あした、弁当を作る。

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065305959

作品紹介・あらすじ

朝、いつものように、母親がぼくの背中に触れる。いつものように「行ってきます」と答えて学校に行けばいい。それなのに、ゾクッと寒気がした。ぼくは自分の反応に驚く。
異変は続く。昼休み、母親が作ってくれた弁当を開ける。母親はぼくの世話をするのが生きがいらしい。おかずたちが、「おいしく食べて欲しい」とぼくにプレッシャーをかけてきて、一気に食欲が落ちる。でも、これはせっかく母親が作ってくれたお弁当。無理やり食べたけれど、気持ちの悪さは残った。いったい、ぼくはどうなってしまったのだろう?

中学生男子・タツキの自立心は、弁当作りへの熱意に変わる。冷凍食品を使えば、料理が得意でなくても弁当が作れるらしい。弁当作りの先輩・マシロにアドバイスをもらったり、幼なじみ・カホに相談に乗ってもらったりしながら、タツキは自分の弁当を作り続ける。しかし、母親には「タッちゃんはそんなにお母さんが嫌いなの?」、父親には「どうしてお母さんの仕事を奪うんだ」と責められ──。
両親が決めたことを守らないのは、わがままなんだろうか? 自分の弁当を作りたい気持ちは、どうしたらいいんだろう?

映画化もされた『お引越し』で知られる児童文学作家、ひこ・田中が描く、一風変わった中学生男子の反抗期。弁当作り、さらには洗濯まで!? ユーモアたっぷりに描かれる反抗期の心情、必読です!
【対象:小学校高学年以上】

感想・レビュー・書評

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  • 学校に行く日には、「行ってらっしゃい。タッちゃん」と母親が背中を触る。
    それが、ゾクッとしてしまい…
    その日から母親が作ってくれたお弁当を目の前にして箸が動かない、隣りの女子は冷凍食品オンリーで自分で弁当を作っていると言う。

    弁当を自分で作ることから始まり、母親が学校へ行っている間に部屋を掃除していることも嫌になり、洗濯も自分ですることに…。

    父親が外で働き稼いで来ること、母親は家事をするのが仕事で中学生は勉強していればいいというのに反発を覚える中学生男子。
    さて、彼はどこまで納得して自分のやりたいようにやれるのか…。


    思春期男子には、あれこれと世話を焼く母親が重い、と感じるのかもしれない。
    放っておいてほしいのに、どうしてそんなにかまうのか…。
    自立したくてもできないジレンマがわかる。

    いつかは、自分でやらなければならないのなら、やりたいと思うときにした方がいいと思う。
    義務じゃなければ楽しいと思うのかもしれないが、それが毎日となると億劫に感じたりもする。
    やりたくなくてもやってくれる人がなけりゃ、自分がやるしかないと思うと気が重いし、もっと他のことをしたいのに…と思う人もいるだろう。
    ヤングケアラーの場合はそうだと思う。

    どのような家庭なのかによって見方も変わってくるが、今はこんなふうに専業主婦で子どもにかまう母親は少なくなってきてるのでは…と思うのだが。

    黙って反抗的な態度をとるよりも、やりたいことを宣言している中学生男子のタツキの今後が気になる。



  • 子どもの自立を受け入れられない両親。この家に生まれなくて良かった。

  • ある日突然、中学生男子が母親の事が嫌になるって、成長の過程であり何もおかしなことでは無いと思う。
    それに対し、気持ちがわかるであろう父親が、何もフォローを入れずに、息子を叱るのはなんだか、モヤモヤする。。。

    母親もやりすぎ!!!息子に構いすぎ!!!
    読んでて少しイライラした泣
    もう、仕事したら〜?とか思ったり。。。

    日下部龍樹がいい子すぎるだけであって、普通の中学生男子だったら、母親に暴力を振るいそうだよ。。。

    とまあ、そんな感じで、私は終始イライラしてました。。。

  • 「いってらっしゃい。タッちゃん」
    と言って、いつものように母親が背中に触れた。
    ゾクっと寒気がした。

    中学生の日下部龍樹は「愛情たっぷりの」「手作り弁当」や「手作りのお菓子」が次第に重くなってくる。

    「タッちゃんは幼稚園に行くのも、ママと離れたくないって泣いてたのよ」

    と、母はいつまでも嬉しそうに話す。
    僕の記憶には無いのに。

    母は専業主婦。家事や僕の子育てをしている。父には逆らわないけど、僕に父の悪口を言うから、母の本当の気持ちがどれなのかいつもわからない。

    父はメーカーのマーケティングを担当してる。家では嬉しそうに職場の後輩の悪口を言い、威張っていて何もしない。

    ある日、隣の席のマシロが自分で弁当を作っていることを教えてくれた。冷凍食品なら、朝詰めれば昼には解凍されるらしい。それなら僕にもできそうだ。と、弁当作りを始める。

    母は、私の手作りのお弁当はイヤなの?
    冷凍食品の方が美味しいっていうの?
    お母さんをいじめて楽しいの?
    といい、父に告げ口し、
    男のくせに料理人にでもなるつもりか?
    お母さんに世話をさせてやれ、と
    父から怒られる。

    僕ができるかぎり自分のことをしようとするのが、そんなにいけないことなのか??

    男だから、女だからというジェンダーの疑問とか、
    自立とか、依存とか。
    いろんな言葉で語られる問題に
    きちんと疑問を投げかけて
    友達と考えたり
    自分で放課後に図書館に行って考えたりする。
    龍樹は、自分で考えて
    その中で自分の選択をする。

    こういう風に、しっかりと自分の中で答えを見つけるまで考えて
    やってみて、うまく行かなかったら
    また考えて
    そうやって1人の人として自立していくんだね。

    冷凍食品ばかりじゃなく
    おかずを作ったり
    惣菜の作り置きをしたり
    龍樹なかなかやる子だわ!



    • ゆーき本さん
      しらい弁当さん こんにちは◡̈*.。
      子供のためにと思ってやっていることが、知らず知らずのうちに過保護になっていないか 考えさせられます。
      ...
      しらい弁当さん こんにちは◡̈*.。
      子供のためにと思ってやっていることが、知らず知らずのうちに過保護になっていないか 考えさせられます。
      てか、自分でお弁当作ってくれる息子なんて
      羨ましすぎて 人に自慢したいくらいですけどね
      (*'ヮ'*)♡
      2023/03/25
  • 依存、過干渉、支配、束縛、思春期、反抗期、成長期‥
    盛りだくさんの一冊。
    後半、行け行け〜〜っと心の中で叫びながらエールを送った。
    この中1主人公、アッパレだな。

  • 自分の気持ちや行動をここまで考える反抗期があるのだろうか…。なぜ?って考えることって大事だよね。
    父親への拒否感が強くてなかなか読み進められなかったけど、少なからずこういった思考を持ってる人はたくさんいるよね。「男だから」「女だから」じゃなくて、〇〇だから、って個人を尊重する世の中になればいいな。

  • 最初は、おっ!中学生男子の反抗期キター!こうやって大人になっていくんだよねえ…なんて思いながら読んでいたのだが、読み進めていくと殊の外ひりひりするお話だった。
    妻と子を支配することで自尊心を保つ父親。夫に隷属しつつ子に依存する母親。どちらも自覚なし。程度の差こそあれ、家庭によく見られるだろう図だ。そこに違和感を感じ始める中学生男子。彼は自分の弁当を作り始める。父は母の仕事であり生きがいを奪うなとなじり、母は私のこと嫌いになったのねと拗ねる。それでも自分の家事を続けるうちに彼は言うのだ。自分のために生きたいと。言いながらも彼は両親に否定的な気持ちを持つ度に自分自身を責めている…。
    253ページ。「ぼくが言いたかったのは、家の中では何もせず母さん任せにしている人間にはなりたくないってことだよ」…呑み込んだ次の言葉はきっと「あんたみたいな」だ。傷つけられてきた分、何を言えば相手が傷つくかわかっているから、呑み込んだはずだ。泣ける。
    タツキよ、その時が来たら家を出るんだ!あの親父は色々と無理だ!あと、結婚するときはお相手とカーチャンを会わせるな!面倒なことになるぞ!
    さてこれを読んだ中学生はどう思うかな。うちはこんなじゃなくてよかった、かな。構ってもらえて楽じゃん、かな。少なくとも自分の家はどうだろうと振り返りはするだろう。きっとそこから、大人への階段は始まる。

  • ある朝、突然母親が背中に触れてくることに寒気を覚えた。
    お弁当の中の“愛情”のプレッシャーをかけてくるおかずにも。

    ぼくは、お弁当を自分で作ることにした。

    自立しはじめた中学生男子の13日間。

    ○反抗というのでもなくて、違和感を呑みこまずに友人たちにも相談しながら、少しずつ考え、親のプレッシャーにつぶれず自分の領分を確保していく姿がいいなと思った
    ○ちょっとゆがんだ感じの家族かなと思ったけど、どの家族にも歪みはある。というのも、クラスメートたちの会話の中で読み手は気付かされる
    ○お弁当のおかず、美味しそうなので、つくってみたくなる読者もいるかな?
    ○“家事大変”みたいな描き方のほうが多いので、やってみたらできるで~という描かれ方が新鮮だった。無意識下で女性の役割的な思想が自分にもあったのかな。
    ○龍樹が嫌がっているのに気付きながら、触ってた母の場面が結構ホラーだった…

  • 図書館に行ったら置いてあって、タイトルだけ見て借りてみた。
    中学生向けの小説。

    いわゆる急にやってきた親離れ。
    何もかも母親にやってもらうのが嫌になった主人公龍樹。
    弁当を自分で作るとか言い出す。
    そりゃ~母親は戸惑う。
    これが仕事してる母親だったら、嬉しいのかもしれないけど、龍樹の母親は専業主婦。
    洗濯まで自分の物は自分でするって言いだす日にゃ、そこまで・・・
    と私も戸惑う。
    キチンと父親にも自分の意見を言うのは素晴しい。

    龍樹君、自立してるね~

  • 中学生のタツキは、母親が自分を世話する事が生き甲斐で、父親が偉そうに威圧的なのに、自分で弁当を作り洗濯をする事で意思表示しようと思ったのかな。淡々と流れる物語だが、タツキの両親は変わらない、それは頑なに。そんな中、タツキは自問自答しながら突き進む。この後のタツキを見たい。両親、いや母親だけでもタツキの変化をそっとサポートしてほしかったが、そうやってしか生きられなかったのかもしれない。いや、突然拒絶された事にただ傷ついただけなのかも。親が自分の気持ちだけを子供に押し付けてはいけないんだよなーと思った。

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著者プロフィール

1953年、大阪府生まれ。同志社大学文学部卒業。1991年、『お引越し』で第1回椋鳩十児童文学賞を受賞。同作は相米慎二監督により映画化された。1997年、『ごめん』で第44回産経児童出版文化賞JR賞を受賞。同作は冨樫森監督により映画化された。2017年、「なりたて中学生」シリーズ(講談社)で第57回日本児童文学者協会賞を受賞。他の著書に、「レッツ」シリーズ、『ハルとカナ』『サンタちゃん』『ぼくは本を読んでいる。』(以上、講談社)、「モールランド・ストーリー」シリーズ(福音館書店)、『大人のための児童文学講座』(徳間書店)、『ふしぎなふしぎな子どもの物語 なぜ成長を描かなくなったのか?』(光文社新書)など。『児童文学書評』主宰。

「2023年 『あした、弁当を作る。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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