- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065299241
作品紹介・あらすじ
『終わった人』『すぐ死ぬんだから』『今度生まれたら』に続く「高齢者小説」第4弾!
定年、終活、人生のあとしまつ……。
自分のこと、親のこと、いずれは誰もが直面する「老後」。
「最近の若い人は……」というぼやきが今や「これだから『老害』は」となってしまった時代。
内館節でさらなる深部に切り込む!
感想・レビュー・書評
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内舘氏の「高齢者小説」シリーズを読むのは、『終わった人』『すぐ死ぬんだから』に続いて三作品目。『老害』という言葉が気になって手にした。70代、80代の高齢者たちと、その家族の日常が描かれた物語。前半は自慢話に閉口する家族を中心に話が進むが、後半は"生き甲斐"を見つけた高齢者の話に中心が移る。どちらの気持ちも分かって、他人事とは思えなかった。
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ご老人達の青春ストーリー。
「お年寄りは大切に」は、間違いかもしれない。
昔の自慢話、趣味の押し付け、病気自慢にクレームなどなど…。
「老害」と思われる行為は、人それぞれ。
若い世代には鬱陶しがられ、ご老人本人は無自覚に撒き散らす。
なにか解決策は?
本書を読んでみて下さい。
もしかしたら、ご老人方は社会に役割を見出せずに寂しさ・切なさを抱えているのかも。。
私にも実家に祖父母が居ます。(祖母は施設に入りましたが)
「お迎えが近いから…」なんて弱気発言をする気の強い祖母、すぐ忘れ同じ事を繰り返して言う祖父。
思い返せば、特に役割もなくテレビを観て過ごしていたな。。
本書では、ご老人方でサロンを開いて「老人による、老人のために」活動しようとする姿を描いています。
祖父母にも何か役割があれば、少しは変わっていたのかも。
「何もさせない」=「大切に」ではないのかも。
今現在のご老人について、自分の老後について、いろいろ考えさせられました。 -
インパクト大の本のタイトル!
この本の中の高齢者は、生活が安定していて、
ご近所とも仲良く、家族にも恵まれていて、
なんだか幸せな老人たちだ。
だからこそ、言いたいことも自由に口にでき、
やりたいように行動できた。
認知症や寝たきりでもおかしくない80~90歳。
ものすごいパワーに圧倒されてしまう。
「老害」
それは、個性だという福太郎の言葉がおもしろい。
「毒にも薬にもならない人間は華がない」
と、明代のセリフも、何だか納得。
マスオさん状態の純市がオロオロしていて、
かわいそうで、頼りなくて・・・
強烈なキャラには、必ず、サポートする静かなキャラが必要だ。
親子関係はあまりにも近すぎてぶつかり合うが、
孫となると、ちょっと距離を置けるので、
関わり方も穏やかになるのは、よくあること。
世の中や会社でも、高齢者と、若者が、
お互いを尊重しつつ、いい距離感で関われれば、
もっと豊かな社会に結びつくのでは。
丁度、コロナ禍の話、
その頃の世間を思い出しながら読んだ。 -
本書は、内館牧子さんの「高齢者3部作」に次ぐ4作品目の位置付け。「高齢者3部作」のうち2作は読んだ。大分長い作品だったが、本作も高齢者を取り巻く日常生活が描かれており、読み易かった。本作で出てくる高齢者は80〜90代が中心。心も体もまだまだ元気で時間ばかりを持て余している。コロナ禍でワクチン接種が始まった2021年あたりが描かれており、リアルだった。子供世代からは「老害」として扱われ、その言動も確かに…と思わざるを得なかったが、人の役に立てること・仲間を見つけるとメリハリが生まれ生き生きして良い流れが生まれることがよく分かった。高齢者でなくとも、仲間や自分のやりがいを感じられることが見つかると人生にハリが出るのだろうな。未読のもう1作品も是非読んでみようと思う。
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前半は老害ばかりが炸裂してうんざりでしたが、だんだんとペースに引き込まれ、少しずついい話が増えていきました。老害は毒と薬の両面があるのは目から鱗でした。
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冒頭から繰り広げられる「老害」に、うへーこれはツラい!読むのきつい!と毒気にやられる。
「老害」に嫌気がさしてあたりがキツくなってしまう現役世代の登場人物たちの気持ちになって読む。
そして、自分が「老害」ならないようにするにはどうしたらいいんだ!と考えてしまう。
老人になったら制御きかずに自慢話、昔話、クレーム垂れ流しになるかもしれないなんて、想像するとゾッ。
でも「老害」なんて言われ、家にいるとあからさまに迷惑がられ、とはいえ仕事は引退していたら行き先はなく、とりあえず散歩に出るなんて切ないなぁ。
姥捨山ならぬ、ジジババ回収車なんて笑ったけど、よく考えると笑えない。
登場する「老人クインテット」のみなさんは仲間がいて、集まれる場所もあり、リーダー的要素の人がいるからよいものの、そうでない老人たちの方が圧倒的多数だろう。長生きなんてするもんじゃないのかも。少なくとも私は不老不死の薬はいらないな、うん。 -
老害のエピソードは思わず笑ってしまうほどリアルであった。老害の一つの自慢話をしたい衝動は老若男女誰でもあり、突き詰めれば高齢者ではない自分でも改めねばと思う節があって、老人達の小自慢が出る度に自分の過去の言葉が胸に刺さるようで、自分に対する戒めになった。
物語自体はひねりがあるわけではなく、面白い内容という訳ではなかった。しかし高齢者を老害と断じて嘲笑する風潮の現代において、高齢者の目線から社会を見た時に、高齢者がどのように考え見えているかを理解し、高齢者とどのように接し、そして自分自身のいい年の取り方を考える機会となった。 -
身近で感じていた「老害」を思い出しながら読んだ。
その時はただただ苦痛だったのだけど、いざいなくなってみると、笑い話としてみんなの記憶に残っているのが不思議。
こちらの本でも前半は困った老害の人だったのが、だんだん温かく見守っているような気分になってしまった。
自分はそうならないよう、今から心に留めておこう。 -
昔話に説教、趣味の講釈、病気自慢に孫自慢、そうかと思えば、無気力、そしてクレーマー。「老害」を撒き散らして周りに煙たがられていた老人達が、老人を元気するという目的を見つけカフェを開いて生き甲斐を見つけていくお話。だけど綺麗事ばかりじゃなくて、体や体力の衰えは否定できないし、出来ていた事もできなくなるし、死ぬ事も嫌でも考えなくてはならなくて、「老」という事をリアルに考えた読書でした。老後を趣味や自分磨きばかりに費やすのではなく、人の役に立つために生きてみるというヒントを教えてもらった気がしています。「うつし世は夢、夜の夢こそまこと」「教育→今日行く、教養→今日用」なるほど、と思いました。内舘牧子さんの小説はテンポもよく、読後感も良いので好きです。