生きることが、言い換えれば、社会の束縛や拘束から少しでも自由になって自分の欲望を解放しながら面白く生きることが40代以降の人間に求められる生き方だと思う(p13)40歳以上生きられるのは、医療の発達、食生活の改良、野生生活との決別のおかげである(p15)

    ・生物も放っておかれれば、エントロピーが増大して無秩序な状態になるところだが「できるけどやらない」という禁止ルールによってエントロピーをいわば逆向きに回して、制限を加えることによって秩序を保っている(p19)

    ・自動運転の車にも、ロボットにも逆立ちしたってできないのは「自分で自分を作り出す」ということ、この能力は生物だけが持つ特性である。人間の皮膚は1ヶ月で新しい細胞と変わる、骨は10年間で新しい細胞に置き換わる、同様のことが体内のあらゆる場所で起きている、つまり10年前と今とは違うもので構成されているが、自分という個体は自分であり続け、自己同一性を保ち続けている(p21)

    ・かけがえのない自分を追求したいと思うのなら、社会の規範とは別の自分自身の行動や生活のための規範、つまり、他人からの押し付けでもなく、できあいの見本のような人生観などでもない、自分自身の規範を作ることである(p32)重要なのは、たまに規範を逸脱すること(p33)

    ・細胞分裂の回数の限界と、それに伴う寿命も決まり、これを「ヘイフリック限界」と言い、これは種によってほぼ一定である。人間の場合は50回ほどなのでせいぜい100歳を超す程度である(p40)

    ・好きでもないのに無理して青背の魚を食べる必要はない、危険なのは体にいいからと、同じ食品を毎日食べ続けること、色々な食品を日替わりで満遍なく摂取する方が健康被害を避けられる(p47)

    ・無駄を廃してなるべく効率よくすることは、そのやり方が環境にあっている時は強いけれど、一度変換が起きるとガタガタになってしまう(p72)

    ・カンブリアの大爆発(5.4-4.9億年前)により生物が一斉に出現した、三葉虫類や脊椎動物が生まれた、オルドビス紀には魚類、シルル紀には水中から植物、昆虫が陸に上がってきた、デボン期には両生類、石炭紀にはシダ類が生い茂り、堆積して石炭ができた、爬虫類が生まれた、三畳紀に哺乳類が生まれた(p111)

    ・人は二回死ぬ、一回目は心臓が鼓動を止めて脳の神経細胞を止めた時、二回目はその人を覚えている人が一人もいなくなった時(p114)

    ・人類の特徴は「直立二足歩行」である、これがあったから、大きな脳・言葉を話す能力が獲得できた(p117)脳が大きくなったのは肉食のおかげ(p118)さらにノンコーディングDNA が消滅したことで、脳の細胞分裂に抑制が利かなくなりチンパンジーの3倍もの大容量の脳を持つようになったのだろう(p120)

    ・ネアンデルタール人が絶滅したのは、欧州という寒冷地にいたこととともに、言語能力が未発達のためうまく狩りができず食料不足によって滅亡した(p126)

    ・気候変動などによる大量絶滅は、先カンブリア時代末期、オルドビス紀、デボン紀、ペルム紀(石炭紀のあと:95%消滅)、三畳紀、白亜紀の末期の6回である(p128)

    ・江戸時代の四大飢饉は、寛永・享保・天明・天保であり、いずれも寒冷化の時期に起きて、冷害と凶作で多くの人が餓死した(p129)1993年の平成の米騒動を引き起こした冷夏は、その2年前の1991年のフィリピン、ピナツボ火山の噴火が原因であった(p131)

    ・21世紀に入ってからは地球の気温は平均で0.07度ほど下がっていることが示されている、シロクマはこの10年間で増えている、温暖化の現象と言われるのは、大都市部のヒートアイランド現象(ローカルウォーミング)である、同じ東京でも三宅島、八丈島は100年間平均気温は変わっていない(p133)

    ・自分で規範を作る場合の3つのポイント、1)日常生活を律する規範、2)人生の目的や目標を定める規範、3)他人との関係をどう構築するかという規範(p213)

    ・癌で死ぬかどうかは、早期発見かどうかではなく、その悪制度によって決まる(p220)

    2022年11月15日読了
    2022年11月23日作成

  • ●人の本来の寿命は40歳位だろうと思われる。チンパンジーと同じ位。
    ●社会の規範は、あくまでも社会の秩序を保つために作られたフィクションです。あなた自身の幸せのために作られたものではありません。
    ●両性生殖の生物は基本的に無駄。しかし、一度変化が起こると、絶滅の危機を逃れる確率がはるかに高い。
    ●約6億年前の多細胞生物の出現の後、カンブリア紀の初頭になると、生物の種類が爆発的に増えます。これをカンブリア大爆発と言い、現在知られている多様な生物の門が一斉に出現した。
    ●温暖化の減少は、大都市でのヒートアイランド現象に過ぎません。同じ東京都でも三宅島や八丈島は100年間平均気温は変わっていません。

  • 生物学ネタか人生訓か?どっちも楽しめた私は満足

    明石家さんま出演のテレビ番組『ホンマでっか!?TV』でおなじみの生物学者、池田清彦先生の著作です。

    ゲノム解析した結果、人間のDNAに刻まれた本来の自然な寿命は38歳なのだそう。だから人間それを過ぎたらあとは余りものの人生なんだし、他人や社会に押し付けられたルールではなく自分で規範を設けて(時には規範を破る快感も味わいながら)好きに生きていこうというメッセージがこめられています。

    人生訓と生物学トピックを、やや力技でからめているような、ただ単にたがい違いに繋ぎ合わせただけにも思える構成ですが、中年の生き方と生物学どちらにも興味がある私は楽しめました。

    地球でいちばん初めの生命である単細胞生物についての話から、遺伝子・ゲノム、はては人間固有の変態的セックス、社会運動、現在の日本の政治経済まで、著者のやりたい放題・言いたい放題のごった煮状態です。

    提言の中には突飛な主張も多く見られるけど、多くの凝り固まった日本人の頭には突飛なぐらいの意見のほうが良い刺激になるかも!というのは読者として良心的すぎですかね?でも読んでいて、けして嫌な思いはなく、楽しかったです。

    日本を多様性のカケラもない国だと一刀両断する著者の姿勢は気持ちの良いものでしたし、規範なくしては人は生きられないが、その規範は自分でつくることができるというメッセージは、この生きづらい今の日本社会で生きる私たちには大事は考えだと思います。

    にしても読む人を選びそうな本で、純粋に生物学的な読み物を期待する人には、著者の説教が煙たいだろうし、中年以降のライフスタイルを模索している人には生物学ネタは時間のムダかもしれない。そして何しろカバー帯には開襟シャツにサングラスをかけたニッコニコのクセ強なおじいさん(失礼)の写真がデカデカと!いや、私みたいな物好きは思わず手に取りましたけども笑 

  • 人間(霊長類)の自然寿命は38年なので、それ以降はみずからの規範に基づいて好きに生きたらよい、という主張。

    第1章は、自然寿命に対する生物学的な考察が述べられている。以降の章では自由な生き方を中心として、自由に恋愛すること、新しい自分と出会うこと、個人と社会との関係の修復、自分を守るために、といったことについて取り留めなく記述されている。

    生活していければ何でも良いような気はしますが、現実にはそう簡単ではないような。心構えだけでも変えられれば良しとすべきでしょうか。

  • 人間の寿命は38歳というのに興味があって読了。
    若干、トンデモ的なこともアリ。

  •  なかなかにファンキーなオヤジである。「健康診断なんて受けるな」「40過ぎたら不倫せよ」「地球温暖化なんて放っておけ」「固有名詞が出てこないのは豊かな人生の証」…。一見無茶な言説に見えるが、(「自然選択の影©︎メダワー」に入る)40代からは生物としての「おまけ」なのだから好きに生きるべし、という著者の主張に説得力を与えているのは著者の生物学者としての豊かな自然科学の知識だ。しかしこんなに自由に生きている人の家族構成というのはどのようになっているのだろう、と下衆な勘繰りも入れてみたくなってしまう。

  • 良書。自然寿命(38歳)以降はボーナス、自分規範で生きるべし。

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著者プロフィール

池田清彦(いけだ・きよひこ) 1947年生まれ。生物学者。

「2020年 『ポストコロナ期を生きるきみたちへ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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